連載
今日は何の日?■軽オープンスポーツS660の生産終了を発表

2021(令和3)年3月12日、ホンダは軽MR(ミッドシップ)オープンスポーツ「S660」の2022年3月での生産終了を発表した。S660は、2015年3月に2シーターの軽オープンスポーツとして誕生、当初は希少なオープンカーとして1年の納車待ちが出るほどの人気を獲得した。
S660の前身となったMRオープンスポーツのビート

1980年代後半のバルブ景気の勢いに乗って、ホンダは1991年5月に軽の2シーター・オープンスポーツ「ビート」を発売。ビートは、MR用プラットフォームとオープンモノコックボディを組み合わせ、低重心の理想的な前後重量配分43:57を実現した、2シーターMRの本格的スポーツカーだ。

コンパクトなオープンボディにサイドの大型インテークや手動開閉のソフトトップ、低いフロントノーズなどで軽ながらオープンスポーツらしさをアピール。パワートレーンは、NAながらレスポンスに優れた新開発の高回転型で最高出力64ps/最大トルク6.1kgmを発揮する660cc 直3 SOHCエンジンと5速MTの組み合わせ。
MRらしい俊敏なハンドリング性と伸びやかな走りを実現して、スポーツカーファンから熱い視線を集めた。車両価格は、138.8万円。当時の大卒初任給は、17.3万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約185万円に相当する。


ただし、ビートはバブル期に開発されたが、発売直後にバブルが崩壊したため販売は期待したほど伸びずに1996年をもって1世代限りで生産を終えた。
ビートの後継としてホンダSシリーズのS660誕生
「ビート」の生産終了から19年経った2015年3月にデビューしたのが、同じくオープンスポーツの「S660」だ。

低重心・低慣性のMRレイアウトを採用したS660は、ボディ全体の60%以上に高張力鋼板を採用して、強靭かつ軽量なボディを構成。スタイリングは、ワイド感を強調したフロントマスクやシャープなウェッジシェイプ、リアフェンダーの張り出しなどで軽ながらダイナミックさをアピールした。

エンジンは、最高出力64ps/最大トルク10.6kgmを発揮する660cc 直3 DOHCターボエンジンと6速MTおよびCVTの組み合わせ。6速MTは軽としては初であり、CVTには力強い走りの「スポーツモード」と「標準モード」の切り替え機構が装備された。

また、曲がる楽しさを追求して高いコーナリング性能にこだわっているのもS660の特徴だ。MRレイアウトと低重心で理想的な前後重量配分45:55を実現し、さらにアジャイルハンドリングアシストも採用。これは、横滑り防止システム(ESC)を応用して、コーナリング中にブレーキ力を制御してコーナリング性能を安定させるシステムである。

車両価格は、標準βグレード198万円、快適装備を追加したαグレードが218万円。久々の軽オープンスポーツということもあり、発売当初は1年以上の納車待ちとなる人気を獲得した。
S660のラストモデルは特別仕様車S660モデューロX Version Z

ホンダは、2021年3月のこの日、2022年3月でS660の生産を終えることを発表した。またこの日、S660のラストモデルとして特別仕様車「S660モデューロX Version Z」の発売を始めた。

モデューロXは、ホンダの純正部品を手掛けるホンダアクセス社が手掛けるコンプリートカーであり、初めて設定されたのは2018年7月、スポーティなデザインや高い走行性能が魅力である。

S660モデューロX Version Zは、S660モデューロXをベースにして機能美を追求し、エンジンはモデューロX同様に特別なチューニングはしていないが、内外装については次のように変更された。

エクステリアとしては、ボディカラーにプレミアムパールホワイトに加えて専用色ニックグレー・パールを設定し、専用エアロパーツを装備。インテリアについては、赤黒ツートンのレザー張りシートに、パネル部に加飾を施し、専用シートセンターバッグにモデューロXのロゴ、アルミ製コンソールプレートには専用Version Zのロゴを入れるなど特別感が演出された。
車両価格は、315.04万円。ベースのモデューロXが304.26万円、また標準S660は232.1万円なので、S660モデューロX Version Zはかなり高額である。それでも、発売月の3月末までに約2000台の注文が殺到して、オーダーストップとなった。
【最後に発売された「ホンダ・S660 Modulo X Version Z」がコチラ!】
・・・・・・・
人気があるとはいえ、2シーターオープンカーの市場は小さいので、衝突被害軽減ブレーキと騒音規制に対応する開発費を回収するのは困難である。ホンダの電動化戦略にも合致できないことから、S660の生産終了は致し方ないところか。電動化したS660の復活を望みたいところだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


