これはアフターホイール界を揺るがす大事件だ

MIDレーシングの“EVO”は伊達じゃない!

デザインはレイズ。製造はエンケイ。

日本を代表するホイールメーカー2社の名前が、ひとつのホイールに並んでいる。それだけで、クルマ好きならば思わず興味を引かれるはずだ。

気鋭のスポーツホイールブランドであるMIDレーシングが放った新作「R50 EVO」と「R10 EVO」。一見すると、シリーズに自然に加わった王道のスポーツホイールだ。しかし、その開発背景を紐解いていくと、この2モデルが単なる新作ではないことが見えてくる。

そもそもMIDレーシングは、日本のアフターマーケットホイール界で圧倒的なシェアを誇る“マルカサービス”が展開する旗艦ブランド。スポーティなデザインと手頃な価格帯を武器に、スポーツカーからコンパクトモデルまで幅広い車種に対応するラインナップを展開してきた。

製品のデザインや設計開発、品質管理は日本国内で実施。生産は、最新の工作機器や先進技術を導入した海外工場が担う体制を採用している。この分業体制こそが、優れたコストパフォーマンスと高い品質を両立できる理由でもある。

さらに近年はモータースポーツ活動にも積極的だ。2025年からは国内屈指の競技ドリフト大会であるFDJ2と提携し、MIDレーシングのホイールによるワンメイク構想を実現。トップドリフトカテゴリーを文字通り“足元”から支える存在となっている。

そんなMIDレーシングに加わったニューフェイスが、“進化”を意味する「EVO」の名を冠したR50 EVOとR10 EVOというわけだが、デザイン開発を担当したのはマルカサービスのプランナーでもあるレイズ本体なのである。

ボルクレーシングをはじめ数々の名作ホイールを世に送り出してきたレイズは、言わずもがな日本を代表するホイールメーカーのひとつ。モータースポーツの世界でも長年にわたりトップカテゴリーを支えてきた存在であり、軽量性と剛性を高い次元で両立させる設計思想は世界的にも高く評価されている。

そのノウハウが、今回のEVOシリーズにも静かに息づいていることは明白だ。

だが、このホイールの物語はそれだけでは終わらない。製造・管理を担当しているのは、もうひとつの日本を代表するホイールメーカー、エンケイだ。

エンケイは、世界中の自動車メーカーへ純正ホイールを供給するOEMサプライヤーとしても知られる存在。F1をはじめとするモータースポーツへの供給実績も持ち、その高精度な鋳造技術と品質管理体制は世界的に高く評価されている。

つまり、R50 EVOとR10 EVOは、企画・デザインをレイズが手掛け、開発・製造をエンケイが担当し、MIDレーシングでリリースするという、日本のアフターホイール界では極めて珍しい流れで誕生したモデルなのである。

レイズ 企画本部 商品企画Gr. 課長:川崎さん

このプロジェクトについて、レイズの川崎さんはこう語る。

「現在、レイズは実走行テストを重ねながら、より専門性の高い開発を追求しています。徹底した検証と細部まで突き詰める開発姿勢は、レイズが長年培ってきた大きな強みです。一方、MIDレーシングが目指しているのは、より多くのユーザーに向けた製品展開と、幅広いニーズに応える商品づくりです。2025年より、FDJ2においてワンメイクホイールとしてMIDレーシングの製品供給を開始しましたが、モータースポーツへのホイール供給は、製品に対する自信の証。実戦競技から日常まで、すべてのクルマに確かな品質と信頼を届けます」。

パートナーとして選ばれたエンケイについては「エンケイさんは、数多くのOEM供給実績を持ち、多様な車種や市場に対応できる高い開発力と技術力を備えています。長年の実績に裏打ちされた安定した供給体制もあり、さまざまな市場ニーズに応えながら継続的な製品展開を行える。MIDレーシングが目指す商品展開を実現するうえで、開発力と供給力の両面を備えたパートナーとして最適な存在だと判断しました」。

エンケイ 技術開発統括本部 アフターマーケット技術グループ:齋藤さん(左)/エンケイ 技術開発統括本部 ホイール技術グループ AFTホイール開発課 課長:山口さん(右)

