Ferrari Luce
クリエイティブ集団「ラブフロム」

マラネッロ初のフル電動モデルの名は「フェラーリ ルーチェ」。日本語で発音しやすい?と聞かれたので、マツダの車名だったから日本人は慣れてるよ、と応える。商標登録は大丈夫なんだろうか。
それはともかく、車名を聞くためだけにわざわざサンフランシスコまで出張ったわけじゃない。昨年9月のパワートレイン&シャシーの先行発表に続く第2弾として、この日「エレットリカのインテリアを公開する」と言うからやってきた。9月の時点で、インテリアコンセプトはサンフランシスコのクリエイティブ集団「ラブフロム」と行っているというアナウンスがすでにあったので、場所の驚きはない。
メディアミーティングの場所となったのはトランスアメリカ・ピラミッド。米サンフランシスコのモダンランドマークである。夜になって気づいたが先端は赤く輝いていた。
27階の見晴らしのいいミーティングルームに20名あまりのジャーナリストが車座になった。メインキャストはラブフロム側からサー・ジョニー・アイブとマーク・ニューソンの2トップ、そしてフェラーリ側ジョン・エルカン会長にベネディット・ヴィーニャ社長、チェントロスティーレのフラビオ・マンゾーニというこれ以上ない布陣である。話を聞くこちらが緊張してしまいそうな顔ぶれだ。
シンプルな定理

会見は和やかに始まった。ファーストスピーカーとなったジョンの言い含めるような優しい話し方がその場の流れを決めたのだった。成功するブランドは常に挑戦的だ。現状維持に満足はしない。フェラーリは特に自動車産業において、決して大きな会社ではないからこそ、関係する全ての分野でリーダーシップを発揮する。そのためには常に大胆で意表をつく戦略が必要になる。彼らのスピーチを聞いていると、そんなシンプルな定理に改めて気付かされた。
果たして既報のとおり、ルーチェのインテリアは全く新しいスタイルとなった。ステアリングコラムと一体となったドライバービナクル(メーター)、グリップ付きで角度調整可能なコントロールパネル、そのほかのディスプレイ全てが統一されたデザインテーマでまとめられ、もちろんそれはiPhoneの香りも嗅ぐことができたが、一見して今の時代にマッチしていた。角が丸い直線基調のパネルなどはiPhoneユーザーには馴染みの深いテーマだろう。
小気味良さの実現

メインキーからメーターグラフィックまで有機ELパネルを用いた複雑で挑戦的な仕組みは韓国サムソン社と、シフトノブや各種ボタンの特殊ガラスは米国コーニング社と、それぞれコラボレーションしたもので、この手の高級車用装備品の新たなスタンダードとなる予感さえある。
何より全ての操作系のタッチが良かった。トグルスイッチを倒す、シフトノブを回す、ガラスボタンを押す、アルミパドルシフトを引く……。この小気味良さの実現はなるほどラブフロムと組んだ甲斐があったというものだろう。
ちなみにトグルスイッチはメインコントロールパネルと後席用パネルにあって、いずれもU字型のバーで保護されている(メイン用は画面を動かすグリップも兼ねている)。決してSUVイメージのデザインではない。ちなみにルーチェは4シーターカーであることがすでに発表されている。サスペンション方式もスポーツカー系ではなくプロサングエに近い。ルーチェの各種パネルの配置は“背の低いスポーツカー用”でないことをあえて注意喚起しておく。
とにかくアルマイト処理を施した再生アルミニウム製パーツがふんだんに奢られている。この生産設備には多額の投資を要したようだ。細かな部品は中国でも生産されるという。
一旦白紙に戻して整理した

個人的にはメーターリングと共にモーターで動く物理的なメーター針とアナログ時計の復活、そして3スポークのアルミニウム製ステアリングホイールが気に入った。この手法を他のエンジン車にもデザインを変えて採り入れてみて欲しい、とヴィーニャ社長に直訴したが、当然ながら要検討の課題であるとは言ってくれた。
フラビオ曰く「SF90」以降のマラネッロ製ロードカーのインテリアは先進性をアピールしたいがためにインターフェースを多少蔑ろにする結果になっていたという。多くのユーザーが指摘していたようにタッチセンサー式の操作系などは使い勝手が悪かった。各種デジタルインフォも階層が複雑で欲しい情報をストレスなく呼び出すこともできなかった。彼ら(インハウスデザイナー)としても、デジタル操作の構築に慣れたプロフェッショナル集団とコラボすることで、多様化するデジタルインフォメーションのデザイン処理を一旦白紙に戻して整理したかったのだろう。
個人的にはもうひとつ、高級車のインテリア質感についてもメスが入ったと思っている。最近の自動車の内装はプラスチックが多く安っぽいとジョニーは指摘した。それらを全てアルミとガラス、そしてレザーに置き換えた。フラビオに「ルーチェのインテリアにはカーボンファイバーも使うの?」と意地悪な質問をしたら苦笑しながら「ノー」と答えた。カーボンもまたプラスチック。プラスチックの見栄えをよくする手法でしかなかったというわけだ。

