ホンダ スーパーカブ110……352,000円(2025年12月11日発売)

スーパーカブ110の初登場は2012年。2018年のフルモデルチェンジで現在のスタイリングとなり、生産拠点が中国から熊本製作所へと移管された。
標準装着タイヤはIRC製のNF63B Y/NR78Yだ。
車体色は、フレアオレンジメタリックがディスコンとなり、グリントウェーブブルーメタリック、タスマニアグリーンメタリック、バージンベージュ、クラシカルホワイトの計4種類に。

粘り強くてパワフル、なおかつ牧歌的な味わいもあるエンジン

2025年10月16日、ホンダは新基準原付の「Lite」シリーズ4機種を発表。スーパーカブ110 Liteは34万1000円で販売されることが明らかになった。これを聞いた瞬間、「やはり原付二種のベースモデルよりも高くなったか」などと、自分の予想が当たったことをうれしく思った。ところが、ホンダは同日にスーパーカブ110を含む原付二種モデル4機種の価格改定も発表。新基準原付の方が高いという逆転現象を回避した。具体的には、スーパーカブ110は30万2500円から35万2000円となり、つまり16.4%も値上がりしたことになる。

通常、値上げのエクスキューズとして何かしらのバージョンアップが行われるが、今回は車体色のラインナップを整理したのみで、スペックに一切の変更はない。Liteシリーズの登場によって玉突き的に値上がりした感が拭えず、以前からスーパーカブ110の購入を検討していた人にとっては酷な状況と言えるかもしれない。付け加えると、筆者もその一人である。

スーパーカブ110にはこれまで何度も試乗しており、直近では灯火器の法規対応が実施された2020年モデル、前後ホイールがワイヤースポークからアルミキャストとなった2022年モデルをテストしている。付け加えると、あまりにも気に入ったので、2021年と2024年には沖縄ツーリングの相棒として同車をレンタルしており、総走行距離は600kmを優に超える。

左が2024年、右が2021年に沖縄でレンタルしたときの車両。沖縄県の本島北部はガソリンスタンドが少ないので、スーパーカブ110の燃費の良さは実に頼もしい。

今回は、110 Liteとの比較のために原付二種モデルの110も借りたのだが、あらためてその優秀さに感心した。2022年モデルでよりロングストロークとなった現行エンジンは、信号発進でクルマを先行できるだけのダッシュ力があるほか、2速のままでUターンができるほど低回転域で粘り強い。そして、よほど急な勾配でないかぎり、厚いトルクを生かしてトップ4速のままスルスルと上り坂を進んでいく。加えて、巡航中の牧歌的な鼓動感はスーパーカブならではであり、シフトフィーリングも節度感があって実に操作が心地良いのだ。

スーパーカブは、1958年に発売された初代C100から独自のトランスミッションを採用しており、自動遠心クラッチとシーソー式チェンジペダルに最初は戸惑うかもしれない。いわゆる逆シフトパターンであり、停止時のみトップからニュートラルにチェンジできるロータリー式でもある。クラッチレバーによる操作が必要ない(ゆえにAT限定免許でも乗れる)ので、慣れてさえしまえばそのイージーさを享受できる。それに、粘り強いエンジン特性ゆえに各ギヤの守備範囲が広く、シフトチェンジの回数が少ない点もスーパーカブ110の美点と言えるだろう。

伝統のシーソー式チェンジペダルを採用。自動遠心クラッチなのでAT小型限定普通二輪免許で運転可能だ。

モーターサイクルのような安定性に優れたハンドリング

キャストホイールとフロントディスクブレーキを採用して以降のスーパーカブ110は、走りの質がコミューターからモーターサイクルに接近したと言っていい。ワイヤースポークホイール&前後ドラムブレーキの先代は、大きなギャップでクシュッと伸縮するサスペンションと、やや穏やかな制動力によって、いわゆる街乗りバイクの域を脱していなかった感がある。これに対して現行モデルは、操縦に対するレスポンスが上がっているだけでなく、芯が一本通ったような安定性もあり、ワインディングロードですら楽しめるのだ。

この「モーターサイクルらしさ」に大きく貢献しているのがディスクブレーキだ。従来のドラムと比べて絶対制動力、コントロール性ともに優れており、さらにABSが付いているのも心強い。大量の荷物を積んだ状態での下り坂や、沖縄のように滑りやすいアスファルトでは、現行モデルのアドバンテージは圧倒的だ。