一方、製造を担うエンケイ側もこのコラボレーションを興味深く受け止めている。

「開発フローに違いが多く、最初は戸惑うことも多かったです(笑) でも、我々の技術力をリスペクトしていただいての取り組みですから、とても嬉しかったですね。今作はリムに“Made by ENKEI”の刻印を記させていただいています。こういったモデルは非常に稀です」とエンケイ齋藤さん。

R10 EVOのスポーク部

エンケイ側が印象的だったと語るのが、レイズの要求レベルの高さだ。

例えばスポークデザイン。両モデルのスポークには軽量化と高剛性を両立させるためのサイドリブが設けられているが「肉厚やリブの入れ方などに最初から細かく指示がありまして、正直“ここまでやるの!?”って思いました。軽さと強度のバランスをどう取るのか。エンケイの設計レベルと高い強度基準をベースに、何度もキャッチボールとディスカッションを重ねて理想を求めました」。

R50 EVOのカラーサンプル
R10 EVOのカラーサンプル

カラー開発でも両社のスタンスの違いが表れた。

通常、エンケイではホイールカラーを決める際、今までの販売実績、ユーザーからの声を元に設計段階で数パターンまで絞り込むのだが、レイズは真逆。ホイールのサンプルが完成した時点で様々なカラーを実際に塗って“現物チェック“していくことが多い。

今回の場合、R50 EVOで13色、R10 EVOで11色ものカラーパターンを試作したそうだが、これはどちらが正しいという話ではない。メーカーごとの開発哲学の違いが、そのまま表れた結果なのである。

R50 EVO

そんな背景を持つR50 EVOは、太く力強い5本スポークを採用したレーシングスタイルがトピック。リムへ向かってダイナミックに伸びるスポークが迫力あるシルエットを生み出し、側面には肉抜き加工を施すことで軽量化にも配慮している。

カラーは高輝度のブラックメタリックとハイパーシルバーの2色展開。サイズは17〜18インチを中心に設定され、第二世代GT-Rや歴代86&BRZ、RX-7といった生粋のスポーツモデルとの相性も良さそうだ。

R10 EVO

R10 EVOは、細身の10本スポークによる軽快なデザインが特徴。繊細なラインで構成されたスポークは軽量感のある印象を与えながら、スポーツ走行にも対応する剛性バランスを確保している。カラーはR50 EVO同様のブラックメタリックのほか、10本スポークを際立たせるホワイトも用意する。

なお、どちらのモデルにも大きなトラクションが掛かった際に起こりやすい、ホイールとタイヤの“ズレ”を抑える「ローレット加工」を全サイズで実施。当然、タイヤを履かせてしまえば見えなくなってしまうが、チューンドの走りを支えるスポーツホイールのメカニカルパートだ。

レイズの設計思想と、エンケイの製造技術。そこにMIDレーシングのチャレンジ精神が重なり合うことで、R50 EVOとR10 EVOは形になった。

それは単なるコラボレーションという言葉では片付けられない。日本のホイールメーカーが長年培ってきた技術と哲学が、静かに交差することで生まれた一本のホイールだ。

MIDレーシングが掲げた“EVO”という名前。その意味する進化は、ここから始まるのかもしれない。

製品仕様
MID RACING R50 EVO
価格:5万600円〜7万1500円
サイズ:17×7.0J〜18×10.5J
カラー:ブラックメタリック/ハイパーシルバー

MID RACING R10 EVO
価格:4万1800円〜6万500円
サイズ:15×5.0J〜18×8.5J
カラー:ブラックメタリック/ホワイト

●取材協力:マルカサービス/レイズ/エンケイ

「今年は白ホイールが来るか!?」MIDレーシングR06にソリッドホワイト登場

王道6本スポークの機能美を突き詰めたMIDレーシングR06に、待望のホワイトが追加される。FDJ2指定ホイールとして実績を重ねてきた高剛性モデルが、ソリッドな白をまとい新たな表情を獲得。性能もルックスも妥協なしの一本が、2026年春に走り出す。

【関連リンク】
マルカサービス
https://www.mid-wheels.com
レイズ
https://www.rayswheels.co.jp
エンケイ
http://www.enkei.co.jp