マツダの国内ラインナップ最上級車

世界の自動車トレンドがSUVとなってから久しい。各社……それこそ欧州プレミアムブランドやスーパーカーメーカーまでSUVをラインナップする時代。マツダの乗用車も今や9車種(車名でカウント)中7車種がSUVなのだ。

マツダの乗用車ラインナップ。

マツダ6も生産終了(2025年)し、最上級モデルもSUVとなった。また、マツダはビアンテとプレマシーの生産終了(2018年)によりミニバン市場より撤退。3列シート車の後継モデルはやはりSUVのCX-8(2018年〜2023年)が担った。

マツダCX-8。

そのCX-8の後継モデルが2024年に登場したCX-80であり、マツダの日本市場における最上級モデルであることに加え、3列シート車としての役割も課せられている。

マツダCX-80。画像はPHEV車の最上級グレード「PHEV Premium Modern」。

そんなCX-80に乗る機会を得た。モデルはディーゼルエンジンの4WD車。ディーゼルハイブリッドやプラグインハイブリッドもラインナップされているが、ある意味最もオーソドックスなモデルと言えるだろう。
2日に渡る東京・横浜周辺と鈴鹿サーキットを往復するというロングドライブで、色々と気になった点をお伝えしたい。

保土ヶ谷パーキングエリア。

直列6気筒エンジン+FRレイアウト+3列シートはとにかく長い!

現状の国内ラインナップにおけるマツダの最高峰モデルだけにボディサイズは大きめだ。特に、ボンネットの下には3.3L直列6気筒ディーゼルターボエンジンを納め、キャビンスペースには3列シートを収めている。

CX-80(ディーゼル/4WD)のボデイサイズは全長4990mm×全幅1890mm×全高1710mm。

ホイールベースに至っては3120mmとセンチュリー(3090mm)やハイエースバン(3110mm)すら上回る。国産SUVでCX-80より長いのはトライトン(3130mm)くらいだろうか。世界的に見てもメルセデス・ベンツGLS(3135mm)が近いところだ。

CX-80(ディーゼル/4WD)のホイールベースは3120mmと国産車では最長クラス。

そのおかげで、SUVながらエマージェンシーよりは大分マシな3列目シートを備えている。筆者(身長175cm)が停止状態で座ってみる分には天地方向が狭いな……くらいの印象だが、流石に走行時、特に長距離・長時間となると厳しいというのが現実だった。

CX-80(ディーゼル/4WD)の3列目シート。ドリンクホルダーは左右に2個ずつ。左右壁にそれぞれUSB(タイプC)ポートを備え、3列目席のユーティリティも疎かにしない。

3列目シートにはひとりで座ったこともあるが、左右幅は余裕があるように感じたし、意外と窓も大きいので窮屈感や閉塞感はなかった。
なお2列目シートは快適至極で、瞬く間に眠気に誘われた。

センターコンソールボックス後端に配置された2列目席用のエアコン操作パネル。左右独立でこそないものの、風向や風量など細かく設定可能。USB(タイプC)ポートもふたつ用意されている。

3列シートのSUVでもドライバーは”その気”になれる?

SUVはそのサイズや背の高さからクルマの運動性能的な理想からは遠くなるのは仕方がない。昨今ではSUVがクルマの主流であり、各社の開発も進んでいるためかつてのような運動性能における残念な面はかなり解消されてきていると言える。

CX-60のエンジンルーム。昨今の例に漏れずカバーに覆われているが、カバーは直列6気筒エンジンを縦置きにしていることをアピールするデザインになっている。

とはいえ、3列シートを収めるボディサイズに2トンを超える(2040〜2080kg)車両重量はクルマの運動性能的にはいささか厳しいのではないかと思っていた。

エンジンはT3-VPTS型3283cc水冷直列6気筒DOHC24バルブインタークーラーターボディーゼル。最高出力170kW(231ps)/4000-4200rpm・最大トルク500Nm(51.0kgm)/1500-3000rpmを発揮する。

