マリン業界の電動化って、どこまで進んでいるの?

自動車の世界では、電動化に「待った」がかかっているような雰囲気が漂うが、欧州などでのカーボン・ニュートラルへの環境意識はいまだに高い。

それは船の世界でも同様で、スイスの湖水などでは、エンジン艇が走ることができな場合もあるほどだという。

そうした現状に加え、カーボン・ニュートラルへの対策としてマルチパスウェイを掲げるヤマハ発動機としてのひとつの取り組みがやはり電動化である。

電動推進機を搭載したカタマラン艇「E-Watatsumi」。

ジャパンインターナショナルボートショー2026に出展していた双胴船(カタマラン)「E-Watatsumi」は、それを具体的に進める実験艇だ。

E-Watatsumiは一見すると、船の世界の楽しさを象徴するために作ったモックアップで、実際には走れない、あるいは浮かびもしないデザインスケッチをカタチにしただけのものかな、と勘違いしそうなほど、その流麗なスタイルのカタマランからは、実験という堅苦しく重い雰囲気はまったく伝わってこない。しかし、実際には浜名湖などで走行実験を繰り返しており、それなりに汚れており、破損箇所もあったという。パシフィコ横浜の会場へ展示する前に徹底的に補修、クリーニングされたという。ちなみにこのデザイン、ヤマハのモーターサイクルデザインを当初から寄り添ってきて数々の美しい名車を生み出してきたGKデザイングループの「GK京都」が担当したという。

見た目部分の手を抜かない、実験機でも美しくデザインするのがヤマハ流

ゆくゆくは、富裕層へ向けた製品となるはずの実験艇であり、それならばと当初からどのような使われ方をするか、どのようなカタチが望まれるかまで織り込んだもので実験をスタートした。見た目部分の手を抜かないというのがヤマハらしい。キャビン部分はこれまで見たことないようなスペースが美しく設えてあり、ステアリングポスト周辺もシンプルながら明らかにデザインされた痕跡が伝わる。大型のYAMAHA製スピーカーを設置することも想定したスピーカー台まで備えられている。

電動推進機を使う前提で設計することで、いわゆるモーターボートによく見られるような船体前部を持ち上げて走る滑走型は、最高速度は大きくなるもののそれにも増して大きなエネルギーを消費する。そのため、大きく重いバッテリー搭載を必要とするため、停止時も走行時も同じ浮き方をしている排水量型とした。

その中でも、2つの船を繋いだようなカタマランを選んだのは、さまざまな実験設備なども搭載したり、将来の使い方を想定したレイアウトの自由度を考えてのこと。カタマランは日本では多く普及していないが、欧州ではマリンレジャーにおいてポピュラーな存在だ。つまり、ここでも欧州マーケットを意識しているわけだ。

電動推進に適した船体の形状を模索しているのはもちろん、その素材も革新的だ。バサルト繊維という鉱物由来の素材と樹脂で作られた新たなFRPを使用している。ガラス繊維のFRPに比べ、2割程度高い強度を持つという。

バサルト繊維を用いた船体。鉱物由来の繊維を樹脂で含浸させるため黒っぽい色となる。

太陽光パネルで発電すると、約2日で満充電が可能

肝心の電動推進機は、ヤマハ発動機が2024年に買収した「Torqeedo社」のユニットを搭載。水中のプロペラに直接モーターが繋がったような構成が特徴。回転部分がすべて水中にあるため、中速走行時などならばほとんど無音で走ることができるという。

ヤマハには、電動推進ユニット「HARMO」もあり、既に発売されているが、リムドライブの特徴を活かし、ゆっくり走る遊覧船などではHARMOで展開し、ある程度速度を出す船にはTorqeedoを使っていくのが妥当だと思われる。ここでもマルチパスウェイの考えというわけだ。

実験当初に比べ、1時間の全開走行で必要なバッテリーはその搭載量を4分の1程度まで減らせることが見えてきたという。電費効率を4倍にするとは、あらゆる電動モビリティ開発者にとって、夢のような話だろう。

そのバッテリーはルーフ上の太陽光パネルで充電も可能。今のところ、およそ2日あれば満充電が可能というので、週末だけの使用には十分な発電量を持たせてあるというわけだ。

ヤマハブースには、実験中の水素燃料エンジン船外機も展示してあるが、E-Watatsumiなら、理論上バッテリーを燃料電池に置き換えれば水素をエネルギー源とする船とすることも可能なわけだ。

ボートショーにはその他に、海外では発売済みのワイヤレスリモコンでほとんどの操船ができるワイヤレスステーションを公開したり、ガラスの代わりに植物の亜麻を使うなど様々な繊維のFRP、水上バイクウェーブランナー40周年記念モデル「FX JAPAN LIMITED」や、最新のボート、船外機、アイテムなど、多くの展示物は圧巻のものばかり。パシフィコ横浜のメーカー出展ブースの半分くらいはヤマハグループといった印象だった。

さらに、横浜ベイサイドマリーナ会場には、フランスPRESTIGE社の大型サロンクルーザー「PRESTIGE F4.3」その他の艇が展示される。

プレスブリーフィングを行ったヤマハ発動機マリン事業本部長の野﨑達也さん。

今回のボートショーにおけるヤマハ発動機のブースコンセプトは「いつまでも青き海と人」である。青く美しい海を守り続ける人、そしていつまでも青く活力がある人——そんな人たちを応援したいという思いが込められている。日本最大の総合マリンメーカーであるヤマハ発動機ブースのすべてを一気に見られる、ジャパンインターナショナルボートショー2026に足を運んではいかがだろうか。