サンナナが築いた鍛造1ピースの伝説
3.7kgの衝撃が、鍛造ホイールの未来を塗り替えた!
1993年。アフターホイール界の名門・レイズは、市販用鍛造1ピースホイールの歴史を切り拓くモデル『ボルクレーシング デイトナ』を世に送り出した。
当時としては画期的だった「市販車向け鍛造モデル」という提案は、走りを追求するユーザーから熱狂的な支持を獲得する。

そして1995年。デイトナをベースにさらなる軽量化を推し進めた『ツーリングエボリューション』が登場する。のちに誕生するTE37の“TE”が「TOURING EVOLUTION」の略であることからも、このモデルが源流であることは明白だ。

こうした鍛造1ピースホイール誕生の背景には、レーシングカテゴリーの変化があった。
1990年代初頭、ル・マンをはじめとする耐久レースではマシンの高速化が急速に進み、最高速は400km/h級へと到達。その結果、サルト・サーキットは1990年にストレートへ2つのシケインを設けざるを得なくなった。

超高速域では、わずかな組み立て精度や公差の差が致命傷となる。3ピースホイールは構造上、精度管理に限界がある。そこで1992〜1993年頃から、レースシーンでは鍛造1ピースホイールが急速に主流となっていった。
この時点で、レイズの方向性は明確だった。
圧倒的な高剛性を前提とし、そのうえで軽さを極限まで追求する。
「軽さこそ正義」という思想である。

その思想を極限まで推し進めたのが、1996年にリリースされたボルクレーシング TE37だ。ツーリングエボリューションの発展型として誕生したこのモデルは、文字通り“超ライトウエイト”を掲げて市場に投入された。
3.7kgの衝撃
初期モデルは15インチ6.0Jで重量わずか3.7kg。当時の常識からすれば異次元の軽さだった。

しかし、TE37の本質は“軽いだけ”ではない。鍛造製法がもたらす高強度と高剛性を両立していた点に価値がある。
バネ下重量の低減は、加速・減速・旋回すべてに効果をもたらす。ステアリングレスポンスは鋭くなり、車両の動きは明らかに軽快になる。

最初にその効果へ注目したのが、改造範囲が厳しく制限されるジムカーナ競技だった。パワーアップが許されないカテゴリーにおいて、軽量ホイールは“合法的な武器”。TE37は瞬く間に定番となり、勝利の足元として選ばれ続けた。
6本スポークという機能美
TE37の象徴でもある6本スポークは、単なるデザインではない。強度バランスと応力分散を徹底的に計算した結果として導き出された形状だ。無駄を削ぎ落とした造形は、機能を突き詰めた末にたどり着いた必然だった。

その潔さは、流行に左右されない普遍性を生む。気高き6スポークは、いつしかストリートにおいても“本気の証”として認識されるようになる。
最先端のコンピュータ解析がTE37を進化させていく
1996年末。TE37の人気が高まるなか、レイズは次なる一手としてコンピュータ解析技術を導入する。


これは、ホイール開発において強度や剛性をコンピュータ上でシミュレーション可能とする技術だが、当時は専用ソフトなど存在しない。そこで、レースシーンやTE37の開発で培ったデータとノウハウをもとに、自社で解析プログラムを構築したのである。

この解析技術の確立により、ホイール開発期間は大幅に短縮。2007年にF1ウイリアムズ・トヨタへホイール供給を行った際も、わずか半年でF1用マグネシウムホイールを完成させている。
F1、スーパーGT、OEM供給…。レースと量産の双方で蓄積された膨大なデータは、TE37の進化を支える土台となっていく。
進化する“サンナナ”の系譜
時代が進み、市販スポーツモデルは大型化・ハイパワー化していく。しかしTE37は立ち止まらなかった。


TE37デビューから2年後の1998年、当時のJGTCで使用していたマグネシウム製のレーシングホイールをストリートに落とし込んだTE37MAGを送り出すと、その後もターマックシーン想定のTE37グラベル(1999年)、ポルシェや4WD車へのマッチングを前提にしたTE37 Large P.C.D.(2001年)、デザインを一新したLE37T(2002年)など、続々と派生モデルを展開。

そして2010年、新世代となるTE37 SL(スーパーラップ)が登場する。タイムアタックユーザーをターゲットとしたこのモデルは、剛性を保持したまま大幅な軽量化を達成したことで、走り屋たちから絶大な支持を集めることとなる。

また、TE37シリーズの20周年を記念して2017年の東京オートサロンで発表されたTE37 SAGAでは、最新ハイグリップタイヤと超ハイパワーマシンにも対応する高剛性が与えられた。



そうした進化の過程で、プレミアムセダン向けのプログレッシブTE(2005年)、エコカーをターゲットにした37ESPCORT(2011年)、圧巻のリム深度を誇るTE37V(2010年)、コンパクトスポーツ向けのTE37ソニック(2016年)など、用途別に細分化されたラインナップを展開しつづけたのである。
素材を極めるという選択

TE37登場から20年を迎えたタイミングで、レイズは「アドバンスドテクノロジー構想」を本格始動させる。アルミ、超超ジュラルミン、マグネシウムといった主要ホイール素材において、それぞれの潜在能力を最大限に引き出すことを目的としたプロジェクトだ。
アルミはGT500用レースホイールで剛性の限界に挑み、マグネシウムはWEC世界耐久選手権に参戦するトヨタTS050への供給を担う。そしてストリートホイールの究極形として辿り着いた素材が、超超ジュラルミンだった。

GT500用レースホイールではアルミで剛性を極限まで高め、マグネシウムはWEC世界耐久選手権に参戦するトヨタTS050への供給を担う。そして、ストリートホイールの究極素材として選ばれたのがA7075超超ジュラルミンだった。その到達点がTE037DURA(ジュラ/2017年)だ。

無論、どれだけサイズや設計思想が進化しても、根底にあるのは“軽量高剛性鍛造”というDNAだ。それこそがTE37のアイデンティティである。
なぜTE37は伝説になったのか
流行を追わない。スペックで妥協しない。そして常にレースで鍛え続ける。
TE37は、単なるヒット商品ではない。“性能を優先する”という哲学そのものだ。

誕生から約30年。ホイールデザインは多様化し、素材も進化した。それでも6本スポークのTE37は第一線に居続ける。理由はシンプルだ。完成されているからではない。進化をやめなかったからだ。

そしてその明確なスタンスは、最新技術を纏って東京オートサロン2026でアンヴェイルしたTE37の30周年アニバーサリーモデルでひとつの頂点を迎えた。
軽さを求める者へ、走りを変えたい者へ。
TE37は今もなお、“最初の一本”であり、“最後の一本”であり続けている。
●問い合わせ:レイズ
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