が、動力性能的には231ps・51.0kgmというパワーと大トルクで、どのような状況でも不足を感じることはなかったし、運動性能でもボディサイズや重量を感じさせない動きを見せてくれた。

トランスミッションは8速AT。試乗車は4WDモデルだった。

3.3L直列6気筒ディーゼルという如何にも重そうなエンジンを鼻先に載せているにも関わらず、ハンドリングはとても素直で好印象だった。凝った前後サスペンション形式による足まわりのセッティングによるものか、CX-80の「i-ACTIV AWD」がマツダが謳う縦置きFRベースの電子制御多板クラッチ式4WDだからか、あるいはその両方か……。ただ、4WDを実感!といった走行シチュエーションが無かったのが残念ではある。

フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式をおごる。写真はアッパーマウント側で、ショックユニットを挟むアッパーアームが見える。
リヤはマルチリンク式で、写真の範囲だけでも3本のアームが見える。
ホイールは18インチと最近のこのクラスのクルマとしては控えめ。タイヤサイズも235/60R18と、幅はともかく60扁平でゴムボリュームも大きい。ホイールハウスにも余裕があり、170mmの最低地上高と合わせて走破性に余裕を感じさせる。

一方で、同行者でステアリングを握った者の中で「高速走行時に常に微量な修正舵を求められるようで安定感が不足している」というインプレッションもあったが、筆者的には全く気にならなかった。これは件のドライバーが最新のドイツ車オーナーで、筆者が30年落ちの国産旧車オーナーという感覚の違いかもしれない。

国内最上級車だけに特段スポーティな味付けではないが、居心地の良い運転席。インターフェースがオーソドックスなのも良かった。

兎角、長距離ドライブでは運転席は敬遠されがちなことも多いが、少なくともこのCX-80は、筆者は積極的に運転席を選びたいと思ったし、実際に多くの行程をドライブした。これまで多人数乗車のSUVに惹かれることはなかったが、CX-80はなんとなく”その気”にさせてくれるドライバーズカーだと感じさせてくれた。

サイズの割には意外と取り回しやすいかも

このサイズながら運転が楽しいと感じさせてくれるCX-80ではあったが、楽しいばかりが運転ではない。日常における取り回しではこのボディサイズは流石に厳しい面も多いだろうと思っていた。

CX-80(ディーゼル/4WD)

日本メーカーのメイン市場であるアメリカでは、もうひとクラス上のサイズのSUVが存在する。マツダではCX-90がそうだが、これは日本未導入だ。アメリカならいざ知らず、日本の道路事情を考えると全長5mオーバー(5100mm)は流石に厳しかろう。CX-80とて全長5mを切りこそすれ(4990m)、さして変わらない気もするが……

マツダCX-90(北米モデル)。ボディサイズは全長5100mm×全幅1994mm×全高1736mm(北米表示のインチから換算)。なお、ホイールベースは3120mmとCX-80と同じ。

とはいえ、日本でもCX-80やCX-90より大きなクルマも走っているわけで、少なくとも一般的な駐車場レベルでサイズ的に困るケースはあまり無いと思われる。ただ、幅が狭めの古い駐車場や、同クラスのクルマが左右に並ぶと、スイングドアだけに乗り降りに難儀するケースがあるかもしれない。

枠線が二重なら特に問題は無いだろう。二重線の駐車場は基本的に幅に限らずスペースに余裕があることが多い。
1本線になるとやや厳しいか。左右のクルマはいずれも5ナンバーサイズ(全幅1700mm未満)。
5m以下ではあるが、ホイールベースが長めなので前後方向はいっぱいいっぱい。リヤオーバーハングは短めではある。

一方で、コックピットからの見切りは良く、フェンダーやボンネット先端が把握しやすいので乗り慣れないクルマであるにも関わらず、狭い路地でも意外となんとかなった(とはいえ、積極的に入り込みたいとは思わないが)。欲を言えばこのサイズなら最近の大型SUVに増えてきたフロントの死角用カメラがあるとありがたい。

