小径化とグリップ形状の変更により操作性を向上させた「GRステアリング」
「モータースポーツ用の車両を市販化する」という発想の下に開発され、2020年9月に発売されたGRヤリス。開発初期からレーシングドライバーによる評価を採り入れ、元町工場にスポーツカー専用ライン“GR FACTORY”を設けるなど、これまでにはない取り組みも注目を集めた。

スポーツカーといえば、発売当初こそ話題になって受注が殺到するものの、しばらくすると市場の熱が冷めてしまい、販売台数が尻すぼみになってフェードアウト……というパターンに陥る例も少なくない。そうならないためには、定期的に話題づくりを行なう必要があるのだが、GRヤリスはそれをしっかりと実践できている好例と言える。モータースポーツ参戦で得た知見を活かして継続的に改良を行ないつつ、着実にラインナップを拡充しているのだ。簡単に、その流れを振り返ってみよう。
■2021年
・KINTO限定の特別仕様車「RZ”High performance
・モリゾウセレクション”」発表(6月)
■2022年
・GRMNヤリス発表(1月)
・「RS“Light Package”」追加(4月)
・「RC“Light Package”」追加(6月)
■2024年
・マイナーチェンジ(1月)
・特別仕様車「Sébastien Ogier Edition」「Kalle Rovanperä Edition」発表(1月)
・「サーキットモード」提供開始(8月)
■2025年
・一部改良(4月)
・「Aero performance package」発売(10月)
・「GRMN YARIS UPGRADE by ROOKIE Racing」発表(12月)
■2026年
・特別仕様車「MORIZO RR」発表(1月)
・特別仕様車「Sébastien Ogier 9x World Champion Edition」発表(1月)
そして3月13日には、一部改良が施された「26式」GRヤリスが発表された(昨年から、GRヤリスでは年次改良モデルを〇〇式と呼ぶようになっている)。さっそく、その内容をご紹介しよう。

26式で最大のトピックは、新開発の「GRステアリング」の採用だ。操舵レスポンス向上のための小径化と、コーナリング時の押し操作で掌にフィットする左右グリップ形状を実現している。
その改良の背景には、モータースポーツ走行時のステアリング操作に関する要望があった。従来のステアリングでは、舵角が180度になるコーナリング時に持ち替えなしで操作を行なうと、スイッチに触れないように気を付ける必要があり、掌を理想的な位置に置けないというのだ。そんな声に応えるべく、開発では粘土で形づくった試作品を装着した車両でサーキットでのテスト走行を繰り返し、操作性が徹底的に追求された。
さらにステアリングスイッチは独立した配置として操作性を向上させたほか、スイッチ外周のリング上のイルミネーションにより夜間の視認性を高めている。


26式では、ステアリング関係でもうひとつ改良が施されている。それが電動パワーステアリングの設定で、高負荷での旋回時でもアシストをしっかりと稼働させるのが狙いである。トルクセンサー内のトーションバー剛性を最適化するとともに、ソフトウェア制御の変更によりステアリングトルクの検出範囲を拡大し、過酷な状況でもスムーズなステアリング操作ができるようになっている。
標準装着タイヤの変更も行なわれた。「ブリヂストン POTENZA RACE」が、RZ“High performance” + Aero performance packageとRZ“High performance”の標準装着タイヤとなった。POTENZA RACEはモータースポーツにおける高いグリップ性能を⾧時間維持させるため、現場でのテストを重ねて新開発されたもの。トレッドパターン、内部構造、ゴム配合を見直すことで、限界領域における車両のコントロール性が大幅に向上しており、市街地走行からサーキットでの限界走行まで、安定したパフォーマンスを実現する。なお、この標準装着タイヤの変更に合わせて、車両側も前後ショックアブソーバーの減衰力特性が最適化されている。

細かいところでは、メーカーオプションの仕様も変更された。これまでは、縦引きパーキングブレーキとナビパッケージ、もしくはコンフォートパッケージを同時装着する場合、シートヒーターおよびステアリングヒーターは非装着だった。それが今回の仕様変更により、ナビパッケージ、コンフォートパッケージともに、縦引きパーキングブレーキ選択時でもシートヒーターおよびステアリングヒーターが装着されるようになった。


デビューから6年目を迎えてもなお、GRヤリスの進化の歩みは止まる気配がない。今回の一部改良(26式)も、単なるお色直しではなく、サーキットやラリーといった過酷な現場の声をダイレクトに反映した、極めて実戦的なアップデートばかりである。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」というトヨタの理念を体現し続けるGRヤリス。熟成の域に入りつつあるこのピュアスポーツカーが、今後どのような境地へと到達するのか、引き続きその動向から目が離せない。
GRヤリス ラインナップ
| GR-DAT(8AT・4WD) | 6MT(4WD) | |
| RZ“High performance” + Aero performance package | 588万2200円 | 553万2200円 |
| RZ”High performance” | 538万7200円 | 503万7200円 |
| RZ | 488万7200円 | 453万7200円 |
| RC + Aero performance package | 446万2200円 | 411万2200円 |
| RC | 396万7200円 | 361万7200円 |
RZ“High performance” 主要諸元
全長×全幅×全高:3995mm×1805mm×1455mm
ホイールベース:2560mm
乗車定員:4名
車重:1280kg((GR-DAT搭載モデルは1300kg)
サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列3気筒ターボ
型式:G16E-GTS型
排気量:1618cc
最高出力:224kW(304PS)/6500rpm
最大トルク:400Nm/3250-4600rpm
燃料タンク:50L
トランスミッション:iMT(6速MT)or GR-DAT(8速AT)
タイヤ:225/40R18(ブリヂストン POTENZA RACE)
