ホンダ4MINIシリーズの異色作!?

ホンダではモンキー/ゴリラをはじめ、シャリィやダックス、エイプなどが人気を博しており、まさに4MINIの王者だ! 50㏄が廃番となった今でもモンキー125やダックス125が絶好調でカブシリーズも含めれば、このジャンルにおいてはもはや“一人勝ち”の状態である。

さて、そんなホンダだがあまり日の目を浴びなかった・・・・・・もとい、一層マニアックな4MINIも存在する。R&P? XR50/100モタード? それともジョルカブ? いやいや違います。それは『MOTORA(モトラ)』です!! 名前は知ってるけれど実車を見たことがないという人も多いのでは?

ヘビーデューティな作り込み

モトラのデビューは1982年6月のこと。スチールパイプがむき出しのフレームにごつい前後キャリアを標準装備。角ばった車体にファットなブロックタイヤを組んだ出で立ちはまさに『重機』のイメージそのもの! 荷物をたっぷり積んで旅に出る、そんな遊び方を彷彿とさせるレジャーバイクだ。

誤解のないよう言っておくが、発売から42年が経過した現在(’26年)、モトラはプレミアがついていて“不人気車”ではないことを先述しておく。それでは、このモトラならではの機能やディテールをピックアップしてお届けしよう。

【モトラの独自機能①】ファットな足周りと“くるくるメカ”!?

前後10インチ4.0Jの合わせリムには、いかにも安定感が高そうなブリヂストンのRE2(レクタングル2/5.40-10)を装着。この“レクタングルシリーズ”はスズキ・VANVAN(バンバン)用も合わせて2020年頃に生産終了となり、希少な存在となっている。

このホイールのほか、φ27mmインナーの正立フロントフォークやスイングアームも含めて基本的にR&Pのキャリーオーバーで構成され、ホンダ製『太足レジャーバイク』の先陣を切ったR&Pの後継機という見方もできる。この足周りも極まってモンキーなどとは比較にならないほど大柄なボディに!

注目なのはリヤサスペンションだ。一見すると普通のリヤショックに見えるけれど油圧式で高性能なうえ、ダンパー調整も可能となっている。その操作方法は車体右にあるハンドルノブ、通称“くるくるメカ”を回すことでセッティングできる仕組みだ。

ハンドルをクルクルするとオイルシリンダーのアッパーシートが上下して適正な荷重に調整可。ライダーや荷物の重さ、走行シーンで対応させることができ、レベライザー(目盛り)もあるから視覚的にもわかりやすい! なお原付一種(50㏄以下)の積載制限は重量30kgまでとなっている(51㏄以上は最大60kg)。

くるくるメカとは、コクヨが1981年に発売した学習机の機能。ハンドルノブを回すことで天板の高さが調整できた。なお筆者の実家でも現役で活躍している。

【モトラの独自機能②】後輪着地のセンタースタンド

たくさんの荷物を乗せることを想定したモトラでは、スタンドも熟考されていた。サイドスタンドではなく、ご覧の通り、フレームの一部をステーに見立てて車体の前方、シリンダーヘッド先端あたりにセンタースタンドが設置されている。

これによって安定感を持たせるとともに、『後輪着地式』いわゆるリヤタイヤを接地させることで荷物の積み下ろしがしやすくなっているのだ。さらに、このセンスタは着座した状態で掛けやすくなっており、実際に試してみると、あら不思議!? すんなりとスタンド掛けができた。

このスタンドはロック機構も備えており、一度掛けたら勝手に外れることがないのもポイントだ。車体を安定させた状態でゆったりと降りることができるから不安がなく、これならたくさん荷物を積んでいてもフラつくことはないだろう。

センタースタンドを解除する場合は、左スイッチ前方にあるショートレバーを握りながら外せばOK!

一方で、普通のバイクのように降りた状態でスタンド掛けをしようとすると、足かけ部分がステップとペダルの間に挟まっているから、ちょっとやりにくかったりする・・・・・・。また浮いたフロントが左右にカクンッと動くのも時と場所によってはストレスに。ゆえにオプションや社外のサイドスタンドを後付けして2WAYで対応させているユーザーも多い。

カタログに掲載されているモトラの純正アクセサリー。レッグシールドやマッドガードなどワイルドなアイテムも!

【モトラの独自機能③】副変速機で3×2SPEEDを実現!

上記2点はモトラならではの機能に間違いないが、ボクシングでいうならジャブに過ぎない。ワン、ツーパンチの後に渾身のアッパーをお見舞いするのが、遠心クラッチの3速ロータリーに付随する『副変速機』だ。これによって最高のコンビネーションが完成する!

