競技最前線が求めるのは、再現性と耐久性

2000psを見据えた新時代の2JZ、そしてVR38の逆襲!

D1GPをはじめとするトップカテゴリーのドリフト競技において、エンジンに求められる性能はここ数年で大きく変化している。かつては絶対的なパワーこそが正義とされていたが、現在はその出力をいかに安定して使い切るか、そしてシーズンを通して戦い抜くための耐久性や再現性、さらにはメンテナンス性までもが重要な要素となっている。

そうした流れの中で注目を集めているのが、2JZ-GTE用の社外鋳造スチールブロックだ。

もともと高い強度を誇る2JZだが、1000psを大きく超える領域ではガスケット抜けやブロックの歪みといったトラブルが顕在化していた。強化ボルトやラダーフレーム、スリーブ化といった対策も講じられてきたが、いずれも決定打には至らなかった。

そこで登場したのが、アメリカのドラッグシーンで培われた高強度鋳造スチールブロックである。純正ブロックの基本設計を踏襲しつつ各部の肉厚を増し、剛性を大幅に引き上げたその構造は、2000ps級の出力にも耐えうるポテンシャルを持つ。

ドゥーラックではこのブロックをいち早く導入し、D1GP車両へ実戦投入。村上満選手のZN8型86に搭載された仕様では、現状1000ps+αでの運用ながらも余裕あるフィーリングと高い信頼性を実現しているという。

つまり2JZは、“限界を探りながら使うエンジン”から、“余裕を持って使えるエンジン”へと進化しつつある。これまで抑えていた領域に踏み込めることで、今後のパワーウォーズはさらに激化していくだろう。

しかし、いかに高強度なパーツを投入しても、それだけで戦えるエンジンが完成するわけではない。重要なのは、それらの性能を最大限に引き出すための加工精度だ。

ドゥーラックのエンジン製作を支えるARMでは、クランクのバランス取りやラインボーリングといった基本加工の精度を極限まで高めることで個体差を排除。誰が組んでも同じ性能と耐久性を得られる環境を構築している。

従来のチューニングでは、部品の誤差をチューナーの経験と技術で吸収するのが当たり前だった。しかしその方法では作業時間やコストが増えるだけでなく、仕上がりにバラつきが生まれやすい。現在の競技エンジンは、そうした“人に依存する領域”を減らし、精度そのものを底上げすることで性能を安定させる方向へと進化しているのだ。

この“精度の重要性”は、VR38DETTのチューニングにおいても顕著に表れている。アルミブロックを採用するVR38は、これまで強度や歪みの問題からスリーブを挿入してのボアアップが主流だったが、トラブルの多さから次第に敬遠されるようになっていった。その結果、「ボアは広げない」というのが一種のセオリーとなっていたのである。

しかしARMでは、純正同様の低炭素鋼溶射によるシリンダー加工と、その仕上げ技術を確立。日産の「ミラーボアコート」やメルセデスの「ナノボアコート」に代表される溶射シリンダーは、従来のクロスハッチとは異なり、ポーラス構造によってオイルを保持する平面仕上げが特徴だ。見た目はメッキのように滑らかな表面を持つ。

これによりスリーブレスのまま高い耐久性と精度を確保しつつ、ボアアップの可能性を再び現実的なものとしている。この溶射シリンダー加工はアフターマーケットでも対応できる企業が限られる高度な技術であり、今後のVR38チューニングの方向性を大きく変える可能性を秘めている。

さらにVR38は個体ごとの精度バラつきが大きいことでも知られており、ラインボーリングなどによる修正加工が不可欠だ。ここでも最終的な性能と信頼性を決定づけるのは、やはり加工精度である。

また、V型エンジン特有の課題として挙げられるのがバランス取りの難しさだ。演算を用いた高精度な調整が求められるが、ARMの加工では回転のスムーズさが明確に向上し、振動も大幅に低減されるという。

加えて、VR38のクランク先端にある半月キーは接触面積が小さく不安要素となるため1本キー化を実施。さらにATI製ダンパープーリーはクリアランスがタイトなため、装着時には適切な調整を施すなど、細部にわたる対策が信頼性向上へと繋がっている。

「我々が心がけているのは、精度の向上と新しいパーツ、そして技術の投入です。ARMさんに無理な要求をしながらですが、年々進化しているパワーチューンの世界の一端を感じていただけたのではないでしょうか」とはドゥーラックの伊藤さん。

パワーを追い求める時代は、すでに次のステージへと進んでいる。これからの6気筒チューンは、単に出力を引き上げるだけでなく、そのパワーをいかに安定して引き出し、使い切るかが問われるフェーズに突入した。

2JZからVR38へ…。最前線のエンジンチューンは、“精度で勝つ時代”へと確実にシフトしている。

●取材協力:ドゥーラック TEL:0467-81-3610

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