1車線の狭い通り。一方通行なので道路幅的に困ることはない。
住宅街の狭い路地。コックピットからはかなりギリギリに見える。
実際にはもう少し余裕があって、そこまでギリギリではない。
ただし、ホイールベースが長く、最小回転半径が5.8mあるので、狭い路地を曲がるのは難しい。とはいえ、同クラスのSUVやアルファード/ヴェルファイアよりは短かったりする。

横浜〜鈴鹿+αを走行して……

マツダR&Dセンター(神奈川県横浜市神奈川区)。

今回走行したのは大まかにはマツダのR&Dセンターがある横浜市神奈川区から鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)の往復。それに加え、鈴鹿サーキット周辺の一般道路や都内、横浜周辺の一般道路を走行しているものの、走行距離的には大部分が高速道路だった。

第三京浜。

ルートは概ね上図の通りだが、走行当日は神奈川県内の東名高速道路下りが大渋滞。特に横浜町田インターから御殿場までが断続的に渋滞したため、厚木から圏央道と第二東名を経由して新秦野インターから大井松田インターという変則ルートを採った。とはいえ、同じことを考えるドライバーも多く新秦野インター出口でも酷い渋滞だった。それに対して復路は大きな渋滞もなくスムーズに行程を消化することができた。

横浜〜鈴鹿のルート(参考)

片道400km弱のルートだが、そのほかの移動も含めて走行距離は846.7km。車載燃費計での平均燃費は18.0km/Lとなった。走行後の満タン給油で40Lだったので、実際の燃費は21.1km/Lとなるが、ちょっと差が大きいので何か間違いがあったかもしれないが……。

メーター上の走行距離と燃費。

給油前の燃費計の針は半分から1目盛下を指していた。CX-80(ディーゼル)の燃料タンクは73L。燃料計の目盛が16分割で、9目盛消費ということは計算上は約41L消費していることになるので、給油量はほぼ正しいと言えるだろう。

給油量は40L。燃料計の目盛から換算した消費量とほぼ一致した。

となると残量が32〜33Lなので、車載燃費計の平均燃費で576〜594km、実燃費なら675km696km走れる計算だ。ガス欠まで走れば(ディーゼル車をガス欠まで走らせるのはNGだが)合計で1422〜1458kmないし1539〜1560km走れる計算だ。

CX-80(ディーゼル/4WD)のカタログ燃費がWLTCモードで16.8km/L。WLTC高速モードで18.5km/Lなので、車載燃費計ならほぼカタログ値通り。実測値なら大幅に上回る結果だ。航続距離もカタログ値から計算してそれぞれ1226kmと1350kmなので、当然こちらも大きく上回る。
なお、メーター表示での残走行可能距離は470kmと出ており、その場合はトータルで1316km走行可能ということになるので、ほぼカタログ値通り。

給油したガソリンスタンドはレギュラー160円に対し軽油が146円だった(取材当時)。

ディーゼルエンジンは高速巡行での燃費性能に優れる傾向にあるが、CX-80のディーゼルモデルもその例に漏れない結果となった。燃費性能が向上している昨今では航続距離が1000kmを超えるクルマも少なくないが、想定値とはいえ1500kmにも届こうかというのは驚きだ。大容量タンクは伊達じゃない。

CX-80のフューエルリッドは左側。

それに、燃料代が高騰している中でまだ軽油はガソリンに比べれば安い方。大容量のタンクを満タンにするにしても、長距離を走るにしても、ディーゼルエンジンという選択肢は悪くない。CX-80のグレードで見れば、ディーゼルハイブリッドやマイルドハイブリッドよりも車両本体価格も遥かに安い。そしてFRも選べるのも純ディーゼルエンジンモデルの魅力かもしれない。

パワートレイン2WD4WD
ディーゼル475万9700円〜542万5200円499万6200円〜566万1700円
ディーゼルハイブリッド設定なし582万4500円〜632万5000円
マイルドハイブリッド設定なし639万1000円〜712万2500円
CX-80パワートレイン別価格表