栃木・茨城・群馬の3県警によるオートバイ部隊の合同トライアル訓練会が、2026年3月3日に栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎで開催された。北関東3県警による初の合同オフロード公開訓練会で、参加した隊員たちは、雨が降る厳しいコンディションのなか、不整地を確実に走破するための技術を磨いた。講師を務めたのは、全日本トライアル選手権の国際A級スーパークラスで通算14回の王座を獲得している小川友幸選手。災害現場を想定した実戦的な内容の訓練が展開された。

災害現場を想定したオフロード走行訓練


今回の訓練では、オンロードではなく、荒れた路面や障害物のある環境を確実に走破する技術の習得に主眼が置かれていた。災害発生時には、舗装路がそのまま機能しているとは限らない。道路には土砂や倒木が流れ込み、クルマでは進入できない区間が生まれることもある。そうした状況で先行して現場に入り、情報を集め、必要な場所にたどり着くためには、オートバイならではの機動力が大きな意味を持つ。その一方で求められるのは、単に速く走る技術ではない。悪路でも転倒リスクを抑えながら、確実に進み続けるための精密な操作技術だ。

栃木県警の広域緊急援助隊交通部隊の坂井小隊長は、普段から訓練を重ね、万全の体制を整えておくことの重要性を語る。
「広域緊急援助隊は、いつ、どこで派遣要請があるかわかりません。常に準備しておかなければならない状況です。今回の訓練では、基礎からプロに指導してもらうことができます。この技術を習得し、普段からしっかり準備して、いざという時に備えられるようにしておきたいと思います」


訓練の場として選ばれたのはモビリティリゾートもてぎ。同施設内には、トライアル世界選手権の舞台となったエリアも含まれる。荒れた路面で車体姿勢を崩さず、必要なラインを選んで走破する。そうしたテクニックは、災害現場で求められる能力とも重なる。今回の合同訓練は、トライアルで培われた車体コントロール技術を、警察の災害対応訓練に生かす取り組みでもあった。


使用車両はホンダCRF250L。競技専用のトライアルマシンほどの軽さや走破性は持たないが、そのぶん実務で使用する車両に近い特性を備えている。さらに撮影後には、トライアルマシンを使った、よりハードなセクションでの訓練も行われていた。

講師はトライアルライダーの小川友幸選


講師を務めた小川友幸選手は、全日本トライアル選手権国際A級スーパークラスで通算14回のチャンピオンを獲得した実績を持つ。ホンダを代表するトライアルライダーとして、長年にわたり全日本の第一線を走ってきた存在だ。

小川選手が徹底したのは、立ち姿勢、視線、荷重位置、スロットルやクラッチワークといった基本動作の指導だった。こうした基礎の積み重ねこそが、最終的にマシンを安定して進ませる力になるからだ。


小川選手は、隊員たちを指導した感想について次のように語った。
「隊員の皆さんは日頃から訓練されているので、もともとのスキルは高いですね。ただ、災害時には、それ以上の部分が必要になるので、さらに上を目指してもらっているところです」

厳しいコースで小川選手の指導を受け、3県の広域緊急援助隊が切磋琢磨したことは、隊員たちにとって大きな刺激になったようだ。


「今回は姿勢など、基本的な部分について指導していただきました。教えていただいたことを自分なりに理解し、ほかの隊員たちにも伝達して、部隊の総合的な力をつけていきたいと思います。本日は雨でしたが、実際の現場では雨ばかりではなく、雪が降るかもしれません。今日は絶好の訓練日和だったと思います」(坂井小隊長)

合同訓練の意味するもの

2026年3月11日で、東日本大震災の発生から15年を迎える。

「東日本大震災の時、私は隊員として現場に出動していましたが、現場はとても大変な状況になっていました。今回こうした訓練を行い、現場でも使える技術になるだろうということを実感しています。大型車両の進入が難しく、バイクの機動力が求められる大規模災害現場での情報収集活動を想定した訓練も行い、緊急対応力のさらなる強化を目指していきます」(坂井小隊長)


広域緊急援助隊は、東日本大震災や熱海市伊豆山土石流災害、令和6年能登半島地震などへの出動実績を持つ。これから先も、バイクの機動力が必要とされる災害は起こり得る。災害対応では、いかに早く必要な場所に到達し、情報を収集し、支援行動に移れるかが重要になる。異なる県警の隊員同士が共通の技術認識と訓練経験を持つことは、大きな意味を持つはずだ。