
先生(右):損 保太郎
某損保サービスセンターに勤務。今回はなかなか一般の人には理解されにくい賠償責任についてレクチャーするよ。
生徒(左):モン太
友達にバイクを貸して、友達が事故を起こした場合でも、ボクが賠償しなくちゃいけないモンか?教えて保太郎さん!
「自動車損害賠償保障法」? 「運行供用者責任」って? 【知っておきたい保険用語】
モン太 ボクがやってないことをボクが賠償しなくちゃいけないことってあるモンか? そんな不条理は納得できないモン。
損 保太郎(以下 保太郎) そうだよね。でも、モン太君が納得いかなくても、そういう法律の建て付けになっているから、日本にいる以上は免れるとこはできないよ。今回解説するのは、前号でお話をした民法709条による賠償責任ではなく「自動車損害賠償保障法 第三条」に規定されている「運行供用者責任」についてお話するね。
モン太 運行供用者責任? 最近難しい言葉ばっかりだモン。どんな時に責任を負うモンか?
保太郎 当然事故を起こした運転者にも賠償する責任がある前提だけど、ここでいう運行供用者責任を負う人というのは、車の運行をコントロールできる立場にあって、その車の運行によって利益を得ている人のことを言う。つまり事故を起こしていなくても、これに当てはまる人は運転者と連帯して賠償責任を負うってことなんだ。
モン太 具体的にはどんな人が当てはまるモンか?
保太郎 代表的な例としては①営業用のトラックやバス・タクシーの所有者 ②運転代行業者に自分の車を運転してもらっている人 ③自動車を他人に貸した人 ④社有車などが運行供用者に該当する。ただし、運行供用者が負う賠償責任は人に怪我をさせた場合や、命を奪ってしまったなどの対人賠償に限定される。物損については対象外となっているんだ。
自動車損害賠償保障法 第三条
自己のために自動車を運行の用に供する者は、
その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、
これによって生じた損害を賠償する責に任ずる
家族や友人に無償で貸していても「責任」は発生する!?
モン太 でも、よくよく考えてみたんだけど①、②はボクには関係なさそうだけど、③はあるかも。だけどボクは友達にバイク貸すことはあっても、お金をとったりはしていないから大丈夫なんじゃないモンか?
保太郎 無償で貸している→運行による利益を得ていないから該当しないんじゃないか?ということだね。けれど実際の裁判では、無償で友人や家族に貸した場合でもその意味を広く解釈して、車の所有者が運行によって利益を得ていると判断している。つまり無償で貸したとしても運行供用者責任は免れないと考えた方が良い。基本的には対人賠償については自動車の所有者に賠償責任が及ぶって考えた方がいいよ。
モン太 え~。そうなんだモンな。世知辛いモンな~。気を付けるモン。
保太郎 他にも、ローンが組めないからと名義を貸した場合や、個人売買をして名義残りになっている場合、バイクにキーを差しっぱなしで盗まれた後に事故が起きた場合なんかでも、裁判では所有者に責任があると判断された事例もあるからね。もちろんすべてではなく、裁判で否定される例もあるんだけど、これって逆に考えると、怪しげなことをしていると裁判を起こされる可能性があるということでもあるからね。くれぐれもバイクの貸し借りや管理には気をつけよう。
「使用者責任」ってなに? 「運行供用者責任」と違うの?
モン太 使用者責任?またややこしい言葉がでたモン。使用者って運転者のことでしょ。運転者が責任とるのは当たり前だモン。
保太郎 ここでいう使用者っていうのは車やバイクを使用している人という意味ではなくて、事故を起こした運転者を使用している人。つまり雇用主のことで、一般的には会社や事業監督者を指す。モン太君が会社の業務中に事故を起こした場合、その使用者、つまり勤務先にも責任が及ぶってこと。
モン太 それは、なんか納得しやすいモン。
保太郎 この場合、会社は運行供用者責任も使用者責任も同時に及ぶんだけど、運行供用者責任が対人賠償に限定されるのに対して、使用者責任は物損についても対象になるのが大きな違いだね。
モン太 今回も保険についてたくさん勉強になったモン。いろんなところに落とし穴が……。やっぱり車やバイクは凶器ともなりえるものだから、しっかり管理しなきゃいけないってことだモンな。
※本文中に出てくる事例については一般的な考え方を紹介しています。特別な事情がある場合など、結論が変わることも十分考えられます。
※この記事は月刊モトチャンプ2024年6月号のものです