ホンダ CUV e:……52万8000円(2025年6月20日発売)

96V EVシステムを搭載するCUV e:。航続距離は57kmを公称する。上記の価格は、車両本体:20万200円、モバイルパワーパックe:10万8900円×2個、専用充電器:5万5000円×2個の合計金額となる。公道で運転する際には「AT小型限定普通二輪免許」以上の二輪免許が必要で、原付免許や普通自動車免許では不可だ。
標準装着タイヤはデューロ・DM413。トランスミッションのオイル容量は0.16Lとごくわずかであり、交換時期は初回5年、それ以降は4年ごととなっている。
車体色はパールジュビリーホワイト、マットガンパウダーブラックメタリック、プレミアムシルバーメタリックの3種類。
ジャパンモビリティショー2023で世界初公開となった「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」。その市販モデルにあたるのがCUV e:だ。

静粛かつ無振動、そしてスムーズな加速は電動二輪車ならでは

ホンダの電動二輪車の歴史は、1994年に発表された「CUV-ES」からスタートした。その由緒あるネーミングを受け継いだのが「CUV e:」であり、クリーン・アーバン・ビークルの頭文字が由来となっている。個人向けモデルとしては、2023年に発売された原付一種の「EM1 e:」に続く第二弾であり、原付二種を待ち望んでいた人にとっては朗報だろう。

CUV e:のライディングモードはスタンダード/スポーツ/エコノミーの3種類。ハンドル右側のスイッチで切り替える仕組みだ。メインスイッチをオンにし、いざ発進しようとしたところ、動力用バッテリーの温度警告灯が点灯していることに気が付いた。これは何だろうとマルチセレクションスイッチをいじっていたら、次のような画面が表示された。

「バッテリーが冷たくなっています」との通知が。この状態ではスポーツモードが選択できない。さらに低温もしくは高温になったときや、PCUまたはモーターが高温のとき、動力用バッテリーの残量が少ないときには出力自体が制限される。

試乗したのは12月下旬で、場所は東京都下だ。この時点でスマホに表示されていた気温は「5℃」である。真冬なら都心でもさらに冷え込むことから、常にスポーツモードで元気良く通勤したい人にとっては、これが足枷になってしまいそうだ。

とりあえず動力用バッテリーが規定温度に達するまで、まずはスタンダードモードで試乗を開始する。発進加速はさすが電動モーターであり、静かでスムーズ、なおかつ力強い。30km/hを超えると加速感は徐々に弱まるものの、一般道における法定最高速度の60km/hまではストレスなくスピードを上げる。動力性能としては、2スト時代の50ccスクーターと同等レベルというイメージだ。加えて、右手を戻したときの減速フィールも限りなくそれに近く、スロットルのオンオフで車体がギクシャクしにくい。

しばらく走っていたら温度警告灯が消灯したので、待望のスポーツモードに切り替える。停止状態から30km/h付近までの加速感はスタンダードモードとほぼ変わらないが、そこから60km/hまでほとんど勢いは衰えず、「スポーツ」の名に恥じない動力性能を見せてくれる。CUV e:のプレスインフォメーションには、「110ccクラスに相当する電動二輪パーソナルコミューター」とあり、確かに60km/hまでの加速感はディオ110と肩を並べられそうではある。

CUV e:のアドバンテージは、圧倒的な静粛性と振動のなさ、そしてシームレスな加速フィールだ。単気筒の小気味良い蹴り出し感を伴うディオ110に対し、CUV e:はまるで路面の上を滑空しているかのように速度を上げる。加えて、トラクションコントロールが採用されている点も安心材料と言えるだろう。

なお、エコノミーモードは発進時から極端に出力が抑えられ、油断すると出足で電動アシスト自転車に遅れを取るほど。バッテリー残量に不安があるときなど、エマージェンシーな状況以外でこれを選択するシーンはなさそうだ。

リヤヘビーなハンドリング、荒れた路面ではネガが出やすい

続いてはハンドリングだ。CUV e:の車重は120kgで、これはディオ110の96kgに対して25%増となる。付け加えると、リード125の116kgよりは重く、PCXの133kgよりは軽いという位置付けだ。

走り出してすぐに感じたのは、微速域からフロントの舵角が入りやすいということ。車重の重さによるネガを補うためだろうか、あえて軽快なディメンションとしているかのようだ。ハンドルが切れ込むとか、クセがあるなどと表現するほどではなく、多くの人がすぐに慣れてしまうだろう。ただ、常にリヤヘビーな印象が付きまとうのは事実であり、こうした傾向は筆者が過去に試乗したホンダの電動二輪車(PCXエレクトリック、ベンリィ e:シリーズなど)に共通する。

路面の荒れた峠道では、フロントフォークのダンピング不足やリヤのバネ下の重さ、そしてステアリングヘッド付近の弱さが露呈する。電動モーターの先進性に対し、車体のバランスが追い付いてないようだ。どんなシーンでも安心して走破できるPCXとは少なからず開きがあるが、とはいえCUV e:の主戦場は都市部であり、多くのユーザーにとっては些細な問題かもしれない。

