雪上走行のススメ……難コース「群馬サイクルスポーツセンター」

今のクルマは非常に良くできている。それだけに個性や差がわかりにくいとも言える。しかし、雪上ともなるとクルマの動きがより顕著になり、違いがはっきりと感じられる。さらに、普段はシチュエーション的にあまりお世話になりたくないABSやVDCなどの動作も、より低い速度域で比較的安全に作動が体感できる。そういう意味でも、クルマをよく知るのであれば雪上あるいは氷上の走行会はうってつけなのだ。

日産の氷上試乗会「ウインタードライブ」。

そして、スバルは2025年に発売した6代目フォレスターの雪上試乗会を群馬サイクルスポーツセンターで開催した。先行して販売されていた北米などはともかくとして、日本では発売後初のスノーシーズンとなった。

6代目フォレスターのストロングハイブリッドモデル「Premium S:HEV」。

群馬サイクルスポーツセンター、通称「群サイ」は”峠”テイストのクローズドコースで、クルマの走行会やイベントがたびたび開催され、冬は雪上走行会もよく行なわれている。しかし、基本的にはコース幅は1車線+α程度の狭さでアップダウンも激しく、スピードが乗る場所があるかと思えばタイトなコーナーが連続するなどかなり難コース。まして雪ともなれば路面は滑りやすくなり、難易度はさらに上がる。

試乗当日の群サイ。

そんな難コースながら、スバルは地元が群馬のためかたびたび群サイで試乗会を実施している。今回は6代目フォレスターの雪上試乗会の会場となったのだが、雪の難コースをあえて試乗会の会場としたことに、フォレスターの、ひいてはスバル4WDの強い自信を感じる。

用意された試乗車は2.5Lストロングハイブリッドの「Premium S:HEV」(手前2台)と1.8Lターボの「Sport」(奥2台)である。
タイヤは横浜ゴム製スタッドレス「アイスガードSUV G075」を装着。

当日は好天に恵まれたため、積雪路を基本に日向は雪が溶けかけていたり、場所によっては雪がなくなって濡れているだけだったり、あるいは乾いている箇所もあるなど、コースの路面状況は千差万別。急な路面状況の変化など、ドライバーの判断はもちろんクルマにも厳しいコンディションとなった。

群サイの試乗コース。

抜群の安定感は雪道でも特にこともなし

6代目フォレスターはクロストレックに続きストロングハイブリッドを搭載したことが大きな話題となり、「2025-2026日本・カー・オブ・ザ・イヤー」も受賞するほど各方面でも高評価を得ている。

フォレスター「Premium S:HEV」

特に、ストロングハイブリッドはこれまでスバル車の(最大の、とも言える)ネックだった燃費問題が解決したことに加え、これまでよりプレミアムな位置付けとしたことで新たなユーザー層にも受け入れられているという。

質感の向上したインテリアや充実の装備で、ストロングハイブリッドモデルでも400万円台に収まるバリューな価格設定。同クラスの輸入SUVからの買い替えも多いという。写真は「Premium S:HEV」。

実際に雪のコースを走ってみると、スバルが謳う水平対向エンジンの低重心とシンメトリカルAWDのバランスの良さはもちろんだが、重心が高くなりがちなSUVスタイルであるにも関わらず、重量物であるバッテリーが低い位置に鎮座しているためか安定感は抜群。ボコボコの雪道も実にスムーズに走り、乗り心地も良い。この辺りがプレミアム性の向上を感じさせる部分だ。

フォレスター「Premium S:HEV」

1.7トンを超える車重(今となってはそれも軽い方だが)もストロングハイブリッドのアシストで重さを感じさせることはなく、雪の登り勾配でも難なく進んでくれた。

フォレスター「Premium S:HEV」

対して1.8Lターボエンジン搭載車は2.5Lストロングハイブリッド車より約100kg軽い。雪上ではこの重量の違いはより顕著で、ストロングハイブリッド車に対して非常に軽快な運動性を感じさせてくれた。

フォレスター「Sport」

4WDは運転していて「滑ったな」と思ったところで制御が入り、姿勢を立て直してくれる。その制御は実に素早く自然で、滑ったことの不安を感じる暇もない。

フォレスター「Sport」

スバル自慢の「X-MODE」も試してみたが、通常より「Snow/Dirt」モードの方がより制御が強くなる印象がある程度で、今回のコンディションではノーマルとそれほどの差は感じなかった。それだけ4WDの制御が普段から優れているということだろうか。

