ホンダ スーパーカブ110 Lite……341,000円(2025年12月11日発売)

原付二種モデルのスーパーカブ110をベースに、新基準原付の規定内である最高出力4.0kW(5.4PS)以下に抑えるため、吸気量を絞るとともにECUで燃調を制御。3.5kW(4.8PS)/6000rpmとしたのがスーパーカブ110 Liteだ。最大トルク6.9Nmを3750rpmという低い回転数で発生させているのがポイント。車重101kgは原付二種モデルと同じだ。
標準装着タイヤはIRC製のNF63B Y/NR78Yだ。スーパーカブ50がチューブタイプだったのに対し、110 Liteはチューブレスなので、パンク修理がしやすいという長所がある。
車体色はタスマニアグリーンメタリックとバージンベージュの2種類。原付一種の交通ルールが適用されるため、二人乗りのためのタンデムステップは省略されている。
スーパーカブ110 Liteは、スーパーカブ50の生産終了に伴い、その代替として誕生したモデルだ。50の最高出力は2.7kW(3.7PS)/7500rpm、最大トルクは3.8Nm/5500rpmであり、エンジンのパフォーマンスでは110 Liteが圧倒する。なお、車両価格は24万7500円で、代替とはいえ9万3500円差をユーザーが納得できるかが鍵となろう。

発進加速は原付二種と同等、急勾配でもストレスなく上る

原付一種に追加された新たな区分基準、それが「新基準原付」だ。令和7年(2025年)4月1日施行の改正道路交通法施行規則により、『構造上出すことができる最高出力を4.0kW(5.4PS)以下に制御した総排気量125cc以下の二輪車』が、一般原動機付自転車として運転できるようになった。ニュースでは、この『125cc以下』の部分が強調されたため、原付免許でどんな125ccでも乗れるという誤解が広まってしまったのは少々残念だ。よって各都道府県警では、サイトなどで「購入時には排気量だけでなく、最高出力が4.0kW以下になっていることを確認するように」と呼びかけている。

さて今回は、2025年10月16日にホンダが新基準原付の第一弾として発表した4機種のうち、最もベーシックな“スーパーカブ110 Lite”をピックアップして試乗した。

小型二輪以上の運転免許を持っている方にとって、新基準原付は注目に値する対象ではないだろう。筆者もその一人だった。しかしここ最近、原付免許で乗れる電動スクーター各車を試乗し、現実的な使われ方とパフォーマンスとの間に大きな隔たりを感じたことで、俄然興味が湧いたのだ。それに、8.0PSから4.8PSに最高出力を抑えたエンジンについても、ジャーナリストとして乗らずには語れないだろうという思いもあった。なお、今回は原付二種モデルとの性能差を厳密に体感するため、ベースとなったスーパーカブ110も用意した。

110と110 Liteの外観上の違いは非常に少なく、タンデムステップの有無や前後フェンダーのデカールが主な判別ポイントだ。見慣れたスーパーカブ110の車体に白ナンバーが付いているのは、何とも不思議な感覚ではある。

フロントカバーエンブレム下部、および右クランクケースカバー上面に貼られたデカールから、このモデルが新基準原付の110 Liteであることが分かる。

セルボタンを押してエンジンを始動する。スーパーカブらしい柔らかくも歯切れの良い排気音は、110とほとんど変わらない。サイレンサーの刻印が同じなので、おそらく共通パーツなのだろう。最高出力は40%も減じられているが、エキゾーストノートにそこまで抑制された印象は一切ない。

これを執筆している2026年1月下旬現在、ホンダ公式サイトに110 Liteのパーツリストが掲載されていないため断言はできないが、少なくともサイレンサーは打刻された品番を見る限り原付二種モデルの110と共通と思われる。

ローにシフトしてスロットルをわずかに開けると、車体がすぐに動き出した。そして、そこからの加速感は、最高出力が5PS以下とは思えないほど力強く、思わずヘルメットの中でニヤリとしてしまった。片側二車線のバイパスでもストレスなくクルマの流れに乗れるほか、2速のままでの発進も余裕だ。常にワイドオープンを強いられる4スト50ccのスクーターとはゼロ発進が段違いであり、しかも勾配のきつい上り坂では原付二種モデルの110と同等の登坂性能を見せる。厳密には、スロットルの開け始めでわずかに110との差を感じるが、その角の取れたレスポンスは負圧キャブのようでもあり、筆者はこのフィーリングを大いに肯定したい。

最高出力を下げた分、ドリブンスプロケットの歯数を大きくするなどして帳尻を合わせているのかと思いきや、4段ミッションの各変速比、一次/二次減速比ともすべて共通だ。110 Liteの加速性能の秘密は、おそらく最大トルクにある。諸元表を見ると、110の8.8Nmに対して6.9Nmと約22%ダウンに抑えられており、しかも発生回転数は5500rpmから3750rpmと、より低い回転域で発生している。その結果として、二次減速比を変える必要がないほどのパフォーマンスを得たのだろう。どのシーンでも各ギヤの守備範囲が広く、ローで発進してすぐに2速か3速に入れてしまえば、あとはほぼオートマ感覚で走れてしまうほどだ。

スーパーカブ110/110Liteのオーナーズマニュアルより。

なお、クローズドエリアで試した最高速は、メーター読みで57~58km/hぐらいだった。点火を間引くタイプのスピードリミッターによって制御されているようだが、そこまでの加速感は2スト時代の50ccスクーターを凌駕するほど。都市部であれば、少なくともこれぐらいの動力性能は欲しいところであり、賛同する人は多いはずだ。

