ハイパフォーマンスなツインモーターとクロスカントリーを追加

昨今、ボルボは電動化と共に一層のプレミアムブランド化を推し進めた。それゆえかラインナップの価格帯が上移行していた。そんなボルボのエントリーモデルとして2023年に日本でも発売されたコンパクトSUVがEX30である。

ボルボEX30

コンパクトSUVクラスながらボルボらしいしっかりとした走りと安全性能に、プレミアムコンパクトEVたる上質感を兼ね備えたモデルとして高く評価されているモデルだ。

ボルボEX30「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」

そんなEX30は2025年8月にラインナップを強化。お求めやすいエントリーグレードに加え、ツインモーターのハイパフォーマンスモデルと、よりSUVテイストを高めたボルボ伝統の「クロスカントリー」を設定した。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」

今回、2024年のEX30試乗に続き、このEX30クロスカントリーを試乗する機会を得た。しかも、ツインモーター4WDの真価を確かめるべく雪道を目指したのである。

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EX30の試乗記

SUV色を強めてはいるがEX30との違いはそれほど大きくない

インテリアはデザインも機能も基本的にEX30を踏襲しているが、試乗車のシートはワールブレンドとノルディコのコンビシートになっており(EX30試乗車「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」はテイラード・ウールブレンド)、インテリアカラーもEX30の薄いブルーと違い明るいグレーになっている。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」のコックピット。
ボルボEX30「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」のコックピット。

シートは相変わらず座り心地が良く、適度な硬さもあり長距離ドライブでも腰に負担がかかっている感じはなかった。欲を言えば、せっかくのハイパフォーマンスモデルでもあるのだし、もう少しサイドサポートが大きめの方が好みではあった。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」のフロントシート。

エクステリアではCピラーに「CROSS COUNTRY」のロゴが入ったり、フロントグリルがマットブラックになったりしている点が異なっているほか、ホイールデザインもクロスカントリー専用となる。

Cピラーのルーフとボディの境界に「CROSS COUNTRY」のロゴが入る。
EVらしいグリルレスデザインがEX30の特徴だが、クロスカントリーでは無塗装樹脂のブラックフェイスになる。しかも、等高線をあしらった遊び心あるデザインだ。ちなみに、フロントグリルに記載された緯度経度(67°54’0″N,18°31’0″E)の示す地点はコチラ

また、大きな違いは最低地上高がEX30が175mmのところクロスカントリーは195mmに高められている点。控えめとはいえホイールアーチに追加されたクラッディングと合わせてその名に恥じない走破性を予感させる。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」のホイール。タイヤはフィンランドのノキアンタイヤ製スタッドレス「ハッカペリッタR3 SUV」の純正サイズを装着。
ボルボEX30「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」のホイール。タイヤサイズは245/45R19。
EX30クロスカントリーのホイールアーチには控えめなクラッディングが追加されている。

一般道でも高速道路でもワインディングでも雪道でもどこでも爽快

流石に1年前に比べEVをドライブする機会も増え、その走りの良さや先進性は理解が進んだ。一方で、多少改善されているような気もしつつ、充電環境に関しては未だ懐疑的な印象は拭えないでいる。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」

とはいえ、フロントモーター115kW(156ps)+リヤモーター200kW(272ps)の出力をもつ4WDパワートレインは非常に好感触。どこからでもスムーズに加速して速度を乗せてくれるので、高速道路での追い越しなどは実にスムーズに完了できる。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」

それ自体はシングルモーターでも十分な印象ではあったが、乗り比べるとツインモーターのモアパワーの魅力には抗しがたいものがある。ここまでのハイパワーはいらないのではないかとも思えるが、パワーがもたらす自在な機動力は爽快でもあり、また自由にポジションが選べる便利さもある。

高速道路での走りも思いのまま。EX30と変わらずACCや車線変更でロングドライブも快適。ハイパワーのツインモーターでアップダウンの激しい上信越道でも速度維持は容易だ。

ワインディングでのタイトかつ勾配の大きなカーブでも力強くトルクが立ち上がり、スムーズに加速する。このシームレスさはモーターの大きな魅力で、電子制御4WDによる安定したトラクション性能を実感する。

ツインモーターのパワー、AWDのトラクション、しっかりとした足まわりと、ワインディングでもその走りは基本的に文句なし。

それは濡れた路面でも雪道でも変わらず……最終的にはタイヤに依存するため過信は禁物ではあるが……不安なく走ることができた。シングルモーターのEX30で雪道を走っていないので比較はできないが、ツインモーターAWDの大きなメリットだろうことは想像に難くない。

