伝統と革新の融合した新しいヤマハの原付二種スクーター

ヤマハの新しい原付二種125ccスクーター「FAZZIO(ファツィオ)」の発表会は、商品企画担当の磯崎祐多氏によるヤマハ発動機が辿ってきたこれまで歴史から始まった。1955年の「YA-1」を発表し、楽器メーカーで現在でも同じYAMAHAブランドを共用する日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)から分社化し、音楽に関わってきた感性を活かし、人々の生活に彩りを添えるモビリティを提供してきた。かつて一世を風靡した「パッソル」や「ビーウィズ」といった世の中をあっと言わせる個性派スクーターをリリースし続けてきたが、その系譜を継ぐのが、この「ファツィオ」であり、単なる必需品としての移動体ではなく、楽器同様に彩りを添えてくれる乗り物であるというわけだ。

現在の国内バイク市場は、50cc(原付一種)が軽自動車や電動アシスト自転車に押され苦戦を強いられる一方で、125ccクラス(原付二種)は堅調に推移している。維持費がリーズナブルでありながら、日常の移動手段としても趣味の道具としても機能するバランスの良さが受けている。ヤマハはすでに「NMAX」などのヒットモデルを持つが、多様化する若者のライフスタイルに寄り添う「シンプルでファッション性の高い選択肢」が欠けていた。そこを埋めるのがファツィオだ。

シンプルな「マイルドハイブリッド」が走りと環境性能を両立
開発プロジェクトリーダーの渡邊将行氏が解説したメカニズムの核心は、ハイブリッドシステムを搭載した「BLUE CORE(ブルーコア)」エンジンにある。
最大の特徴は、スマートモータージェネレーター(SMG)を活用したパワーアシスト機能だ。発進時、スロットル操作に応じて最大約3秒間、モーターがエンジンの駆動をアシストする。これにより、2人乗りや坂道発進でもスムーズかつ力強い加速を実現した。

この仕組みは、四輪ハイブリッド車がモーターで発進すると同時にエンジンもスタートさせるようなイメージに近く、それらはいわゆるマイルドハイブリッド車と言われている。ヤマハでも、このパワーアシスト機構について海外市場では「ハイブリッド」としているが、日本ではプリウスなどのモーターの身での走行も可能なストロングハイブリッドとの混同を避けるため、あえて「パワーアシスト機能付きエンジン」という表現を用いている。

ストロングハイブリッドでは動力用バッテリーが別に存在するのがほとんどだが、ファツィオではライトなどを点灯させるための12V補機バッテリーからアシスト用電力を賄っており、減速時の回生ブレーキ機構は持ち合わせていない。つまり、実態としては極めて効率的なマイルドハイブリッドシステムである。

さらに、アイドリングストップ機能である「ストップ&スタートシステム」も搭載。SMGの恩恵により、アイドリングストップからの再始動時のセルモーター音(キュルキュル音)がなく、極めて静粛に、かつスマートに走り出すことができる。
燃費性能は非搭載モデルと比較して約3%向上しており、環境性能と快適性を高い次元で両立させているという。
「ハロー・シンプル」に思いを込めて楕円デザインを採用
デザインコンセプトは「ハロー・シンプル」。デザイン担当の久保田葉子氏は、流行を追うのではなく、毎日の暮らしに自然と馴染む「長く愛される形」を目指したと語る。

その象徴が、車体各所にあしらわれた「オーバル(楕円)」モチーフだ。ヘッドライト、メーター、テールランプに至るまで、このアイコニックな形状で統一されている。丸でも四角でもないオーバルを採用することで、レトロさと現代的なユニークさを同居させた。

カラーバリエーションは、淡いグリーン、イエロー、ブルーのアースカラー系が3色と、ベーシックなブラックの4色展開。久保田氏によれば、企画したのがコロナ禍の頃を挟んであり、そのコンセプトとともに癒し系のカラーに落ち着いたのだという。

また、機能パーツを車体中心線上に配置する「センターコアストラクチャー」という設計思想を取り入れた。これにより、視覚的なノイズが排除され、シンプルで整った印象を与えている。さらに、19.1リットルのシート下トランクやUSBソケット、カラビナフックなど、現代のスクーターに欠かせない機能装備も抜かりなく備えている。



ちなみに、ファツィオはインドネシアで製造され、すでにASEAN諸国で展開されているが、今回の日本市場への導入にあたり、国内の法規対応(灯火類や排ガス規制)はもちろん、実用面でも細かなアップデートが施されている。特にシート下トランクは、日本で人気の高いヘルメットが収納できるようサイズを19.1リットルまで拡大。さらに、車両の状態をスマートフォンで確認できる「Y-Connect」にも対応しており、走行履歴の管理や通知機能など、デジタル世代に向けた利便性も確保された。

車両重量は97kgと、このクラスとしては極めて軽量だ。100kgを切る取り回しの良さは、都市部での駐輪や押し歩きの際に大きなアドバンテージとなる。ターゲットとする20代後半から30代前半の層が、ファッションの一部として、あるいは自己表現のツールとして気負わずに乗れるパッケージングを実現している。
大ヒットしているNMAXをはじめ、ヤマハのスクーターはスポーツ系を意識して速さ、鋭さ、カッコ良さなどのイメージが強調されてきたが、ファツィオの投入により、原付二種市場におけるシェアをさらに拡大させる狙いだ。実用性だけでない癒やしももたらすデザインと、最新テクノロジーを融合させたファツィオは、何かと先を急ぎたがる現代の都会に、たくさんの彩りと潤いをもたらしてくれると期待したい。
