難コース「群馬サイクルスポーツセンター」で雪道を”攻める”

かつては特殊車両の特別なギミックだった四輪駆動=4WD……昨今は全輪駆動=AWDと呼称されることが多いが……も、普通のクルマに搭載されるありふれたシステムとなっている。とはいえ、自動車メーカー各社により様々なシステムが存在し、それぞれに得手不得手があったりする。

日産GT-R(R35型)に搭載されるAWDシステムはFRベースの「独立型トランスアクスル4WD」。雪道でもスポーツ走行を楽しめるパフォーマンスをアピールした。

そして現在、徐々に普及しつつあるEVにもAWDモデルが設定されており、その主流は前後にモーターを搭載するツインモーターAWDだ。

日産のフルタイムAWDの嚆矢「ATTESA(アテーサ)」以来長年培ってきたAWDの知見が投入された「e-4ORCE」をEVのアリアにも採用。

日本における”乗用AWDのパイオニア”を自認するスバルは、EVにおいても(トヨタとの共同モデルではあるものの)ソルテラでAWDのEVをリリース。2025年のマイナーチェンジによる大幅な改良により、その走りは高い評価を得ている。

2025年10月のマイナーチェンジでD型となったスバル・ソルテラは、パワートレインを刷新。高い評価を得ている。

そのソルテラのパワートレインをさらにパワーアップさせて搭載したニューモデル、トレイルシーカーを発表。4月9日に先行受注の開始をアナウンスしている。

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トレイルシーカーは4月9日先行受注スタート!

そんなスバルは早速トレイルシーカーのプロトタイプで雪上試乗会を群馬サイクルスポーツセンターで実施した。2025年の『ジャパンモビリティショー2025』で日本初公開されていたが、試乗会は今回が初。その初試乗会が雪上、しかも群馬サイクルスポーツセンターというのは極めて特殊だ。

『ジャパンモビリティショー2025』のトレイルシーカー。

群馬サイクルスポーツセンター、通称「群サイ」は”峠”テイストのクローズドコースで、クルマの走行会やイベントがたびたび開催され、冬は雪上走行会もよく行なわれている。しかし、基本的にはコース幅は1車線+α程度の狭さでアップダウンも激しく、スピードが乗る場所があるかと思えばタイトなコーナーが連続するなどかなり難コース。まして雪ともなれば路面は滑りやすくなり、難易度はさらに上がる。

試乗当日の群サイ。

そんな難コースながら、スバルは地元が群馬のためかたびたび群サイで試乗会を実施している。直近では「2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞車である6代目フォレスターの雪上試乗会が”群サイ”で実施されている。

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6代目フォレスターの雪上試乗会レポート。

プロトタイプによる初の試乗会が雪上で、しかも会場が難コース”群サイ”。ここで、メーカー関係者以外に初めてトレイルシーカーに乗せるという大胆な試みに、スバルのトレイルシーカーへの自信の強さをうかがわせる。

雪の”群サイ”で実施されたトレイルシーカーのプロトタイプ試乗会。

当日は好天に恵まれたため、積雪路を基本に日向は雪が溶けかけていたり、場所によっては雪がなくなって濡れているだけだったり、あるいは乾いている箇所もあるなど、コースは千変万化の路面状況を呈していた。急な路面状況の変化など、ドライバーの判断はもちろんクルマにも厳しいコンディションと言えるだろう。

スバル最強スペックのハイパワーAWD

トレイルシーカーはソルテラ同様のグレード構成が予定されており、スタンダードグレードの「ET-SS」と上級グレードの「ET-HS」が設定される。「ET-SS」はFFとAWDが用意され、「ET-HS」はAWDのみ。加えて、オプションで20インチホイールも用意される。試乗車はその「ET-HS」の20インチホイール仕様となった。

トレイルシーカーの試乗車。

パワートレインの基本的な構成……前後にモーターを搭載し、それぞれ前後のタイヤを駆動するAWDというのはソルテラと共通。しかし、システム的にソルテラとの最大の違いになっているのが、リヤモーターのパワーアップだ。

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トレイルシーカーの詳細はこちら。

ソルテラのAWDモデルはフロントに167kW/268NMを発揮する2XM型、リヤに88kW/169NMを発揮する3XMの型モーターを搭載。システム最高出力は252kW(342ps)となっている。

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トレイルシーカーとソルテラを比べてみた!

