Bugatti Tourbillon
650点を超えるパーツで構成

現代のハイパースポーツの多くは、ピクセルやスクリーンを通してドライバーと対話する。しかし、ブガッティ トゥールビヨンは、まったく異なるアプローチを採った。コクピットに搭載されるアナログ・インストゥルメントクラスターは、時計製造の精緻さと自動車工学の粋が最高次元で融合。ブガッティのドキュメンタリーシリーズ『A New Era』の最新エピソードでは、この機械式メーターの背後にある驚くべきディテールが明かされる。
「トゥールビヨン」という名称は、機械的な“永遠性”を重んじるブガッティの哲学を体現。伝説的レーシングドライバーの名を冠してきた従来モデルとは異なり、最新ハイパーカーは1801年に発明され、重力の影響を打ち消して高精度な時を刻むための時計機構「トゥールビヨン」に由来する。200年以上を経た現在も、トゥールビヨンは時計製造の頂点として崇敬され続けているからだ。
この思想と命名が求めたのは、決して色褪せない「永遠を刻むコンポーネント」だった。その答えが、スイスの高級時計製造マニュファクチュール「コンセプト(Concepto)」社による、すべて手作業により組み上げられた、完全アナログ式インストゥルメントクラスターだ。650点を超えるパーツで構成され、伝統的な時計製造技法を用い、世界最高峰のタイムピースと同等の仕上げが施された。
ブガッティ・リマックのインテリアデザイナー/インディビジュアライゼーション エキスパートを務めるアレクサンドラ・タバレスは、インストゥルメントクラスターについて次のようにコメントする。
「このクルマは、ブガッティのパイロット名を冠してきた従来モデルとは異なるため、トゥールビヨンと名付けられました。すべてのコンポーネントにおいて、その分野で最高のものを用いる──それこそがこのクルマの思想です。エンジンは真のスペシャリストが最高水準で開発し、インストゥルメントクラスターも同様に、著名な高級時計製造専門家との協業で生み出されました」
コンセプト社によるチャレンジ

2006年にスイスで設立されたコンセプト社にとって、トゥールビヨンのプロジェクトは、極めて大きな挑戦になった。自動車と時計という2つの世界を橋渡しし、双方の伝統を尊重しながら革新を求められる仕事だったからだ。コンセプト社の創業者兼CEOのヴァレリアン・ジャケは、次のように開発過程を振り返った。
「ブガッティが求めるレベルで、本当に特別なものを作りたかったのです。『比較できるなら、それはもはやブガッティではない』という言葉がありますが、私はこのフレーズが大好きです。コンセプト社のムーブメントも、まさに同じ考え方を持って開発されています」
技術的課題は極めて大きかった。インストゥルメントクラスターには、オートオルロジュリー(Haute Horlogerie:フランス語で「高級時計製造」を意味)の機械的な精度と、トゥールビヨンの性能に互する自動車用電子技術の融合が求められた。時計製造ではあまり使われることのないLEDなどの技術要件を、手仕上げの機械部品と違和感なく統合しなければならなかったのである。
コンセプト社のプロジェクトマネージャー、ギヨーム・トリペは「挑戦になることは最初から分かっていました。しかし、こうしたプロジェクトこそが開発&デザインチーム、そして関わるすべての人にとって大きな原動力になります。最終的な成果が、真に壮観なものになるからです」と、笑顔を見せた。
また、サイズの違いも、コンセプトの開発チームにとって独特の挑戦だった。通常はミリメートル単位で扱われる時計パーツに対し、トゥールビヨンのクラスターモジュールははるかに大きい。それでも、求められたのは同等の緻密さと妥協なき仕上げ基準。既存の時計工具は役に立たず、このプロジェクト専用の新たな手法と設備が開発された。
「時間を超越するものを創るという概念は、高級時計の世界に完璧に合致します。ブガッティのインストゥルメントクラスターを作ることは、時計師として驚くほど魅力的なプロジェクトでした。何世紀も受け継がれてきた伝統を応用し、世代を超えて価値と美しさを保つものを生み出す――。それこそがオートオルロジュリーの本質です」と、コンセプト社のウォッチメーカー、デイビッド・オラフソンは付け加えた。
ふんだんに採り入れられた時計製造技術

インストゥルメントクラスターには、最高級時計にのみ許されてきた仕上げ技法が惜しみなく用いられている。クル・ド・パリ(Clous de Paris:時計に用いられる装飾技法)、放射状ギヨシェ(細かい幾何学模様を入れる装飾技法)、タペストリー、エンジンターンといった装飾仕上げに加え、アヴェンチュリン(砂金石)など宝石素材の選択も可能。これらはデジタル画像ではなく、実物サンプルとしてカスタマーに提示される。
今回、機能用ルビーは摩擦低減のための軸受石として用いられ、装飾ではなく必然の素材として選択された。サファイアクリスタル、スケルトン構造、手仕上げの針に至るまで、可視パーツのすべてがブガッティとコンセプト、双方の厳格な基準を満たしている。
歯車はトゥールビヨンのためだけの専用設計。ただ、自動車技術の統合は難題となった。LEDやPCB(プリント回路基板)を、時計製造の工程に溶け込ませる必要があったからだ。軽量素材の採用に伴い、色や仕上げ、ダイヤモンド装飾に関する制約も検討されという。
「心臓を持つという意味で、クルマの中にもう1台のクルマがある、と考えることもできます。時計と同じように、エンジンと機構があり、独自の作品とデザインを作り上げる。クラスターは車両の一部でありながら、それ自体が独立した作品です。650点以上の部品によって、無数のカスタマイズが可能になり、トゥールビヨンという傑作の中の“もうひとつの傑作”となっているのです」と、タバレスは胸を張る。
100年後にも価値を失わない存在に

固定式ハブを採用したステアリングホイールにより、クラスターの存在感はいっそう際立つ。操舵角に関わらず視界が遮られず、リムがクラスターの周囲を回転する構造だ。この設計により、クラスターは常にドライバー体験の中心に据えられ、クラフトマンシップを視覚的に訴え続ける。
自動車工学と伝統的時計製造の融合により、パーソナライゼーションの可能性は新たな次元へと広がったと言えるだろう。650点から成るアセンブリは、従来のダッシュボードでは不可能だった、カスタマーの希望に沿った仕様を選ぶことが可能になる。
その結果生まれたのが、高級時計製造の精度と芸術性を、現代ハイパースポーツの性能要求と両立させたアナログ・インストゥルメントクラスターだ。カスタマーはビスポーク時計をオーダーするかのように、自身の希望に沿ったインストゥルメントクラスターを完成させることができる。
ブガッティのマネージングディレクター、ヘンドリック・マリノフスキーは次のように締め括った。
「時代を超えることは、ブガッティの中核的な価値です。私たちは現在だけでなく、100年後のコンクール・デレガンスでも賞賛されるクルマを作っています。そのためには、あらゆるディテールにおける完全無欠な完成度とクラフトマンシップが不可欠です」
「完全にアナログのインストゥルメントクラスターというアイデアが生まれた時、同じ哲学を共有するパートナーが必要だと確信しました。コンセプト社こそが、その大胆なビジョンを最高水準で具現化できるチームです。現在、お客様が無数の選択肢から自分だけのクラスターを設計する姿を見るのは、本当に刺激的です。これらの極めてパーソナルな傑作が完成する瞬間を、私たちは心待ちにしています」
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