
モトチャンプ杯全国大会制覇を目指して作られた2ストV型2気筒
それまでに3台の多気筒エンジンを完成させ、見事な完成度を披露したKN企画とKOSO(台湾)が、多気筒エンジンスクーターの集大成として完成させたのが周回レース用のV型2気筒スクーターだ。しかも目指すは名実ともにミニバイクレースの日本一決定戦となるモトチャンプ杯全国大会。

ドラッグレース用のスクーターとは違う様々な要件
今までの多気筒スクーターは4スト2気筒に始まり2スト3気筒まで製作したが、今回のレース用マシンは並列の多気筒ではなく、バンク角を確保する目的でV型とされた。直線だけ走れれば良いドラッグレース用マシンとは全く違うデザインが求められたのだ。
さらにモトチャンプが開催する「SS1/32mile」(50.29m)の短距離だけ走り切ればいいドラッグレース用と違うのは、サーキットを何周も走るための耐久性。さらに放熱性も考慮され、水冷エンジンが選択された。
KN企画の佐々木氏は、目指すV型エンジンのサンプルとしてホンダNSR250のクランクケースを台湾のKOSO社に持ち込み、KOSOの技術者と共同で研究に当たった。

クランクケースはゼロからワンオフで制作することになった
今までの並列多気筒と違うのはクランクケースをゼロから作らなければならない点も同じだった。今までの並列多気筒は両端のクランクケースをシグナスやBW’S100を使用して、中間部のケースだけをワンオフで製作していたが、今回はNSR250のクランクケースを参考にしつつも、小型化したクランクケースを製作するため、ゼロベースでのワンオフ製作を強いられた。
のちに大きな問題を生じるクランクの中間部はKOSOでも製造することができなかったため外部に発注。中間部のオイルシールも外注で製造した。ちなみにクランクケースの左右両端はStage6(ドイツ)製のJOG用を用いている。

ハイパワー過ぎて扱えないためキャブレター口径はダウンサイジング
使用するシリンダーやヘッド、ピストンは定評あるStage6製を採用。φ47.6mmピストンに39.2mmストロークの水冷で、もちろんセンターリブ入りのレーシング仕様だ。これに併せるキャブレターは、当初φ32mmだったが、ベテラン大木選手を持ってしても、ハイパワー過ぎるのと手なづけ切れなかったため、最終的にはStage6製のφ28mmとされている。
2015年に製作を開始したRAPTERは、2016年9月のモトチャンプ杯全国大会(サーキット秋ヶ瀬)への出場を目標に製作が進められた。しかし前述のクランクのパーツが大問題を引き起こした。なんと外部に発注していたクランクの中央部分が大会当日までに間に合わなかったのだ。

1年後、2017年の全国大会はスポーツランド生駒(大阪府)だった。だがこの大会は不運にも台風の直撃を受けた。さすがのベテラン大木選手をもってしても、ウエットでハイパワーかつピーキーな2スト140ccは扱いきれないと判断。持ち込んでいた4スト(シグナスX)で出場。それでもウエット路面に足元を取られ、1度転倒を喫して2位となった。
エキゾーストは3度もリメイクされ最終的に35psを発生するに至る
ハイパワーの源は、3回もリメイクされたチャンバーによる効果も大きいという。ウインドジャマーズで製作されたワンオフのチャンバーは、初回に完成したものが1万1500回転、2回目が1万2800回転、28psだったが、佐々木氏の考えるこのエンジンの美味しい回転数はそれ以上の高回転域だった。そこで3回目に完成したのが撮影時に装着されていたもので、このチャンバーにより1万3500回転、実に35psに到達することになった。

フロントのリフトが止まらず7kgものウエイトを積載
その後、サーキット秋ヶ瀬でこの車両が出場できるカテゴリーが開催され、シェイクダウンは見事優勝で飾り、2018年の全国大会(サーキット秋ヶ瀬)を目指すことになった。しかしこの全国大会も強烈なパワーとレスポンスが仇となる問題が発生した。フロントが浮いてしまいスタート時にウイリーが止まらないため、急遽フロントに7kgものウエイトを積み、スロットルレスポンスを穏やかにするため、キャブレターはφ32mmからφ28mmに変更された。その結果、試行錯誤が功を奏して自己ベストの28秒台に突入してトップの長谷部選手を追ったが、大木選手のペースを上回り、コースレコードを更新しながら逃げるトップを追い詰めることは出来ず、2位表彰台となった。
全国大会で2位表彰台。周回レース用の多気筒エンジンスクーターを製作する。という目標は高いレベルで達成された。耐久性はもちろん、バンク角など、レーシングスクーターとしての要件も高いレベルで達成し、日本一レベルのライダーやマシンと互角に戦えることを証明して見せたからだ。
エンジン以外のレーシングスクーターならではの装備の数々

制動系も渾身のハイエンドパーツがチョイスされる

電子制御にも対応するオーダーメイドなリヤサスペンション

冷却系も大容量を確保

ラジアル式マスターとアルミ製ハイスロットル

リヤブレーキは冷却がポイントとなる

※この記事は月刊モトチャンプ2025年9月号のものです。
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