除雪はされているが雨と雪解け水で濡れた路面。このようなコンディションでも不安は全くない。

それほど多くの雪道シチュエーションを試せた訳ではないのが残念ではあるが、せっかくのツインモーター+電子制御AWD氷上や深雪、スタック時の脱出性能なども確かめてみたいと思った。

シャーベット状の雪の斜面で停止状態からスタートするにはAWDといえどトルクが過剰気味。トラクションコントロールはオフにする必要がありそうだ。

価格差を考えれば当然かもしれないが、シングルモーターのEX30に増してツインモーターAWDのハイパフォーマンスを始め、EX30クロスカントリーの仕上がりは大満足であった。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」のワインディングでの走り。

ただこれは、ピュアEVへの習熟の問題かもしれないが、相変わらずワンペダルドライブには慣れない。ワンペダルの効きは強弱調整できるので、最弱設定とすれば比較的操作しやすくなるが、微小アクセル時の操作、あるいはブレーキへ踏み替えてしまう際の減速Gの加減が難しい。ぜひ、パドルによる回生を装備してほしいと感じた。

ワンペダルドライブは「OFF」と「低」「高」の2段階で回生ブレーキの効きを設定可能。

ハイパワーは航続距離とトレードオフ……冬はEVには厳しいか?

航続距離はカタログ値で「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」の560kmに対してクロスカントリーは500km(ウルトラツインモーターパフォーマンスは535km)。同じ69kWhのバッテリー容量に対してツインモーター+AWDとした割には差は少ないが、実際に走ってみるとどうだろうか?特にヒーターを使うなどEVには厳しい季節だけに気になるところだ。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」

ルートは東京・青山の「Volvo Studio Tokyo」から新潟・上越の「フルサット」まで。関越自動車道と上信越自動車道で移動だけなら318km(Googleマップ)の行程だ。これに、現地ので撮影や移動での距離が加わることになる。カタログ値的には十分賄える距離ではあるが……。

「Volvo Studio Tokyo」(東京都港区)から「フルサット」(新潟県上越市)までのモデルルート。ただし、取材当日は交通事情からナビは環状8号ルートを案内した。

スタート時のバッテリー残量は96%、走行可能距離は359kmと表示されており、100%充電時の最大航続距離500kmの96%にあたる480kmより大幅に低くなっている。ヒーターの使用などクルマの状況を含めて算出されるらしく、最大値にならない現実的な数字がh表示されるのは良いことだが、やや残念な数字ではある。

スタート時のバッテリー残量と走行可能距離。
ナビゲーションを設定すると目的地の所要時間と到着時刻だけでなく、到着時の予想バッテリー残量と残りの走行可能距離も表示される。

結果として、やはり今回のEVにとってはややハードな行程ではバッテリー容量的には心許なさは禁じ得なかった。道中の東部湯の丸サービスエリア到着時で走行距離188kmでバッテリー残量が35%となり、走行可能距離は138kmとなっていた。合計でも326kmとカタログ値に対しては35%、スタート時の算出値に対しても10%下回る。ほとんどが高速道路だったことを考えるとあまり芳しくない結果だ。

上信越道・東部湯の丸サービスエリアで充電。
東部湯の丸サービスエリア到着時の走行距離とバッテリー残量、走行可能距離。

しかも、サービスエリアで30分充電したものの充電不良が発生して60%(走行可能距離231km)までした充電できなかったのが痛かった。

給電口右下のランプが赤く点灯。給電リッド内側のコーションラベルを見るに、何らかの不具合があったようだが。
充電は約19分、60%で自動終了しており、充電量は17.142kWhだった。
バッテリー残量60%で走行可能距離は231kmとなった。

上越到着時にはバッテリー残量が20数%といったところで、山中でのドライブと撮影をこなし、試乗を終えた時にはもう14%となっていた。
ヒーターは電力消費が大きいのでシートヒーターとステアリングヒーターを上手く併用してヒーターの使用割合を下げるのが電費に良かったようだ。EVに対する不慣れさを露見した一方、知見は深まったと言える(負けお惜しみ)。

試乗終了時のバッテリー残量は14%。試乗での走行距離は326.7km。

高速道路のサービスエリアに設置される充電設備は増加傾向にあるとはいえ、全てが急速充電器とも限らないし、今回のように充電不良が起きる可能性も否定できない。マナーとして使用時間を30分くらいに収める必要もある。今回は平日ということもあり、充電器は空いていたが、これが土日や行楽シーズンともなれば混雑することは必至だろう。

