ノーマルと同等の扱いやすさ

2025年8月に試乗記を掲載したバイクショップANDYのCBR250R+ターボとZ250SL+スーパーチャージャーで、僕が最もビックリしたのは、ノーマルと同等の扱いやすさだった。
いや、ブーストがかかった際の力強さも驚きだったのだが(実測後輪出力は、CBR250R:40ps弱、Z250SL:42.5ps)、過給機という言葉から連想しがちなシビアさが、同店の2台には一切なかったのだ。
そんなバイクショップANDYの過給機チューンは、軽二輪の単気筒車を主軸としている。その理由を同店の安藤さんに聞いてみたところ、以下の答えが返ってきた。

「自分が60歳になったからでしょうか、最近は友人知人との会話中に、“人生最後の1台”という言葉がよく出てきます。もちろん、どんなバイクを最後にするかは人それぞれですが、体力の衰えや維持費の安さを考えると、私自身は軽二輪の単気筒車がいいんじゃないかと。ただしベテランの視点で見ると、近年の軽二輪の単気筒車には何らかの物足りなさを感じるでしょう。でも動力性能の向上や特別感の構築を実現した過給機装着車なら、ベテランでもグラッと来る人が多いと思いますよ」
エンジン腰下まで手を入れるステージ3

2025年8月に僕が体験した2台が、いずれもエンジン内部に手を入れない、過給圧が0.7bar前後のステージ1だったのに対して、当記事で紹介するCB250R+ターボは、圧縮比を10:1以下に落とし、ピストンとコンロッドを強化型に変更し、過給圧を1.3barに高めたステージ3(ステージ2は、エンジン腰上に手を入れて圧縮比を下げるのが前提で、過給圧は1.0bar前後)。


ノーマルの実測値が、最高出力:27.1ps/8500rpm・最大トルク:2.4kgf・m/6800rpmであるのに対して、ステージ3の数値はほとんど倍、52ps/9500rpm・4.5kgf・m/7600rpmにまで向上している。もっともそこに至るまでの道のりは、相当に困難だったそうだ。

「現在は私の友人の亀山さんがオーナーですが、もともとこのCB250Rは当社の実験車で、ステージ1がひとまず完成したした時点で、ブースト圧を徐々に上げてみたら、1.0barでピストントップの外周の肉の薄い部分が欠け、スカートに抱きつきが発生しました。そこで対策品として、トップの外周部に十分な肉厚がある鍛造ピストンを導入してみたところ、ピストン自体の重量増加が良くなかったようで、今度はコンロッドが折れてクランクケースを突き破り、エンジンが全損になったんです」

そういった経緯を経て、ノーマルの限界を把握した安藤さんは、安全マージンが確保できるステージ1と2の設定を検討したうえで、ステージ3の構想を練り始める。
破損状況を考えれば、ステージ3のピストンとコンロッドは理想の製品をワンオフ……となりそうなものだが、コストアップを嫌う安藤さんは、ネットでさまざまな2/4輪のデータを収集。寸法が合致しそうな数種類の純正部品を取り寄せてテストし、最大で1.5barに耐えうるピストンとコンロッドを発見した。

「ピストンを探すのは比較的容易です。外径は言うまでもなく、ピン径もそれなりにデータが上がっていますし、写真を見ればトップ・セカンドランドの形状もある程度は把握できますから。問題はコンロッドで、小端~大端のピッチと大端の径は、ネットではなかなか見当たりません。結果的に理想の製品を見つけて耐久性の確認をきっちり取るまでに、約1年の歳月がかかりました」
全回転域でノーマルを凌駕

ここからはインプレ編で、僕の第一印象は“パワーとトルクが大幅に向上しても、安藤さんの基本理念は変わらないんだな”だった。
と言うのもこのCB250R、やっぱりと言うのか相変わらずと言うのか、とにかく扱いやすいのである。冷間時からアイドリングは安定しているし、渋滞路のトロトロ運転は余裕でこなすし、いわゆるターボラグの気配は微塵もない(ただし、全閉からスロットルを開けた際は即座に大トルクが発生するわけではないから、右手の操作感はノーマルと同等)。
安藤さんはベテランを意識しているようだけれど、この特性なら、免許取り立ての初心者でも気軽に乗れるだろう。

もちろん、パワーとトルクは圧巻だった。これまでの僕は過給機に対して、ターボ:高回転向き、スーパーチャージャー:低中回転向き、というイメージを抱いていたものの、このバイクは低回転域からブーストが利いていて、全回転域でノーマルを凌駕する力が実感できるし、加速中のシフトアップ時に停滞をまったく感じない。

いや、それだけでは言葉足らずか。安藤さんが手がけたCB250R+ターボは、軽さの恩恵を感じるのだ。多少なりとも共通点がある単気筒車としてKTM 390デューク(最高出力:45ps/8000rpm、最大トルク:3.98kgf・m/7000rpm)を引き合いに出すなら、パワフル&トルクフルなだけではなく、エンジン内部の往復・回転運動部品が軽いおかげで、回転上昇と下降が明らかに早い。

しかも車重が軽いので(CB250Rは燃料込みで144kg、390デュークは燃料ナシで165kg)、コーナー進入時のブレーキングや倒し込みは楽々。いずれにしてもこのバイクは過去に体験した2台以上に、軽二輪+過給機ならではの醍醐味を存分に感じやすい特性なのである。

ちょっと妙な表現になるけれど、CB250R+ターボで峠道を走っている最中の僕は、“無敵?”という印象を抱いた。
見通しが抜群に良好で直線区間が長いサーキットのような快走路を除けば、大小のカーブが続く道でこのバイクが400cc以上の他車に後れを取ることはないだろうし、それどころか一般的な峠道なら、リッタースーパースポーツにも余裕でついていけそうな気がする。

そんなCB250R+ターボの数少ない弱点と言えるのが、カスタム費用が100万円をオーバーすること。とはいえ、2024年に生産が終了したCB250Rの価格は56万4300円で、現在の中古車市場では40万円台で良質な車両が見つかるようだから(極上車は新車と同等)、トータルでの価格は150万円前後。人生最後の1台と考えるなら、その価格は決して高くないように思う。
ディティール解説