さて、CUV e:におけるトピックの一つが、7.0インチという大型TFTフルカラー液晶ディスプレイと、独自のコネクテッド機能であるホンダロードシンクデュオの採用だ。ディスプレイはタッチパネルではなく、すべての操作をマルチセレクションスイッチで行う方式であり、これが非常に使いやすい。地図については、矢印と距離のみを表示するターン・バイ・ターンだけでなく、精細なフルマップ表示も選択可能。近年、アフターマーケット市場で注目されているスマートライドモニターと同等の機能が備わっており、これだけでも魅力的な装備だ。

電動二輪車を購入しようか迷っている人にとって、やはり気になるのはインフラの整備とコストだろう。これを執筆している2026年1月中旬現在、バッテリーシェアリングサービスのガチャコステーションは、東京都に41か所(うち31か所は23区内)、埼玉県に2か所、大阪府に7か所にあり、現状では東京23区での運用に有利な状況となっている。加えて国からの補助金(3万5000円)や、東京都ではバッテリーシェアリングサービスの補助金(最大36か月、3年間の合計で5万円)などもあり、ガチャコステーションを利用する前提で都内の人がCUV e:を購入すると、車両本体は実質9万8200円(2025年4月現在)となるのだ。

これがガチャコステーション。充電済みのバッテリーと交換する仕組みだ。詳しくはこちら
ガチャコの公式サイトに掲載されていた料金シミュレーションの一例。仮にディオ110の燃費をリッター50km、レギュラーガソリン140円/Lで計算すると、走行距離2000kmでのガソリン代は5600円となる。ランニングコストを重視する方は、こうした比較も重要だろう。

CUV e:は、ホンダ初となる個人向けの原付二種・電動二輪車であり、都市部のコミューターとしての役割は十分に果たせると感じた。なお、今回の試乗は動力用バッテリーに不利な冬場に行ったこともあり、実質的な航続距離は40km弱にとどまった。モバイルパワーパック e:はゼロから満充電まで約6時間を要することから、ガチャコステーションが普及してない地域に住む人にとっては、この長い充電時間を許容できるか否かが購入の分かれ目になるだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シート高は766mmを公称。PCXの764mm、リード125の760mmと同等であり、足着き性はご覧のとおり優秀だ。ライディングポジション自体はコンパクトで、小柄なライダーでも楽に扱えるだろう。

ディテール解説

ホイールはエンケイ製で、前後とも12インチだ。フロントブレーキはφ190mmシングルディスクとニッシン製の片押し式シングルピストンキャリパーを組み合わせる。フロントフェンダーにあるスリットは圧力溜まりをなくすことが目的であり、軽快なハンドリングに貢献。
電動モーターおよび減速機をリヤホイールの左サイドに配置するユニットスイングを採用。新開発のモーターは定格出力0.98kW、最高出力6.0kW(8.2PS)を発生する。パワーユニットケースはアルミダイキャスト製の一体構造(ベンリィ e:は2部品構成)とし、剛性と強度を最適化した。フレームとパワーユニットの接合部は、ラバーブッシュを廃したリジッドマウントとしている。リヤブレーキはφ130mmドラム式で、左ブレーキレバーを操作すると前後が連動する。ABSは非採用だ。
まるでタブレットのように大きな7.0インチTFTフルカラー液晶ディスプレイを採用。背景色はホワイトとブラックから選択可能だ。時刻はGPSによって自動的に補正される。
スマホとBluetooth接続することによって通話やナビ機能が利用できる「Honda RoadSync Duo(ホンダロードシンクデュオ)」を採用。ナビについてはターン・バイ・ターンのほかフルマップ表示による案内も可能だ。なお、一部の機能はヘッドセットとの接続が必要となる。
左側には直感的な操作を可能としたマルチセレクションスイッチをレイアウト。右側にはライディングモード(スタンダード/スポーツ/エコノミー)の切り替えおよびリバースモードのスイッチを設ける。スロットルにはグリップアクセルポジションセンサー(APS)が直に組み込まれており、スロットルケーブルは存在しない。
フロント左側にあるインナーボックスの内部には、USB Type-Cソケット(5.0V、3.0A以下)を設置。
物理キーによる操作が不要なホンダスマートキーシステムを採用。自車位置を知るアンサーバック機能もあり。
シートは前後に長く、パッセンジャーの居住スペースも十分に確保されている。
シート下にホンダモバイルパワーパック e:を2個搭載。セル仕様はリチウムイオンで、定格電圧は50.26V、重量は10.2kgとなっている。後方には小さいながらも収納スペースあり。
グラブバーを兼ねるリヤキャリアはかなり大きめで、最大積載量は3.0kg。純正アクセサリーで2種類のトップボックスを用意する。
灯火類はオールLED。ライン状に点灯するフロントのポジションランプが印象的だ。空力面では、ヘッドライトにスラント形状を採用することで、直進時および旋回時の安定感に寄与。
テールランプもライン状に点灯し、フロントとのリレーションをアピール。

ホンダ CUV e: 主要諸元