“オモチャ感覚” だった先代モンキー「Z50M」

小さな車格にお遊び心を詰め込んだ、ミニバイク界のレジェンドとして知られるホンダ・モンキー。中でもモンキーのアイデンティティとも言える8インチホイールを採用(それまでは5インチホイール)した「Z50A」は、モンキーの歴史の中でもかなり重要な“転換点”となった一台だ。ここからはモンキー好きならずとも日本のミニバイク史を語る上で知っておきたい歴史を語っていく。

なぜ重要な“転換点”だったのか?その理由を語るには、先代モデル「Z50M」の存在が外せない。初期のモンキーはもともと遊園地のアトラクション用として生まれたルーツを持ち、市販化されたモデルもどちらかといえば“遊びの延長”といったキャラクターが強かった。前後5インチの小径タイヤにコンパクトな車体は、まさに“持ち運べるオモチャ感覚のバイク”といった趣きだったのである。

Z50M 1967年

国内市場向けに登場!

クルマに載せることを前提に、折り畳み機構を備え前後5インチホイールを履く。前後にサスペンションは存在せず、リジッドマウント。ホンダでは初代モンキーの位置付けとなった1台だ。

8インチ化で “ちゃんと走る” 4MINI「Z50A」へ進化!

ところが1969年に登場したZ50Aは、その立ち位置をガラリと変えてきた。まず大きなポイントは、前後ホイールを5インチから8インチへと大径化したこと。これによって直進安定性や乗り心地が大幅に向上し、“ちゃんと走れるバイク”としての資質を一気に高めた。

さらにフロントの足周りにはテレスコピック式サスペンションを新採用(先代Z50Mはリジッド=サスペンション機能はなし)。段差や未舗装路でも挙動が落ち着き、安心して走らせられる一台へと進化しているのが特徴だ

先代モデル「Z50M」と比較すると、タイヤサイズがかなり大きくなったのが分かる。タイヤ内のエアボリュームも大きくなり、新たに装備されたフロントサスペンションと相乗効果で、乗り心地が大きく向上した。

大人もOK! 使えるパッケージに進化

シートは肉厚化されてポジションに余裕が生まれ、大人でもしっかり乗れるようになった。一方でハンドルやステップの折りたたみ機構は継承されていて、クルマのトランクに積める携帯性はそのままキープ。レジャーはもちろん、当時は業務用途まで視野に入れていたというのも面白いところで、“遊び+実用”のバランスを狙ったモデルだったというわけだ。

現代のバイクと比較すると幅も狭く小さいが、大人が乗ることをしっかりと考慮した肉厚なシート。クッション性も高い。

ステップを折り畳んだ状態。リヤブレーキをフット式からレバー式にすることで、コンパクト化にも貢献。

扱いやすさを十分配慮!

エンジンは空冷4ストロークOHCで扱いやすく、自動遠心クラッチのおかげで操作もカンタン。リヤブレーキもフット式から左ハンドルレバーによる手動式に。初心者でも安心して乗れる間口の広さを持ちながら、走りはしっかりと進化している。また、自動車のトランクへ格納する時など、キャブレター内の燃料は簡単に抜き去ることができるよう燃料排出コックが装備され、ガソリンタンクも洩れ防止装置付のキャップを装備する。ホンダらしい作り込みを感じるポイントだ。

エンジンはOHCとなりノークラッチの3速仕様。

リヤブレーキは左レバーで操作するハンド式に。バックミラーは背面がホワイトのプラスチック製となり、ネジでかしめて位置を調整する仕様。通称「はんぺんミラー」。

「Z50A」この1台が “モンキーのカタチ” を決めた

そしてこのZ50Aで確立された方向性は、その後のロングセラーとなるモンキー 「Z50J」へと受け継がれていく。

スタイリングも含めて、この時点で“モンキーの基本形”はほぼ完成。つまりZ50Aって、単なる二代目ではなくモンキーというジャンルを決定づけた存在だ。

遊びから “相棒” へ、その第一歩

遊びの乗り物から、“使える相棒”へ。その進化の分岐点に立っていたのが、このZ50A。小さなボディに詰め込まれているのは、楽しさだけじゃない。実用性と進化の方向性——そのすべてを背負った一台だった。

Z50Aでは従来のアップタイプから、コンパクト化を実現するダウンマフラーを採用。

シート下には、工具収納ボックスが収まる。

主要諸元&当時発表データ

■主要諸元(ホンダ モンキー Z50A)

・全長×全幅×全高:1365×600×850mm
・ホイールベース:895mm
・車両重量:約55kg

・エンジン:空冷4ストロークOHC単気筒
・排気量:49cc
・最高出力:約2.6ps/7000rpm

・最大トルク:0.3kgm/5000rpm

・変速機:3速リターン(自動遠心クラッチ)
・燃料タンク容量:約2.5ℓ
・タイヤサイズ(前・後):3.50-8・3.50-8
・発売時期:1969年7月20日
・当時価格:6万3000円

※数値は当時資料より

※この記事は月刊モトチャンプ2024年3月号を基に加筆修正を行っています