連載

【1代限りで消えた車名】

ホンダ・オデッセイが拓いたロールーフ×スイングドアミニバン市場

1994年に発売されたホンダ・オデッセイは、ミニバン(当時はワンボックスという名称が一般的だったが)の7名乗車やユーティリティ性を備えながら乗用車テイストの乗り味で大ヒットした。

1994年に発売された初代ホンダ・オデッセイ。乗用車テイストの乗り味と、商用車と決別した高級感が人気を集めた。

オデッセイが切り開いたロールーフ×スイングドアのミニバンという市場に、各社は次々と参入。トヨタは1996年にイプサム、1998年にガイアを、日産は1998年にプレサージュ、マツダが1999年にプレマシーをリリースしている。

1996年に登場したトヨタ・イプサム(初代)。
1998年にイプサムの高級モデルとして追加されたガイア。
1998年に登場した日産プレサージュ。プラットフォームを共用する5名乗車のワゴン「ルネッサ」も1代限りの車名だ。
1999年に登場した初代マツダ・プレマシーは、7名乗車モデルと5名乗車モデルをラインナップ。2代目からはスライドドアに。

実はオデッセイよりもずっと早くロールーフ×スイングドアのミニバンをラインナップしていた三菱は、それこそこのジャンルの嚆矢ともえいるシャリオが1997年に3代目にモデルチェンジ。シャリオ・グランディスとなった。

1997年にフルモデルチェンジして3代目となった三菱シャリオは「グランディス」のサブネームが追加された。写真は2001年に設定された「ナビリミテッド」。

このようにオデッセイフォロワーとなるロールーフ×スイングドアのミニバンが多数市場に登場する一方、ひとつの兆候があった。上級志向の派生モデルである。イプサムからガイアが派生し、そして、プレサージュからは1999年にバサラが生まれたのだった。

1999年にプレサージュから派生して誕生したバサラ。

これらのロールーフ×スイングドアミニバンは1.8L〜2.4L直列4気筒エンジンが中心。3.0L級のV型6気筒エンジンをラインナップしたのはオデッセイの他にはプレサージュとこのバサラくらいだった。

赤か青か……それが問題だ

この時代はまだ多少の統廃合が進んだとはいえディーラー系列で販売車種が分かれていた。当初バサラはサニー店とチェリー店での取り扱いだった(サニー店はその後サティオ店に移行)。さらに、バブル崩壊と経営難で苦境にあった日産は、細分化されていディーラー系列を「レッドステージ」と「ブルーステージ」に集約。バサラがレッドステージ、プレサージュがブルーステージでの扱いだった。

日産バサラ

とはいえ、両車の違いはフロントとリヤのデザインくらいで、エンジンやパワートレインのラインナップに違いはなかった。
フロントマスクはプレサージュの4分割グリルに対し、バサラは縦スリットデザイン。リヤはコンビネーションランプがプレサージュは横分割、バサラは縦分割というのが違いになっている。

日産プレサージュ
日産バサラ

バサラの車名の由来は、大元はサンスクリット語の「vajra(ヴァジャラまたはヴァジュラ)」。これは、魔人を降伏させるダイヤモンドのことで日本語では金剛杵と書く。

日産バサラのイメージカット。アヴァンギャルドな雰囲気だ。

一方で、日本語でそのままバサラ(婆娑羅)という言葉もあり(由来は同じ)、南北朝時代にこれまでの伝統や習慣、権威に逆らい奢侈で派手な振る舞いや、粋で華美な服装を好む文化を指し、そのような武士を婆娑羅大名と呼んだ。

日産バサラのイメージカット。

トップグレードは新世代のV型6気筒エンジン「VQ30DE」を搭載

1999年のデビュー時はプレサージュ同様にKA24型2.4L直列4気筒DOHC、YD25DDTi型2.5L直列4気筒ディーゼルターボ、VQ30DE型3.0L V型6気筒DOHCというラインナップ。

VQ30型3.0L V型6気筒DOHCエンジンは220ps/6400rpm・280 Nm(28.6kgm)/4400rpmを発揮。
KA24型2.4L直列4気筒DOHCエンジン。スペックは150ps)/5600rpm・216Nm(22.0kgm)/4400 rpmというもの。
YD25DDTi型2.5L直列4気筒ディーゼルターボは150ps/ 4000rpm・275Nm(28.0kgm)/1800 rpmというスペック。

2001年のマイナーチェンジの際にはディーゼルがラインナップから外れ、4気筒ガソリンエンジンはKA24型に代わりに新設計のQR25DE型に変更され、2.5L直列4気筒と3.0L V型6気筒の2モデルに整理された。

