2017年、東京モーターショーで提示された未来

2017年の東京モーターショーでお披露目されたのは、このHonda Sports EV Concept(ホンダ・スポーツ・イーブイ・コンセプト)である。この年の東京モーターショーは来場者数約70万人を集めたイベントだった。トヨタはTj CROUISERを、マツダはVISION COUPEと魁(KAI)コンセプトを出した東京モーターショーである。

Honda Sports EV Conceptについてホンダは、「コンパクトなボディに、EV性能と人工知能(AI)を組み合わせ、人とクルマがひとつになったような「操る喜び」の実現を目指したコンセプトモデル」と説明している。
Honda Sports EV Conceptは、EV専用プラットフォームを採用し、電動化時代に向けてホンダが提案するコンパクトスポーツカーの姿だったわけだ。


“もうひとつのHonda e”だった可能性
このとき同時にお披露目された(同年のフランクフルト・モーターショーがワールドプレミア)のが、Honda Urban EV Conceptである。こちらは、2020年に「Honda e」として市販化されている。


Honda eはEV専用プラットフォームを採用し、全長3895mm×全幅1750mm×全高1510mm、ホイールベース2530mmのボディに、最高出力154ps/最大トルク315Nmのモーターをリヤに搭載する後輪駆動モデルだった。WLTCモードでの一充電航続距離は259kmとしている。


こうした背景から考えると、Honda Sports EV Conceptも同じEV専用プラットフォームを使う前提で製作されたコンセプトカーだったと推測できる。

ボディサイズや技術的な内容については非公表のため、あくまでも推測の域を出ないが……。
Sシリーズの現代的解釈としてのスポーツEV
さて、このHonda Sports EV Conceptの元ネタは?といえば、誰でもわかるとおり、ホンダS500/S600/S800である。クーペボディだからS600クーペ/S800クーペが元ネタというのが正しいのかもしれない。
1960年代にホンダが送り出したSシリーズは、フロントに当時先進のDOHCエンジンを載せ後輪を駆動するライトウェイトスポーツカーだった。
それを2010年代後半に電動化時代を見据えて新たに提案したのがHonda Sports EV Conceptということになる。








Sシリーズに倣ってオープンボディにしなかったのは、BEVだとそもそも重量が増え、オープンボディとすればさらに不利になる。それゆえホンダが考えるとスポーツモデルにするのが難しかったから……とこれも想像してみる。
なぜ市販されたのはHonda eだったのか
いずれにせよ、後に世に出たのは後輪駆動コンパクトBEVのHonda eであって、Honda Sports EV Conceptではなかった。Honda eはキュートなデザインが好評だったが、航続距離が短く、その割に価格が高かった(上級モデルで495万円、ベースモデルで451万円)こともあり、ヒット作にはなれなかったし、おそらく量産しても収益性の面でも厳しかったと考えられる。
あくまでも、「ホンダがつくるBEVの習作」であった。
であるなら、「Honda eになるべき習作はHonda Sports EV Conceptでもよかった」のではなかったか……。それなら多少価格が高くても航続距離が短くても「ホンダらしいね、これ」と受け入れられたのではないだろうか?
Honda Sports EV Conceptは、“いまこそ必要なBEV”だったのではないか――そう思わせるコンセプトカーだった。