110譲りの操縦安定性、これが新基準原付のアドバンテージだ

ハンドリングについては、110も110 Liteも何ら変わらない。101kgという車重も、標準装着タイヤも共通であり、軽い入力でスイッと曲がれる扱いやすさと旋回力の高さはスーパーカブならではだ。

ここで視点を「原付免許で乗れるバイク」に切り替えると、110 Liteは俄然魅力的に見えてくる。もともと50ccで設計されたスクーターと比べると、車体はやや大柄であり、車重もある(タクトより22kg重い)が、微速域からの安定性は明らかに高い。それに、スーパーカブ50と比べても、ホイールがアルミキャストだけあってハンドリングにはシャキッとした印象がある上に、フロントディスクブレーキによる制動力の高さとABSによる安心感は大きなアドバンテージだ。

「原付二種モデルがベースの新基準原付」の誕生は、こうした操安性の高さを原付一種クラスに普及させるというテーマもあるのではないか、そんなことを思ったのだ。というのも、つい先日、所用でホンダのジュリオを借りたのだが、もう30年近くも前に設計された原付スクーターだけあって、国道を現実的なペースで走らせている際の安定性が低いと感じたからだ。もしこの先、ホンダ・Liteシリーズのような操安性に優れた新基準原付が普及すれば、原付の法定最高速度の引き上げも現実味を帯びてくるのではないだろうか。

ホンダのジュリオは、1998年7月に発売された原付メットインスクーターだ。49ccの空冷2スト単気筒は5.1PSを発揮し、車重は76kgと軽量だった。

とはいえ、普及するためには売れなければならないのだが、そこに立ちはだかるのが車両価格だろう。スーパーカブ50に対して9万3500円も高いことから、年金暮らしの高齢者や学生が買うにはかなりハードルが上がってしまったのは事実。とはいえ、おそらくリセールバリューは高値安定と思われるし、電動スクーターよりも現実的な使い方に即していることを考えると、筆者は原付免許保有者に対して、このLiteシリーズを強く推したい。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

ライディングポジション、足着き性ともに110とまったく同じ。ハンドルの切れ角が大きいので、狭い駐輪場でも取り回しがしやすく、着座したままでの移動も楽チン。レッグシールドによる下半身のウインドプロテクション効果が高く、サイドスタンドの出し入れもしやすい。気になるとすれば右足がキックペダルと干渉することだが、これは慣れてしまえば許容範囲だろう。

ディテール解説

109cc空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは、4段ミッションの各変速比や圧縮比まで原付二種モデルのスーパーカブ110と共通で、点火プラグは110のCPR8EA-9Sに対して、110 LiteはCPR6EA-9Sを採用。吸気量を絞るとともにECUによる燃調制御により、最高出力を8.0PSから4.8PSに低減している。ちなみにスーパーカブ50の最終モデルは3.7PSだ。
伝統のシーソー式チェンジペダルを採用。遠心クラッチを採用しているのでクラッチレバーが存在しないのもスーパーカブシリーズの特徴だ。
スーパーカブ110は2022年モデルでY字スポークのアルミキャストホイールやフロントディスクブレーキを採用。これを110 Liteも踏襲する。ABSはフロントのみに採用。
リヤブレーキは110と同様にドラム式だ。ドライブチェーンおよびドリブンスプロケットはチェーンケースでフルカバードされている。二次減速比は110と共通だ。
大型レッグシールドも含めて実にスーパーカブらしいコックピットだ。荷掛けフックは積載重量1.0kgまで。
速度計を110の140km/hフルスケールから60km/hとし、さらに速度警告灯を追加した110 Liteのメーター。液晶画面はバーグラフ式の燃料計とギヤポジションを常時表示し、さらに時計/積算計/距離計/平均燃費の切り替え表示機能を持つ。
座面が広く、なおかつクッション性の高いシート。車体左側にはヘルメットホルダーあり。
燃料タンクはシート下にレイアウト。指定燃料は無鉛レギュラーで、容量は4.1L。燃料計のマークが一つだけ点滅したときの残量は約0.69Lだ。
ラゲッジキャリアも110と共通で、メインスタンドを立てる際のアシストグリップとしても機能する。
灯火類は丸型ヘッドライトのみLEDを採用。前後ウインカーはフィラメント球だ。
テール&ストップランプもフィラメント球。

ホンダ・スーパーカブ110 Lite 主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BH-JA76
全長(mm) 1,860
全幅(mm) 705
全高(mm) 1,040
軸距(mm) 1,205
最低地上高(mm) 138
シート高(mm) 738
車両重量(kg) 101
乗車定員(人) 1
燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 105.0(30)〈1名乗車時〉
          WMTCモード値 67.5(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.9
エンジン型式 JA76
エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm³) 109
内径×行程(mm) 47.0×63.1
圧縮比 10.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 3.5[4.8]/6,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 6.9[0.70]/3,750
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式(キック式併設)
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 4.1
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式4段リターン
変速比 1速 3.142
    2速 1.833
    3速 1.333
    4速 1.071
減速比(1次/2次) 3.421/2.500
キャスター角(度) 26°30´
トレール量(mm) 73
タイヤ 前 70/90-17M/C 38P
    後 80/90-17M/C 50P
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS)
       後 機械式リーディング・トレーリング
懸架方式 前 テレスコピック式
     後 スイングアーム式
フレーム形式 バックボーン