ヤマハWR155R……534,600円

WR250Rに通じる悪路走破性

第1回目の最後に述べたように、僕はWR155Rに対して、かつてのヤマハが販売したWR250Rとセロー250的な資質を感じている。まずはWR250Rに通じる話をすると、それはもう言わずもがなの悪路走破性だ。
と言っても、前後ホイールトラベルはセロー250と大差がないようだが(数値は非公表。弟分のWR125Rは215/187mm、WR250Rは前後270mmで、セロー250は225/180mm)、WR155Rの足まわりは路面の凹凸の吸収が早く、長めのホイールベース(弟分と同じ1430mm。WR250Rは1425mm、セロー250は1360mm)のおかげで安定感も抜群。

だから未舗装路でも臆せずにスロットルを開けられるし、おそらく、オフロードコースのジャンプやフープスなどもそれなりにこなせるだろう。

WR250Rとの共通点ではないものの、悪路走破性に関しては、真っすぐ進むことが困難なガレ場で自分の頭に描いたラインを走りやすいことも、このバイクの魅力である。
オフロードの腕前が万年中級以下の僕の場合はガレ場を走ると、凹凸を避けられない‼……という事態に遭遇することがしょちゅうなのだが(深い溝にハマったり、大きな岩に弾かれたり)、WR155Rは理想のラインをなかなか外さない。

もちろんその感触は、車体だけではなく、エンジンも含めての話で、ライダーの意思に忠実に反応するWR155Rに乗っていると、自分の技量が向上したかのような錯覚が味わえるのだ。
セロー250を思わせる粘り強さ

一方のセロー250に通じる資質は、半クラッチをあまり必要としない、極低回転域のエンジンの粘り強さ。このバイクでガレ場や勾配の急な上り坂を走っているとセロー250と同様に、何があってもストールすることはない、スロットルを開けてさえいれば大丈夫、という自信が持てる。
そして納豆を思わせる粘り強いフィーリングを実感した僕は、かなり間抜けな表現になるけれど、最新の技術ってスゴい‼という印象を抱くこととなった。

と言うのも、セロー250とWR155Rには約100ccもの排気量差があるのだ。にも関わらず、今回の試乗期間中に出かけた林道ツーリングで、友人Sが所有するセロー250に乗せてもらった僕は、極低回転域の粘り強さに加えて、日常的の特性にも大きな差を感じなかった。

もちろん、絶対的なパワー・トルク・最高速はセロー250のほうが上である(最高出力・最大トルク・最高速は、WR155R:16.7ps・1.5kgf・m・120km/h前後、セロー250:20ps・2.1kg-m・135km/h前後)。

でも最新の電子制御式燃料噴射と可変バルブ機構を導入したWR155Rは、気化器がキャブレターで可変バルブ機構を装備しない一昔前の155cc単気筒では絶対に実現不可能な、守備範囲が広い特性を獲得しているのだ。
WR250R+セロー250≒WR155Rではない?

さて、ここまではWR250R+セロー250≒WR155R的な展開になってしまったけれど、世の中にそんなウマイ話があるはずはなく、実際は(WR250R+セロー250)÷2≒WR155Rである。
オフロードコースをガンガン攻めるならWR250Rには及ばないし、親しみやすさや林道をトコトコ走ったときの心地良さはセロー250のほうが確実に優位。そういった事実を考えると、WR155Rのキャラクターは中途半端と言えるのかもしれない。

ただし、僕はそれが悪いとは微塵も思わなかった。それどころか、最近はヤレが進んだホンダSL230で、月1くらいのペースで林道ツーリングに出かけ、昨年はオフロードコースを4回走った僕にとって、WR155Rは次期愛車候補として理想的な資質を備えていたのである。

もっとも、過去に体験したホンダCRF250L〈S〉とカワサキKLX230/Sにも、僕は同じような印象を抱いているのだった。
そして現在はWR155Rを含めた4機種の中から(KLX250Sの兄弟車であるシェルパを含めると5機種)、自分にとってのベストがどれなのかで大いに悩んでいる。以下の文章では、その理由を解説したい。
他メーカーのライバルとの比較

各車のスペックから推察すると、オフロードを最も速く走れそうなモデルは、ホイールトラベルと軸間距離が長く、最低地上高が高く、最高出力と最大トルクが突出しているCRF250L〈S〉だろう(車重の重さは気になるが)。
その一方で親しみやすさでは、車重が軽くて軸間距離が短く、シートが低いKLX230S/シェルパに軍配が上がる。ただし、利便性や経済性に目を向けると……。

燃費がダントツに良好で、航続距離が相当に長くて、価格が安いWR155Rが1番なのだ。そんなわけで4機種に甲乙は付けられないものの、裏を返せばその事実はどれを購入しても大丈夫、ということかもしれない?

いずれにしてもWR155Rは、CRF250L〈S〉やKLX230/Sと肩を並べて語れるモデルなのだ。第1回目で記したように、今回の1000kmガチ試乗では何度も予想外という印象を抱いた僕だが、最大の予想外は、排気量に勝るライバル勢を比較対象と感じたことだったのである。

主要諸元
車名:WR155R
全長×全幅×全高:2145mm×840mm×1200mm
軸間距離:1430mm
最低地上高:245mm
シート高:880mm
車両重量:134kg
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:155cc
内径×行程:58mm×58.7mm
圧縮比:11,6
最高出力:12.3kW(16.7ps)/10000rpm
最大トルク:14.3N・m(1.46kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
1速:2.833
2速:1.875
3速:1.364
4速:1.143
5速:0.957
6速:0.840
1・2次減速比:3.041・3.642
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:スイングアーム・リンク式モノショック
タイヤサイズ前:2.75-21
タイヤサイズ後:4.10-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:8.1L
乗車定員:2名




