
スズキGSX-8Tは、GSX-8Sをベースに開発されたネオレトロ・ストリートモデルで、エンジンも同モデルの775cm³パラレルツインを基礎としている。最新世代のプラットフォームを活かしつつ、クラシックな造形と現代的な装備を組み合わせたネオレトロモデルだ。
外観デザインはスズキのイタリア拠点が担当。欧州的な感性を取り入れながら、日本の量産基準に合わせて最終的な造形が仕上げられている。丸型LEDヘッドライトはLEDでありながら、ハロゲンランプの「見やすさ」と「光の質」にこだわって開発され、クラシックな雰囲気と現代の灯火性能を両立する。

フューエルタンクは1960〜70年代のT500のラインを参考に、ボクシーで力強い形状にこだわって造形された。容量は16Lで、GSX-8Sの14Lよりも大きく、長距離ツーリングにも対応する実用性を備える。エアシュラウドには、ビリヤードの8ボールをモチーフにした「8」のエンブレムを配置。ネオレトロを押し出す遊び心も盛り込まれている。

同モデルの象徴とも言えるバーエンドミラーは、GSX-8Tのデザインコンセプトに合わせて新設計されたもの。車体のシルエットを崩さず、視界を妨げないコンパクトさを重視して開発され、成形時に生じるパーティングラインは手仕上げで処理されている。ミラーの曲率は複数案を検討したうえで決定され、GSX-8Sと同等の後方視認性を確保する。
装備面では、スズキ・インテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)を採用。トラクションコントロール、ライドモード、アシスト&スリッパークラッチを標準装備する。視認性に優れたTFTメーターやフルLED灯火類など、外観のレトロ感とは対照的に電子制御や装備は最新仕様となっている。

見た目だけでなく、特筆すべき装備も多い。その中でも注目したいのが、ELIIY Power製リチウムイオンバッテリーの採用だ。従来の鉛バッテリーと比較して約60%の小型化を実現し、重量は約2100g軽量化されている。自己放電が少ない点も特筆すべきで、バッテリー容量が半分になるまで約740日を要するという。低温環境でも充電性能が落ちにくく、冬季使用時の安心感が高い点もメリットだ。軽量化と信頼性向上の両面で、シリーズの技術的進化を象徴する装備といえる。

兄弟車として設定されるGSX-8TTは、GSX-8Tと基本構成を共通としながら、外装の違いによってよりレトロな雰囲気を強めたモデルである。特徴的なのが、GS1000Sからインスパイアされたヘッドライトカウルだ。当初はGSX-8Tのオプションとして企画されていたが、装着時の完成度が高く評価され、独立したバリエーションモデルとして採用されるに至った。
このヘッドライトカウルには、スクリーン部にエアインテークを設け、スクリーン上端の玉縁へ導風することで、ライダーに当たる風を軽減する機能を持たせている。さらにアンダーカウルの装着やシート形状の変更などにより、同一プラットフォームを用いながらキャラクターを明確に差別化。足まわりの仕様は8Tと共通で、スタイルの違いに重点を置いたバリエーションとなる。
価格は129万8000円。この価格帯には、ヤマハXSR700(100万1000円)、カワサキZ650RS(108万9000円)、ホンダCB650R(103万4000円)といった競合モデルが並ぶ。XSR700は軽量な689ccパラレルツインを搭載したネオレトロ、Z650RSは1970年代Z1の意匠を再現したクラシック寄りのモデル、CB650Rは直列4気筒を搭載したネオスポーツカフェとして、それぞれ異なる立ち位置を持つ。スズキ自身もGSX-8SやGSX-8Rをラインアップしており、デザインや用途に応じた選択肢は幅広い。
GSX-8Tは、レトロデザインと最新電子制御、そして775ccエンジンの余裕を組み合わせたモデルとして、同価格帯のライバルとは異なる独自のポジションを築く。クラシックな外観を求めつつ、現代的な装備や品質、シリーズとしての統一感を重視するユーザーに向けた、新たな選択肢といえる。
