ノーマルと同等の扱いやすさ

CB250Rが搭載する水冷DOHC4バルブ単気筒は、近年のバイクショップANDYの主力エンジン。これまでにレブル250やCL250でも、過給機チューンを行っている。

2025年8月に試乗記を掲載したバイクショップANDYのCBR250R+ターボとZ250SL+スーパーチャージャーで、僕が最もビックリしたのは、ノーマルと同等の扱いやすさだった。

いや、ブーストがかかった際の力強さも驚きだったのだが(実測後輪出力は、CBR250R:40ps弱、Z250SL:42.5ps)、過給機という言葉から連想しがちなシビアさが、同店の2台には一切なかったのだ。

男のロマン、スーパーチャージャー。250cc単気筒のZ250SLに装着&乗ってみた‼

2輪の世界で過給機と言ったら、誰もが注目するのは最高出力と最高速だろう。ところが、バイクショップAndyが製作した2台の過給機装着車は、ワインディングロードでの楽しさを第一義としていたのだ。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke) illust●大塚克(Otsuka Masaru) 取材協力●バイクショップAndy http://bikeandy.com/

そんなバイクショップANDYの過給機チューンは、軽二輪の単気筒車を主軸としている。その理由を同店の安藤さんに聞いてみたところ、以下の答えが返ってきた。

左がバイクショップANDYの安藤さんで、右は今回の取材に付き合ってくれたCB250R+ターボオーナーの亀山さん。

「自分が60歳になったからでしょうか、最近は友人知人との会話中に、“人生最後の1台”という言葉がよく出てきます。もちろん、どんなバイクを最後にするかは人それぞれですが、体力の衰えや維持費の安さを考えると、私自身は軽二輪の単気筒車がいいんじゃないかと。ただしベテランの視点で見ると、近年の軽二輪の単気筒車には何らかの物足りなさを感じるでしょう。でも動力性能の向上や特別感の構築を実現した過給機装着車なら、ベテランでもグラッと来る人が多いと思いますよ」

ターボパワーが高回転域で炸裂‼ 250cc単気筒で、2スト的なフィーリングが味わえる、バイクショップAndyの過給機装着車

ちょっと妙な表現になるけれど、これは“オヤジキラー”になるんじゃないか……。バイクショップAndyが製作した250cc単気筒ロードスポーツ+過給機装着車×2台を体験した筆者は、そんな印象を抱くこととなった。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke) illust●大塚克(Otsuka Masaru) 取材協力●バイクショップAndy http://bikeandy.com/

エンジン腰下まで手を入れるステージ3

2種のCB250Rのパワーカーブは、赤いラインがノーマルで、青いラインがターボ装着車。低回転域は表示されていないが、ターボ装着車は全域でノーマルを凌駕。

2025年8月に僕が体験した2台が、いずれもエンジン内部に手を入れない、過給圧が0.7bar前後のステージ1だったのに対して、当記事で紹介するCB250R+ターボは、圧縮比を10:1以下に落とし、ピストンとコンロッドを強化型に変更し、過給圧を1.3barに高めたステージ3(ステージ2は、エンジン腰上に手を入れて圧縮比を下げるのが前提で、過給圧は1.0bar前後)。

CB250R+ターボの実測データ。8000~8500rpmのパワーカーブの微妙な落ち込みは、ライディング中はまったく把握できない。
CB250Rのノーマルのパワー/トルク実測データ。パッと見は上のターボ装着車と似ているけれど、縦軸のフルスケールはターボ装着車の約半分。

ノーマルの実測値が、最高出力:27.1ps/8500rpm・最大トルク:2.4kgf・m/6800rpmであるのに対して、ステージ3の数値はほとんど倍、52ps/9500rpm・4.5kgf・m/7600rpmにまで向上している。もっともそこに至るまでの道のりは、相当に困難だったそうだ。

外周の肉の薄い部分が欠け、スカートに縦傷が入った純正ピストン。ノーマルでブーストを上げれば、セッティングでカバーしきれないのが熱問題。それをどう対策するかで信頼性が変わる。

「現在は私の友人の亀山さんがオーナーですが、もともとこのCB250Rは当社の実験車で、ステージ1がひとまず完成したした時点で、ブースト圧を徐々に上げてみたら、1.0barでピストントップの外周の肉の薄い部分が欠け、スカートに抱きつきが発生しました。そこで対策品として、トップの外周部に十分な肉厚がある鍛造ピストンを導入してみたところ、ピストン自体の重量増加が良くなかったようで、今度はコンロッドが折れてクランクケースを突き破り、エンジンが全損になったんです」

