■純国産ショーファーカー誕生への期待
1960年代、日本は高度経済成長期を迎えて国民の所得は倍増、一般庶民にも手の届く純国産車が続々と登場し、日本のモータリゼーションが幕開けた。
そのような中、政治家や会社幹部などを送迎する純国産ショーファーカーへの期待が、官公庁や大企業から寄せられた。ただ当時の日本メーカーでは、ロールス・ロイスやメルセデス・ベンツ、キャデラックのような大型高級車を製造する技術はなかったので、当面は既存の高級車の拡大モデルで対応するしかなかった。
要望に応えるため、日産はセドリックベースの「セドリック・スペシャル」、トヨタはクラウンベースの「クラウン・エイト」で、ショーファーカーの第一歩を踏み出した。
・日産「セドリック・スペシャル」

1963年2月にデビューした「セドリック・スペシャル」は、セドリックのホイールベースを205mm延ばした全長4855mm、全幅1690mmのボディに、最高出力115ps/最大トルク21.0kgmの2.8L 直6 OHVディーゼルエンジンを搭載。前後3人乗車の6人乗りで、高級織物で覆ったシートやパワーシート、パワーウインドウなどを装備し、その大きさと豪華さから日本初の大型乗用車と位置付けられた。
・トヨタ「クラウン・エイト」

翌1964年4月には、トヨタから「クラウン・エイト」がデビューした。クラウン・エイトは、2代目クラウンをベースにして全長は110mm伸ばした4720mm、全幅は150mm拡げた1845mmのボディに、最高出力115ps/最大トルク20kgmを発揮する、国産乗用車初のアルミ製2.6L V8 OHVエンジンを搭載。前後3人乗車の6人乗りで、パワーウインドウやオート・ヘッドライト、ドア自動ロック、オプション設定でオートドライブ、パワーシートなど、高級装備も目を見張るものがあった。
堂々たるショーファーカーの日産・プレジデント

セドリック・スペシャルの後継「プレジデント」は、1965年10月の東京モーターショーで華々しくデビューを飾り、そのサイズ感と豪華さで観衆の目を釘付けにした。発売は、2ヶ月後の12月から始まり、主要な用途は官公庁要人のVIPカーや会社幹部の社用車といったショーファーカーだった。

最大の特徴は、当時のリンカーン・コンチネンタルより長い1940mmの室内長であり、全長5045mm×全幅1795mm×全高1460mmの超大型ボディで豪華さを演出。シートはベンチタイプ、セパレート、セミセパレートが用意され、機能面でも熱線吸収ガラスのフロントウインドウや電熱線入りリアウインドウ、パワーウインドウ、パワーベンチレーター、パワードアロック、パワーシートなどの豪華な装備が満載された。

ボディは、強度剛性の高いモノコックボディを採用、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがリーフリジッドという当時の高級車の定番を装備。またステアリング機構として、乗用車として日本初のパワーステアリングが採用されたことも注目である。
パワートレーンは、最高出力180ps/最大トルク32.0kgm を発揮する4.0L V8 OHVエンジンと130ps/24.0kgmの3.0L 直6 OHVエンジンの2機種と、3速ATおよび3速MTの組み合わせ。
車両価格は、4グレードで185万/200万/250万/300万円に設定。当時の大卒初任給は2.3万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約1850万/2000万/2500万/3000万円に相当する。
プレジデントに対抗したトヨタ・センチュリー誕生

初代センチュリーは、1967年11月に豊田佐吉氏の生誕100周年と明治100年を記念して誕生。100年(1世紀)記念のモデルだから、センチュリーと命名されたのだ。

そのボディサイズは、クラウン・エイトよりも全長+260mm、全幅+45mm、ホイールベースを+120mm拡大した全長4980mm×全幅1890mm×全高1450mmで、宇治平等院の鳳凰をモチーフにしたエンブレムや独特のボディカラーを採用し、比類なき高級感と重厚感は他を圧倒する雰囲気を持ち合わせていた。

パワートレーンは、最高出力150ps/最大トルク24.0kgmを発揮する新開発のアルミ製3.0L V8 OHVエンジンと、コラム式3速ATおよび3速/4速MTの組み合わせ。フロントサスペンションは国産初のエアサスペンション、ブレーキは4輪ドラム式、その他にもドア自動ロック(30km/h)、ビルトインエアコンディショナー、オートライトなど、性能、乗り心地、居住性などトヨタの技術の粋が結集された。
センチュリーはその後1973年にはエンジン排気量を3.4Lに、1982年には4.0Lに拡大。そして1990年にはホイールベースを150mmほど延長したロングボディが追加され、政府要人のVIPカーや会社幹部の社用車として日本が誇るショーファーカーの定番に成長した。
車両価格は、4グレードで208万/228万/238万/268万円に設定。当時の大卒初任給は2.9万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約1650万/1808万/1888万/2126万円に相当する。
プレジデント vs. センチュリー

最後に、プレジデントとセンチュリーのサイズと価格を整理してみた。以下のように、プレジデントの方が大排気量エンジンを搭載して高額なことが分かる。

車両サイズ
・プレジデント:全長5045mm×全幅1795mm×全高1460mm
・センチュリー:全長4980mm×全幅1890mm×全高1450mm
エンジン
・プレジデント:最高出力180ps/最大トルク32.0kgm の4.0L V8 OHVエンジン
・センチュリー:最高出力150ps/最大トルク24.0kgmの3.0L V8 OHVエンジン
車両価格
・プレジデント:185万/200万/250万/300万円
・センチュリー:208万/228万/238万/268万円

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国産ショーファーカーのカテゴリーを開拓した「プレジデント」と「センチュリー」は、デビュー後も日本が誇る最高級車として競いながら進化を続けた。2023年10月にモデルチェンジした現行(3代目)センチュリーは、電動化してトヨタが誇る最高級車として現在もラインナップのトップに鎮座している。一方のプレジデントは、日産自体の大きな変革や戦略変更の影響を受けて、残念ながら2010年に生産を終えた。








