大阪モーターサイクルショーで初公開された新型シグナスX。国内仕様の詳細は現時点で明かされていないが、過去の例を振り返ると、台湾仕様と日本仕様で基本設計に大きな違いが出るケースは少ない。
そう考えると、今回もベースは共通と見るのが自然だろう。
そこで本記事では、モトチャンプが現地で取材した台湾発表モデルの内容を軸に、日本でお披露目された新型シグナスXの中身を読み解いていく。
見えてきたのは、単なるモデルチェンジではなく、細部に至るまで手を入れた“総合進化型”という姿だった。
出力向上+駆動系変更!“体感加速”を作り込む
まずパワートレイン。台湾仕様では最高出力が従来の12psから12.2psへと向上していた。
数値だけ見ればわずかな差だが、注目すべきは同時に行われている駆動系の変更だ。ウエイトローラーは11gから9gへと軽量化されており、これによってエンジン回転の立ち上がりはより鋭くなる方向に振られている。
つまり今回の進化はピーク出力の上積みではなく、発進から中速域のレスポンスを引き上げる方向にある。
さらにスロットルはややハイスロットル化されており、入力に対する反応もダイレクト寄りに調整。グリップは複雑な3D形状とされ、長時間の操作でも疲労しにくい設計が採られているという。
こうした積み重ねによって、“スペック以上に速く感じる”フィーリングが狙われている。

φ267mmディスク採用で制動力が大幅アップ!?
足周りで最も大きな変更が、フロントブレーキだ。
台湾仕様ではディスクローター径が従来のφ245mmからφ267mmへと拡大され、キャリパーのピストン経もφ25.4mmからφ27mmに拡大された。
これにより制動力の向上はもちろん、ブレーキング時の安心感も大きく変わるはずだ。
さらにブレーキレバー比の見直しによって、操作に必要な力は約37%低減。効くだけでなく扱いやすい、という方向に進化している点も見逃せない。
フレーム剛性の向上と合わせて、減速から旋回にかけての一連の動きは、従来モデルとは明確に別物になっていると考えられる。

タイヤ細径化という“逆転の発想”
今回の進化の中でも特に興味深いのが、フロント足周りの変更だ。
ホイール幅は従来の2.75Jから2.5Jへと細くされ、タイヤサイズも120/70-12から110/70-12へと変更されている(台湾仕様)。
一見するとグリップダウンにも思える変更だが、これは開発側が明確に「機敏な操作性」を狙ったものだとされている。
軽快さをさらに研ぎ澄ましつつ、フレーム剛性アップで安定性を確保する。つまり、相反する要素を両立させるためのセットアップ変更だ。
ここに今回のシグナスの思想がよく表れている。
サスペンションとパッケージの最適化
足周りではさらに細かい見直しが入る。
フロントフォークのインナーチューブは5mm延長され、リヤショックのバネレートは約11.7%ソフト化(いずれも台湾仕様)。これにより路面追従性と乗り心地のバランスが再調整されている。
またパッセンジャー用ステップは59mm後方へ移設され、タンデム時の快適性も向上。日常使用の実用性もきっちり押さえてきた。
エアクリーナーBOXは容量を維持したままコンパクト化されており、車体レイアウトの自由度向上にも貢献している。
28L収納+デザイン刷新──使い勝手と質感も進化
実用面ではシート下収納が28Lへと拡大。台湾仕様ではSHOEIのX-15が収納可能とされており、日常使いでの利便性も高いレベルを維持している。
外装にも強いこだわりが見える。
フロントポジションランプは片側17個のLEDを使用しながら、点ではなく面発光に見せる設計を採用。視覚的な質感を高めている。
さらにサイドカウルやマフラーには布のような質感を持つ特殊グラフィックを採用し、シート下からグラブバーまで一体化された造形によって、従来とは異なる新しいデザインコンセプトが与えられている。

新型は“全方位で底上げされたシグナス”だ
台湾仕様の数値を見ていくと分かるのは、どこか一部を伸ばしたモデルではないということだ。
出力はわずかに向上しつつ、駆動系で加速感を引き上げる。ブレーキは大径化しつつ操作性も改善する。タイヤは細くしながら運動性を高め、フレーム剛性で安定性を補う。
すべてが連動して、乗り味そのものを作り替えている。
新型シグナスXは、スペック競争のバイクではない。
細部の積み重ねによって“質”を引き上げた125ccスクーターだ。
今回大阪で公開されたモデルが、この台湾仕様にどこまで準じるのかは今後の発表待ちとなるが、その方向性はすでに明確だ。
シグナスはここで、もう一度“走りの基準”を取りにきている。
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