2輪車で初めての副変速機〈スーパートルク〉を採用したCT50。

サブミッションやトランスファーとも呼ばれるこの副変速は、CT50(’68年)を皮切りにCT90(トレイル90)やCT110ハンターカブの一部海外版のほか、仕様は異なるがシルクロード(CT250S)が採用しているけれど二輪では稀有な機能だ。

早い話が、Hi(通常)とLowの2段階のギヤ比を切り替えてトルクフルな駆動力を発揮できるというわけ。クランクケースに示される『3×2 SPEED』の通り、計6速からチョイスが可能だ。

例えば、デイリーユースではHi(ハイ)レンジで走り、荷物を積んでいたり、不整地や坂道などではLow(ロウ)レンジをセレクトして駆け抜ける。変速範囲が広がることで多種多様なシーンに対応させているのはレジャーバイクならではだろう。

モトラのエンジンはカブなどと同様の横型エンジンを搭載。(49㏄空冷4スト単気筒)。クランクカバーなどはモンキーのL型後期に酷似しており、ボアアップキットの対応車種も後発の12VモンキーやモンキーR用と共通なことが多い。なおカムシャフトやバルブスプリング、ピストン、ドライブスプロケットなども独自形状のためレストアやチューニングは手間がかかる。

いざ試乗! バランスの良い走行フィール。

『百聞は一見に如かず』ということで実際に走ってみた。まずは通常のHiモードでお試し! モトラのエンジンは最高出力4.5PSと4MINIの中ではかなりパワフルなうえ、ギヤ比が下振りなのか、出足からトルク感たっぷり。ロータリー式ミッションはエンストする心配もなく、ラフに扱えるのも魅力。エンジン回転の上昇が比較的早く、実速が伴っていないような気もするが、そこはレジャーバイク! トコトコゆったりと走るのが本領だ。

カラバリは「モトラグリーン(ポポグリーン)」と「モトライエロー(メイズイエロー)」の2色設定。

太いセミブロックタイヤは安定感があって砂利道だってなんのその! 車体の状態が良いのかサスペンションの動きも良く、やや硬めのニュアンスでプアーな印象はない。意外にもシートのクッション性も良好だ! 曲道ではすぅ~と車体を倒せて、大径&ワイド化したモンキーやエイプに乗っているような雰囲気で、どっしり感とヒラヒラ感が上手く融合されているようなフィーリングだった。

キャブレターは燃料コック一体式のケイヒンPB59(口径φ13㎜)を採用。センタースタンドステーを兼ねるフレームの丸穴から“つまみ”が飛び出すレイアウトが可愛らしい!

サブミッションで急坂もばっちり!使いどころは難しいかも……

さて、お次は本題の『副変速機』を試してみよう。ちょっとした坂道に差し掛かったところで一旦停止。左側のエンジンカバーから飛び出たレバーを前方に倒すと「ガチャン!」と音がして、Lowレンジに切り替わった(のだろう)。アイドリング状態ではエンジン音などに変わりはない。

ニュートラルから1速に入れてソロソロとスロットルを回してみると・・・・・・。「ムゴモォ~」という動物の唸り声みたいな音を発しながらグイグイと坂道を登っていく。この坂の勾配は見た感じ17~18度はありそうだが、モトラにかかれば平坦な道と変わらない!?

モトラの変速比

その代わり、1速+Lowレンジではどんなに回しても10km/h程度しか出せず、かなりローギヤードになっているのがわかる。ホンダの公表ではモトラの登坂力は約23度なので、日本で最も険しいといわれる生駒山の暗峠(くらがりとうげ)の傾斜約20度も余裕で登れるはずだ! また登りだけでなく下り坂でもエンブレが強力に効いているから低速でゆったりと降りることができた。

ちなみに、モトラには前期/後期型が存在し、大きな違いはシート表皮の型押しの有無、バッテリーカバーの素材、サイレンサーカバーの形状など。

その後もHi/Lowレンジを切り替えて色々と試してみたが、通常(Hi)のギヤ比でも十分にトルクフルなうえ、Lowレンジでは3速でも交通の流れについていくのが難しい・・・・・・。この副変速機(Lowレンジ)の恩恵に預かれるのはやはり荒地だったり、険しい坂道だったりとレジャー先でのシーンに限られそうだ。

内外ともに実用というよりは趣味性が強いモトラは、発売当時にあまり人気が出なかったようで4~5年生産された後にフェードアウト。現存数が少ないことからも現在の中古相場では実働で30万~50万円と高値傾向となっている。他と違う4MINIをお探しの方はぜひ狙ってみてはいかがだろう。

ディテール解説

ヘッドライトは車体に見合ったスクエア型。純正は25W/25W(PH7バルブ)とさほど明るさはなく、LEDバルブに変更されているケースも多い。

3速ロータリーシフトはシーソーペダル式。ドライブスプロケ位置の上部にあるレバーを操作することでHi/Lowをチェンジできる。スプロケットは前15T/後40T。

シート下には6Vバッテリーが収まる。その前方には約4.5ℓの燃料タンクが配されており、上カバー部分にはフューエルメーターも備えている。

チョークレバーはキャブダイレクトではなく、ケーブル引きでトップブリッジの手前に配置されている。

80km/hスケールの速度計をセット。右側にはターンシグナルとニュートラルのランプのほか、メインのキーシリンダーが一体化。ハンドルロック用はアンダーブラケット右位置に備わる。

テールレンズはシンプルな形状。NS-1やGB250、ジェイドのほか、ジャイロシリーズやトピックなどのビジネススクーターと共通と思われる。

フロントキャリアを標準装備しているからツアラーにはうってつけ! リヤキャリアもカブプロほどではないが荷台も広めだから大きいトップケースを乗せるのも余裕だ。

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