QR25DE型2.5L直列4気筒DOHCエンジンは165ps/6000rpm・233Nm (23.8kgm)/4000 rpmを発揮。

トランスミッションは4速ATのみ。FFと4WDが用意され、サスペンションはどちらもフロントがストラット、リヤがマルチリンクを採用している。

フロントサスペンションはストラット式。
FF車のリヤサスペンションはマルチリンクビーム式。
4WD車のリヤサスペンションはマルチリンク式。

7名乗車と8名乗車を設定!ウッド加飾で高級感を演出

バサラのベースであるプレサージュは「高級車から乗り換えても違和感の無い高級感」を謳っており、それはバサラも踏襲される。フロントはウォークスルーが可能なアームレスト付きのキャプテンシートで、2列目はフロントと同じくキャプテンシートと3名掛けベンチシートを用意。2列目ベンチシートは8名乗車となる。

日産バサラのインテリア。写真はオプションとして用意された本革パッケージ。本革シートにウッド加飾、ステアリングもレザー+ウッドの組み合わせになる。

標準ではファブリックシートに樹脂内装+カーボン調加飾とややスポーティだが、オプションとしてレザーシート+ウッド加飾の「本革パッケージ」やホワイト内装+ウッド加飾の「ラグジュアリーパッケージ」が用意されるなど、セドリック/グロリアクラスを意識した高級感を演出している。

こちらは標準インテリアだが、メーターやシフトレバーにカーボン調加飾を採用しており、スポーティさを演出している。
2列目キャプテンシートの7名乗車仕様は前席から3列目までウォークスルーが可能。写真は標準インテリア。
2列目ベンチシートの8名乗車仕様。写真はオプションのラグジュアリーパッケージで、インテリアがホワイト+ウッド加飾となる。

もちろんシートアレンジは豊富で、2列目+3列目フルフラットや、2列目シートは格納時はシートバックがデーブルにできたり、3列目シート格納(左右跳ね上げ式)などが可能。8名乗車の2列目ベンチシートは6対4分割になっている。

2列目+3列目フルフラット。
2列目格納(テーブル)。
3列目フラット。
2列目+3列目片側格納(テーブル)。(7名仕様)
3列目格納。
2列目+3列目格納。
2列目+3列目フルフラット。(8名仕様)
3列目格納。(8名仕様)
2列目+3列目格納。(8名仕様)

価格はFFが234万4000円〜304万4000円。4WDが258万4000円〜313万4000円。3.0L V型6気筒エンジンはFFにしか設定がなかった。プレサージュの189万8000円(2.4L/FF)〜299万8000円(3.0L/FF)と比べると、やはりやや上級志向なのがわかる。

また、「よりおしゃれでより上品なダンディミニバン」というコンセプトで内外装を専用装備とした特別仕様車「アクシス」も設定された。これはオーテック(現NMCオーテック事業部)によるもので、マフラーやサスペンションなども変更され、スポーティに仕上げられている。

日産バサラ「アクシス」

また、オーテック架装モデルとしては福祉車両の「アシャンテ」も設定。助手席が回転スライドする『スライドアップシート』に加え、ラゲッジルームの車椅子収納装置などもオプションとして用意していた。
「アクシス」と「アシャンテ」はの設定はプレサージュと同様だ。

日産バサラ福祉車両「アシャンテ」(オプション装着車)

ロールーフ×スイングドアミニバンの流行と共に去りぬ

結局ミニバンのジャンルはハイルーフ×スライドドアが圧倒的優勢となり、そのほかの形態は次第に淘汰されてゆく。ロールーフ×スライドドアはもちろん、ロールーフ×スイングドアは一部がモデルチェンジの際にスライドドア化して生き延びたものの、オデッセイが4代目まで続いた以外は全て消えた。そのオデッセイも2013年デビューの5代目ではついにスライドドア化しており、今や希少なロールーフミニバンとなっている。

2008年登場の4代目ホンダ・オデッセイは最後のスイングドア車となった。
スライドドアを採用した5代目ホンダ・オデッセイは2013年登場。ロールーフミニバン衰退時に、日本での販売は一時中断されるが、その後再開され現行モデルとして販売中(2026年1月現在)。

イプサムは2010年に2代目で、プレサージュは2009年にやはり2代目で終了。2代目でスライドドア化したプレマシーは次の3代目で比較的長く残ったものの2018年に終了している(前回のアイシスより後!)。シャリオグランディスも2003年にその長いシャリオの名跡に幕を引いた。

2010年から2018年まで販売された3代目マツダ・プレマシー。2代目日産ラフェスタとしてOEM供給された。

さらに短命だったのが上級志向派生モデルで、ガイアは2004年に6年で、バサラに至っては2003年にプレサージュに統合される形で4年のモデルライフで、どちらも2代目に移行することなく販売終了となっている。

2003年にモデルチェンジした2代目日産プレサージュ。

一概には言えないが、ガイア、バサラ以外にも日産ローレルスピリット(サニー)、トヨタ・エスクァイア(ノア/ヴォクシー)といった上級志向の派生モデルは長続きしなかった印象があるが、はたして……?

2014年に3代目トヨタ・ノアの兄弟車として追加されたエスクァイア。ノア/ヴォクシーよりも高級路線で、マークII 三兄弟におけるクレスタポジション。2022年のノア/ヴォクシーのモデルチェンジの際にやはり1代限りで消滅している。

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