前後ともY字スポークのアルミキャストホイールを採用。フロントブレーキはディスクで、キャリパーはニッシン製シングルピストン。1チャンネル式ABSを標準装備する。

スーパーカブ110については、積載性と防風効果の高さも忘れてはならない。標準装備のラゲッジキャリアは面積が広いので大きなバッグも積みやすく、伝統のレッグシールドは下半身に直撃する風圧を大幅に軽減してくれる。今回は1月下旬の極寒シーズンに試乗したこともあり、このウインドプロテクション効果には本当に助けられた。これらは街乗りだけでなくツーリングにおいても有益であり、だからこそ筆者は沖縄でスーパーカブ110を二度もレンタルしたのだ。

あらためて最新モデルに試乗し、魅力もパフォーマンスも不変であることを確認できた。となると、争点となるのはやはり車両価格だろう。2026年モデルの値上げは昨今の物価高を反映してのことでもあり、可処分所得が相応にアップしている人にとっては些細な問題だろう。筆者は残念ながらそちら側ではないので、約5万円ものアップは正直厳しい。とはいえ、今後さらなる値上がりも予想されるので、買うなら1日も早い方がいいだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

シート高は738mmで、ご覧のとおり足着き性は優秀だ。ハンドルとシートとの距離が近いので、小柄なライダーでも操縦しやすい。ステップは地面に近い位置にあるが、バンク角は十分に確保されている。標準装備のメインスタンドは、軽い力で上げることが可能だ。

ディテール解説

2022年モデルで、ボア×ストロークをφ50.0×55.6mmからφ47.0×63.1mmに、圧縮比を9:1から10:1とした109cc空冷SOHC2バルブ単気筒。最高出力8.0PSを7500rpmで発生する。
セルモーターのほか、キックによるエンジン始動も可能。気温5℃以下の寒い状況においても、軽く踏み下ろすだけですぐに始動した。
リヤサスペンションはツインショックで、ショックユニットはフルカバードとされる。リヤブレーキはドラム式だ。
シンプルなデザインのコックピット。クラッチレバーは存在しない。純正アクセサリーとしてグリップヒーター(1万9965円)が用意されている。
140km/hフルスケールの指針式速度計に液晶画面を組み合わせたメーターは、2022年モデルから採用された。ギヤポジションと燃料計を常時表示するほか、時計/積算計/距離計/平均燃費を切り替え表示する。
必要最小限のスイッチボックス。ウインカーはプッシュキャンセル式だ。
ロングツーリングでお尻が痛くなったことがないと断言できるほど、座り心地の良いシート。下方に見えるのがヘルメットホルダーだ。
前ヒンジ式のシートを持ち上げると燃料タンクが現れる。容量は4.1Lだ。
大型のラゲッジキャリアには荷掛けフックがあり、大きなバッグでもしっかりと括り付けられる。カスタマイズパーツとしてSP武川のピリオンシート(9350円)が用意されている。
上下2段の丸型LEDヘッドライトを採用。ウインカーはフィラメント球だ。
2020年モデルで、二輪車灯火器基準に関する法規対応を施したテールランプを採用。最新の2026年モデルでもこれを継続する。
スイングアームは2012年登場の初代110でスチールの角断面パイプとなり、その側面にパッセンジャー用の可倒式ステップが設けられた。

スーパーカブ110(2026年モデル)主要諸元

車名・型式 ホンダ・8BJ-JA59
全長(mm) 1,860
全幅(mm) 705
全高(mm) 1,040
軸距(mm) 1,205
最低地上高(mm) 138
シート高(mm) 738
車両重量(kg) 101
乗車定員(人) 2
燃料消費率(km/L) 国土交通省届出値:定地燃費値(km/h) 68.0(60)〈2名乗車時〉
          WMTCモード値 67.9(クラス 1)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m) 1.9
エンジン型式 JA59E
エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量(cm³) 109
内径×行程(mm) 47.0×63.1
圧縮比 10.0
最高出力(kW[PS]/rpm) 5.9[8.0]/7,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 8.8[0.90]/5,500
燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式 セルフ式(キック式併設)
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L) 4.1
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式4段リターン
変速比 1速 3.142
    2速 1.833
    3速 1.333
    4速 1.071
減速比(1次/2次) 3.421/2.500
キャスター角(度) 26°30´
トレール量(mm) 73
タイヤ 前 70/90-17M/C 38P
    後 80/90-17M/C 50P
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク(ABS)
       後 機械式リーディング・トレーリング
懸架方式 前 テレスコピック式
     後 スイングアーム式
フレーム形式 バックボーン