東部湯の丸サービスエリア(下り)の充電設備は90kW急速充電器1器2台分。90kWは最大出力で、2台同時充電ならこの出力をシェアすることになる。行楽シーズンともなると住ん電環境は厳しくなりそうだ。

燃料計がゲージ表示されているより、バッテリー残量がパーセンテージで数字として表示される方が焦る気持ちになるのは筆者だけだろうか?バッテリー残量とそれに伴う走行可能距離まできちんと表示されているのにも関わらず、だ。これもEVに対する慣れなのか、それとも個人的な心理現象なのか……

バッテリー残量だけでなく走行可能距離はもちろんリアルタイムの電費など詳細に確認できるのだが……。

と考えると、EX30クロスカントリーに限らずEVで遠出をするなら充電設備を把握し(これはEX30のインフォテインメントシステムで表示・設定可能)、航続可能距離とバッテリー残量の差し引きでどこでどの程度充電するのか、計画的なドライブができるオーナーにこそ向いている。筆者のように行き当たりばったりのドライブをする人間にはあまり向いてない乗り物だと痛感させられたのであった。

価格はEX30シリーズ最高の649万円!

ボルボEX30「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」(579万円)

EX30シリーズはベーシックグレードである「ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ」がデビュー当初の559万円から579万円にアップ。一方で、500万円を切る「プラスシングルモーター」を479万円というバーゲンプライスで設定。「プラスシングルモーターエクステンデッドレンジ」の539万円と合わせてEX30のボトムを担っている。

グレードモーター駆動方式価格
プラスシングルモーター1RR479万円
プラスシングルモーターエクステンデッドレンジ1RR539万円
ウルトラシングルモーターエクステンデッドレンジ1RR579万円
ウルトラツインモーターパフォーマンス2AWD629万円
クロスカントリー
ウルトラツインモーターパフォーマンス
2AWD649万円
ボルボEX30ラインナップ

また、上位グレードとしてツインモーターの「ウルトラツインモーターパフォーマンス」を629万円で設定し、EVのハイパフォーマンス志向にも応えるラインナップなった。
そして、今回試乗したEX30クロスカントリーは「ウルトラツインモーターパフォーマンス」のみで、さらに上回る649万円という価格設定。クロスカントリー仕様で+20万円をどう考えるかがユーザーの悩みの種になりそうだ。

「レルヒロード」から上越高田を見下ろす。天気が良ければ高田城も 望めそうだ。

EX30の補助金が東京都で85万円程度。プラス市町村レベルの補助金が加われば100万円程度割引になる可能せもある。EX30クロスカントリーで同程度の補助金があるとして、500万円台後半。昨今の自動車価格の高騰を考えれば悪くはない。補助金ありきで考えるのは良くないのかもしれないが、EV導入を考える契機になるだろう。

メーカーボルボ
車名EX30クロスカントリー
グレードウルトラツインモーターパフォーマンス
型式ZAA-2E400A
全長4235mm
全幅1850mm
全高1565mm
ホイールベース2650mm
最低地上高195mm
車両重量1880kg
定員5名
最小回転半径5.5m
航続距離500km
電費(WLTC)161Wh/km
最高出力F:115kW(156ps)/6000-6500rpm
R:200kW(272ps)/6500-8000rpm
最大トルクF:200Nm(20.4kgm)/5000rpm
R:343Nm(35.0kgm)/5345rpm
バッテリーリチウムイオン
バッテリー容量69kWh
充電普通(AC200V)
急速(DC/CHAdeMO)
駆動方式AWD
トランスミッション
サスペンションF:マクファーソンストラット
R:マルチリンク
ブレーキ4輪ディスク
タイヤ・ホイール235/50R19(7.5J×19)
ボディカラーヴェイパーグレーメタリック
オプションボルボドライブレコーダースタンダード(17万3250円)
UV&IRカットフィルム(4万9500円)
※工賃込み
価格671万2750円※オプション含む
試乗車のスペック

ボルボEX30クロスカントリー、「ここはこうだったらいいのに」的なことはありつつも、クルマとしては基本的には非常に良かった。EVを買うなら欲しいクルマにも挙げたい。ただ、現状では十分な予算はもちろん、充電設備を備えた住居(保管場所)、何より計画的なドライブができるクールさが無いと実際に購入するのは難しいと痛感したのであった。

ボルボEX30クロスカントリー「ウルトラツインモーターパフォーマンス」と「日本スキー発祥記念館」