一方でトレイルシーカーはフロント・リヤともに2XM型モーターを搭載しており、システム最高出力も280kW(380ps)に達する。ソルテラですらスバルのガソリンエンジン車の最高出力である202kW(275ps)を大きく上回っていたにも関わらず、トレイルシーカーはスバル最高スペックをさらに更新しているのだ。

トレイルシーカーのフロント側eAxle。

EVの魅力は即座に最大トルクまで発揮できるモーターパワー。しかし、一方で急激に立ち上がるトルクは滑りやすい雪道では諸刃の剣になるのではないかという懸念もある。昨今は技術も進歩し、車両制御も優秀になっているとはいえ、スバルがどのような味付けにしているがは大いに気になるところだ。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)

不安もなければ違和感もない優れたAWD制御

実際に雪のコースを走ってみると、重心が高くなりがちなSUVスタイルであるにも関わらず、重量物であるバッテリーが低い位置に鎮座しているためか安定感は抜群。モーター、トランスアクスル、インバータをひとまとめにした「eAXLE」が車体中心寄りに配置されているため、水平対向エンジンをオーバーハングに搭載する他のスバル車にも増してバランスの良さを感じる。

長時間ドライブは未体験ながら、ボコボコのコースでも乗り心地が良く、ツイステぃなコースでもしっかりとホールドしてくれたシートの出来は良さそうだ。

大容量バッテリーを搭載しているため、2トンにも達する車重もツインモーターによるハイパワーのおかげで重さを意識することはなく、雪の登り勾配でも難なく進んでくれた。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)。フロントオーバーハングの短さがよくわかる。

AWDの制御はまさに白眉。クルマの状態や操作からドライバーの意思を先読みするように制御が入る。巷間で高い評価を得ているスバルのAWDだが、ガソリンエンジン車は運転していて「滑ったな」と思ったところで制御が入り、姿勢を立て直してくれる。その制御は実に素早く自然で、滑ったことの不安を感じる暇もない。
トレイルシーカーは滑り出す前から、滑ることを予見しているように細かな制御が入り、滑らないようにクルマを動かしてくれる印象を受けた。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)

AWDの制御は滑ってから働くパッシブにせよ、トレイルシーカーのように滑る前から働いているアクティブにせよ、ドライバーの意識や想定と異なった制御が入ると、例えそれが安全でクルマ的に望ましい動きであっても、ドライバーとしては違和感になり、好ましい印象にならない。

試乗中の様子。

スバルのAWDはその辺りの味付けが実に上手い。EVになっても……逆にEVだからこそ、より緻密でリニアリティに優れた制御が可能になっているのは確かだが、ドライバーに違和感を抱かせないで安全かつ快適な走りを実現してくれているトレイルシーカーには脱帽だ。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)

逆にあえて滑らせようとしてもあまりに素早く制御が介入するため、クルマを振り回すようなことはできなかった。試しに停止状態からアクセル全開にしても、ほとんど滑ることなくクルマは進み出す。ただしこれは、アクセル全開にしたからと言って最大トルクが一気にかかっているわけではなく、駆動力が制御されてスムーズに発進できる最適なトルクが立ち上がってるだけのようだ。この辺りは、アクセルと駆動が物理的につながっていないアクセル・バイ・ワイヤ(電子制御アクセル)のEVゆえといったところだろう。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)

その制御は、スバル自慢の「X-MODE」すら必要ないのではないかと思えるほど。オンでもオフでも試乗コースレベルではあまり違いが体感できなかった。それこそ泥濘やラッセルが必要なレベルの深雪で試してみないとトレイルシーカーで「X-MODE」の真価は確かめられないのかもしれない。