ノーマルとはトップの形状がまったく異なる、アフターマーケット製の鍛造ピストンを選択すると、今度は棚落ちとトラブルが続く。

そういった経緯を経て、ノーマルの限界を把握した安藤さんは、安全マージンが確保できるステージ1と2の設定を検討したうえで、ステージ3の構想を練り始める。

破損状況を考えれば、ステージ3のピストンとコンロッドは理想の製品をワンオフ……となりそうなものだが、コストアップを嫌う安藤さんは、ネットでさまざまな2/4輪のデータを収集。寸法が合致しそうな数種類の純正部品を取り寄せてテストし、最大で1.5barに耐えうるピストンとコンロッドを発見した。

上段はトラブル後にスライスした純正ピストンで(各部の肉厚を把握するため)、下段は破断面をとりあえず溶接でつないだ純正コンロッド。

「ピストンを探すのは比較的容易です。外径は言うまでもなく、ピン径もそれなりにデータが上がっていますし、写真を見ればトップ・セカンドランドの形状もある程度は把握できますから。問題はコンロッドで、小端~大端のピッチと大端の径は、ネットではなかなか見当たりません。結果的に理想の製品を見つけて耐久性の確認をきっちり取るまでに、約1年の歳月がかかりました」

全回転域でノーマルを凌駕

過給機の装備に伴ってサブコンとサブインジェクターを追加しているものの、万が一のトラブルを考慮して、メインECUとメインインジェクターはノーマルを使用。

ここからはインプレ編で、僕の第一印象は“パワーとトルクが大幅に向上しても、安藤さんの基本理念は変わらないんだな”だった。

と言うのもこのCB250R、やっぱりと言うのか相変わらずと言うのか、とにかく扱いやすいのである。冷間時からアイドリングは安定しているし、渋滞路のトロトロ運転は余裕でこなすし、いわゆるターボラグの気配は微塵もない(ただし、全閉からスロットルを開けた際は即座に大トルクが発生するわけではないから、右手の操作感はノーマルと同等)。

安藤さんはベテランを意識しているようだけれど、この特性なら、免許取り立ての初心者でも気軽に乗れるだろう。

もちろん、パワーとトルクは圧巻だった。これまでの僕は過給機に対して、ターボ:高回転向き、スーパーチャージャー:低中回転向き、というイメージを抱いていたものの、このバイクは低回転域からブーストが利いていて、全回転域でノーマルを凌駕する力が実感できるし、加速中のシフトアップ時に停滞をまったく感じない。

いや、それだけでは言葉足らずか。安藤さんが手がけたCB250R+ターボは、軽さの恩恵を感じるのだ。多少なりとも共通点がある単気筒車としてKTM 390デューク(最高出力:45ps/8000rpm、最大トルク:3.98kgf・m/7000rpm)を引き合いに出すなら、パワフル&トルクフルなだけではなく、エンジン内部の往復・回転運動部品が軽いおかげで、回転上昇と下降が明らかに早い。

しかも車重が軽いので(CB250Rは燃料込みで144kg、390デュークは燃料ナシで165kg)、コーナー進入時のブレーキングや倒し込みは楽々。いずれにしてもこのバイクは過去に体験した2台以上に、軽二輪+過給機ならではの醍醐味を存分に感じやすい特性なのである。

ちょっと妙な表現になるけれど、CB250R+ターボで峠道を走っている最中の僕は、“無敵?”という印象を抱いた。

見通しが抜群に良好で直線区間が長いサーキットのような快走路を除けば、大小のカーブが続く道でこのバイクが400cc以上の他車に後れを取ることはないだろうし、それどころか一般的な峠道なら、リッタースーパースポーツにも余裕でついていけそうな気がする。

車体は基本的にノーマルだが、前後タイヤはダンロップGPR-300からピレリ・ディアブロロッソⅢに変更。ガソリンタンクの両サイドには、ドレスアップパーツのウイングレットを設置。

そんなCB250R+ターボの数少ない弱点と言えるのが、カスタム費用が100万円をオーバーすること。とはいえ、2024年に生産が終了したCB250Rの価格は56万4300円で、現在の中古車市場では40万円台で良質な車両が見つかるようだから(極上車は新車と同等)、トータルでの価格は150万円前後。人生最後の1台と考えるなら、その価格は決して高くないように思う。

ディティール解説

純正メーターの外周には、空燃比計(INNOVATE)、水温計(キタコ)、ブーストゲージ(Defi)を追加。
エンジン前部に設置したコンプレッサー/タービンと左サイドに備わるインタークーラーは、いずれも軽自動車用がベース。
エンジン右サイドにはオイクーラーを設置。本体はカワサキ純正品で、削り出しの取り出し口はタケガワ。
シート下のサージタンクは、安藤さんのワンオフ。ブローオフバルブはトラストグレッディ。
サイレンサーはアフターマーケット製の汎用品で、基部にはブースト圧に応じて開閉するバルブを導入。