「X-MODE」は「Snow/ Dirt」と「Deep Snow/Mud」を用意。

逆にあえて滑らせようとするアクションに対しても素早く制御が介入するため、派手に振り回すのは難しい。これは、ゲレンデタクシーでドライバーを担当した新井敏弘選手らラリードライバーから聞いた説明と符合する。
なお、ラリードライバーからはVDCをオフにすれば振り回せるとも聞いていたが、流石に試乗会でそこまではできなかった。安全なところで一度試してみたいものである。

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この辺りの制御の自然さはスバルの”安全と愉しさ”を感じさせるところで、最初からガチガチに制御を入れてとにかく安定させるのではなく、ある程度ドライバーに任せられているようで、安全を確実に担保しながらドライビングの愉しさをスポイルしない絶妙なセッティングだと感じた。

フォレスター「Premium S:HEV」

ストロングハイブリッドとターボを乗り比べて、よりクルマを運転している、操っていると感じるのはターボの方だが、ストロングハイブリッドの落ち着いた乗り味も魅力的ではある。

群サイの試乗コース。

一方で、ストロングハイブリッドの燃費(WLTC値)が18km/L台なのに対し、ターボは13km/L台。その差は5km/Lもあり、実燃費ではさらに差が出る可能性もある。燃費を気にしない”よく訓練されたスバリスト”ならいざ知らず、両車の価格差(最大でも50万円程度)を考えればストロングハイブリッドの方が圧倒的に売れているのもよくわかる。

フォレスター「Premium S:HEV」

それでも、フォレスターを買うのであればあえてターボを選びたい。それくらい、雪道の愉しさをスバル車らしく味わえたと思うターボ車に魅力を感じるのである。

フォレスター「Sport」(ターボ)の走行動画。
フォレスター「Premium S:HEV」(ストロングハイブリッド)の走行動画。

スバル4WDシステム30年の進化を実感

なお、筆者の愛車は1991年式の初代レガシィRSタイプRA。4WDシステムはビスカスLSD付きセンターデフによる機械式。タイプRAはリヤデフにもビスカスLSDが組み込まれている。

筆者の初代レガシィRSタイプRA(1991年式)。

対してフォレスターは電子制御油圧多板クラッチによるアクティブトルクスプリット4WD。元を辿れば2代目レオーネ時代(1981年)に誕生したAT用4WDシステム「MP-T(Multi Plate Transfer)」の進化系で、実に40年以上にもわたって進化熟成されてきたシステムだったりする。

フォレスター「Premium S:HEV」のフロア下。

これまで、愛車の初代レガシィRSで何度か群馬サイクルスポーツセンターの雪上走行会に参加しているが、走っていて不安や不満はなかったし、何より愉しく、ダイレクトな走行フィールは快感。しかし一方で、走行には神経を使うし、ヒヤっとするような状況も少なくない。

群サイでのレガシィRSタイプRA。PHOTO:渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)

しかし今回、メーカーの試乗会ということもあり遠慮して走ったとはいえ、フォレスターでの雪上走行は、愉しさはそのままに不安やヒヤリもなく走れたことに感動した(欲を言えばVDCをオフにしてみたかったが……)。MTとCVTの違いこそあれ、スバルの4WDシステムの30年分の進化を体感した思いだ。

フォレスター「Premium S:HEV」

雪道はたとえそればクローズドコースとはいえ走るのが難しく緊張を強いられるのが普通だが、このフォレスターはいつまでも走っていたいと思わずにはいられなかった。まさに、スバルが標榜する”安心と愉しさ”がはっきりと認識できた雪上試乗会となった。

フォレスター主要スペック

「Premium S:HEV」
ボディサイズ:全長4655mm×全幅1830mm×全高1730mm
ホイールベース:2670mm
最低地上高:220mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
エンジン型式:FB25型
総排気量:2498cc
エンジン最高出力:160PS(118kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:209Nm(21.3kg-m)/4000-4400rpm
バッテリー種類:リチウムイオン電池
バッテリー容量:4.3Ah
モーター最高出力:119.6PS(88kW)
モーター最大トルク:270Nm(27.5kg-m)
燃料消費率(WLTCモード):18.4km/L
トランスミッション:CVT
サスペンション形式(F/R):マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
最小回転半径:5.4m
タイヤサイズ:235/50R19

フォレスター「Premium S:HEV」

「Sport EX」
ボディサイズ:全長4655mm×全幅1830mm×全高1730mm
ホイールベース:2670mm
最低地上高:220mm
車重:1660kg
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
エンジン型式:CB18型
総排気量:1795cc
エンジン最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
エンジン最大トルク:300Nm(30.6kg-m)/1600-3600rpm
燃料消費率(WLTCモード):13.5km/L
トランスミッション:CVT
サスペンション形式(F/R):マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
最小回転半径:5.4m
タイヤサイズ:225/55R18

フォレスター「Sport」