トレイルシーカーの「X-MODE」スイッチ。

トレイルシーカーのツインモーターAWDは実に優れたシステムと制御だったが、筆者的にはやはりドライバーの操作に対するダイレクト感という意味では、センターデフ式>アクティブトルクスプリット>ツインモーターの順だな、と感じた。もちろん、ドライバーの能力を問わない安全性で言えばこの真逆になる。これは、ドライバー個人の好みによるところも大きいだろう。

トレイルシーカー「ET-HS」(20インチホイール装着車)は、雪の難コースでも何周でもしていたくなる愉しさであった。

ドライバーに違和感を抱かせない自然な制御はスバルAWDの大きな魅力ではある。トレイルシーカーも安全を確実に担保しながらドライビングの愉しさをスポイルしないセッティングになっており、ここにスバルが標榜する”安全と愉しさ”が誰でも享受できるクルマに仕上げられていると強く感じた試乗であった。

トレイルシーカーの”群サイ”雪上走行を動画でご覧ください(その1)。
トレイルシーカーの”群サイ”雪上走行を動画でご覧ください(その1)。

EVの懸念と課題は未体験

今回は限定されたコースでの試乗だけに、クルマの動きやドライブフィールなどを体験したに留まった。確かにトレイルシーカーの雪上走行は白眉であったが、現実的に雪上を走ることになる季節や場所での運用にはEVに共通する懸念が残るのも確か。

トレイルシーカー「EY-HS」(18インチホイール車)

トレイルシーカーはバッテリー容量が74.7kWhで航続距離はWLTCモード値で690km(20インチタイヤ車は627km)となっている。しかし、冬場ともなるとヒーターを使用すると電費が悪化するのはEVであればほぼ車種を問わない課題だ。電力負担の少ないシートヒーターやステアリングヒーターを併用して賢く電費をマネジメントするのがEVドライブの鉄則となる。

フロントシートヒーターはもちろん、ステアリングヒーターも備わる。
リヤシートにもシートヒーターが備わる。

AWDステーションワゴンでもあるトレイルシーカーは冬レジャーやウィンタースポーツを楽しむユーザーも視野に入れることだろう。行楽シーズンや土日祝日ともなれば充電施設の混雑も予想されるし、冬レジャーやウィンタースポーツの目的地ともなると充電施設が少ない可能性もある。
そういった状況で、トレイルシーカーの実用電費や航続距離がどうなるのか、大いに気になるところではある。

高速道路のサービスエリアの充電器は徐々に増えつつあるが、場所によってはまだまだ少ない。

ちなみに、トレイルシーカーAWDの予想価格は600万前後。補助金を含めれば500前後程度になるかもしれない。だとすると、何気にレヴォーグの2.4Lモデルとほとんど差が無いどころか、「ET-SS」ならむしろ安くなるかもしれない。

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雪の”群サイ”で実施されたトレイルシーカーのプロトタイプ試乗会。

トレイルシーカー主要スペック

グレードET-SSET-SSET-HS
駆動方式FFAWD
ボディサイズ全長4845mm
全幅1860mm
全高1675mm
ホイールベース2850mm
最低地上高210mm
最小回転半径5.6m
車両重量1900kg2010kg2020kg(2050kg)
フロントモーター型式2XM
最高出力167kW
最大トルク268Nm
リヤモーター型式2XM
最高出力167kW
最大トルク268Nm
システム最高出力165kW280kW
バッテリー種類リチウムイオン
容量74.7kWh
航続距離18インチタイヤ734km690km
20インチタイヤ627km
サスペンションフロントストラット
リヤウィッシュボーン
ブレーキ前後ベンチレーテッドディスク
最終減速比フロント13.81712.363
リヤ
タイヤサイズ18インチ235/60R18
20インチタイヤ
※オプション
235/50R20
太字が試乗グレード

※試乗車、写真、車両スペック等はプロトタイプのもの