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今日は何の日?■軽の高性能時代に対抗したミニカ・ダンガンZZ

1989(平成元)年1月23日、三菱自動車は軽自動車の基幹モデル「ミニカ」の6代目を発売した。当時は、バブル好景気で軽自動車にも高性能時代が到来、6代目ミニカには量産車として世界初となる5バルブの550cc直3 DOHCインタークーラーターボエンジンを搭載したスポーツモデル「ミニカ・ダンガンZZ」が設定された。
三菱における軽自動車の歴史を作ったミニカ
ミニカは1962年10月に、前年発売の軽商用車ライトバン「三菱360」をベースに、三菱初の軽乗用車として誕生した。

初代ミニカは、モノコックに近い構造で、エンジンなどのドライブトレインが数本のボルトを緩めるだけで簡単に脱着できる進歩的な構造を採用していた。ライトバンの三菱360のBピラーまではそのまま流用し、ルーフ後半部分をノッチバックに変更して3ボックスセダンに仕立てたのだ。その結果、軽としては最大のトランクスペースを持っていたこともミニカの大きなアピールポイントだった。

パワートレインは、最高出力17ps/最大トルク2.8kgmを発揮する360cc 直2空冷OHV 2ストロークエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式は当時多くの軽が採用していたRRでなく、オーソドックスなFRを採用。最高速度は86km/h、価格は38.5万円だった。

その後も規格変更に対応しながら、三菱の軽自動車の基幹モデルとして進化し続け、8代の2011年まで50年近く販売された。

高性能モデルのダンガンZZが注目された6代目ミニカ
1989年1月のこの日、モデルチェンジした6代目「ミニカ」は、“狭い”、“うるさい”、“走らない”、“こわい”といった、従来の軽自動車に対する不満を解消することを目標に開発された。
スタイリングは、シンプルでボクシーだった旧型から、当時の「ギャラン」や「ミラージュ」と同様の“ランディ・シェル”と呼ばれる複合曲面フォルムへと変身。包み込むような丸みのあるボディで、ホイールベースは旧型と変わらないが、全高を高めることで余裕の居住スペースが実現された。
パワートレインは、最高出力32ps&30ps/最大トルク4.3kgm&4.2kgmを発揮する550cc 直3 SOHCエンジンと4速MTおよび3速ATの組み合わせ。そして、スポーツグレードのダンガンZZは、最高出力64ps/最大トルク7.6kgmの550cc 直3 DOHC インタークーラーターボエンジンと5速MTの組み合わせ。駆動方式は、2WD(FF)とHCU式フルタイム4WDが選べた。

車両価格は、50.3万~86.3万円、ダンガンZZが99.8万円、HCU式4WDが79.0万円に設定。当時の大卒初任給は16.4万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で71万~121万円、ダンガンZZは140万円に相当する。

1989年はバブル好景気の後押しで、高性能化・高機能化は軽自動車にも波及した。ダンガンZZは、1985年10月にデビューしたダイハツ「ミラTR-XX(SOHC インタークーラーターボ:52ps/7.1kgm)」や1987年2月デビューのスズキ「アルトワークス(直3 DOHC インタークーラーターボ:64ps/7.3kgm)」、1988年3月デビューのスバル「レックスVX(直2 SOHCスーパーチャージャー:55ps/7.4kgm)」といったライバルに対抗する狙いがあったのだ。

革新的な5バルブエンジンとHCUフルタイム4WD
軽の小さな燃焼室に5つ(吸気3×排気2)のバルブを配置することは、設計的に相当厳しいことが予想されるが、それでも三菱が5バブルにこだわったのには、大きなメリットがあるからだ。

5バルブが生み出す最大のメリットは、このクラスのボアサイズでは5つのバルブが最も吸気バルブの開口面積が大きくとれ、吸気充填効率の向上に繋がること。そして、傘径(質量)の小さな吸気バルブは、高回転域でのバルブの追従性を高め、高回転までエンジンが回せ、高回転・高出力と低燃費をハイレベルでバランスできるのだ。
さらにもうひとつ革新的な技術として採用されたのが、HCU(Hydraulic Coupling Unit)式フルタイム4WDだ。
HCUは、高効率でコンパクトな差動ポンプ方式を応用したカップリングであり、プロペラシャフトと後輪デフの間に装着することで、走行条件に応じて前後輪の駆動力配分を自動的に最適化するフルタイム4WDである。

一般的なVCU(ビスカップリングユニット)がシリコンオイルの剪断抵抗という動的な特性を利用し、前後輪に回転差がある場合、4WD機能を発揮するのに対して、HCUは作動オイルの非圧縮性という静的な特性を用いた画期的な4WDシステムだ。
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6代目ミニカには、5バルブエンジンとHCU式4WDの他にも、世界初の3スプレーインジェクタ、軽初の低フリクションのローラーロッカーアーム、バルブクリアランスを自動で適正に保つオートラッシュアジャスタ、ノックコントロールシステム、水冷式オイルクーラー、軽3気筒唯一のバランサシャフトの採用など、先進技術てんこ盛りだった。いろいろな規制が緩かったことに加えて、バブル景気によってメーカーに潤沢なリソースがあったからこそできたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。






