eビターラからRZ550eまで、メーカーの垣根を越えて個性豊かな最新電動車が勢ぞろい

集まったのは国産の主な電動車、6ブランド9車種12台。国産バッテリーEV(BEV)のラインアップは拡充が進んでいるが、まだまだセールス全体に占める割合は小さい。「もっとお客様に電動車のラインアップを知っていただきたい」と日産が音頭を取り、国産主要ブランド/メーカーの賛同を得て実現したのが「メーカー合同EV取材会」である。会場は追浜(神奈川県横須賀市)にある日産の試験場、GRANDRIVE(グランドライブ)だ。

6ブランドの電動車がグランドライブに勢揃い。

EV取材会の名称だが、BEVのほかにプラグインハイブリッド車(PHEV)も集められた。スズキはeビターラ、ホンダはN-ONE e:、マツダはMX-30 Rotary-EVとCX-60 PHEV、三菱はアウトランダーPHEV、レクサスはRZ550e “F SPORT”、日産はサクラ、リーフ、アリア(撮影のみ)という布陣である。時間的な制約から、マツダMX-30 Rotary-EVとホンダN-ONE e:、スズキeビターラ、三菱アウトランダーPHEV、レクサスRZ550e “F SPORT”の5モデルに触れた。基本的にはそれぞれコースを1周するのみなので、雰囲気を味わう程度だった(レクサスRZ550e “F SPORT”以外は別の機会に試乗済み)。

メディアはしばしば日産車の取材のために訪れるグランドライブだが、日産以外の自動車メーカーの広報部員の多くは「初めて来ました!」と口にしていた。

マツダMX-30 Rotary-EV

マツダMX-30 Rotary-EVは、新開発したロータリーエンジン(8C型、830cc)を発電専用に使うPHEVだ。狙ったのはBEVの拡張である。エンジンで発電ができるので、バッテリーが切れた後でも安心して走れるのがウリだ。カタログ上のEV走行換算距離は107km。バッテリーに蓄えた電気エネルギーが切れたら、ガソリンを使って発電し、その電力でモーターを駆動して走る。

マツダMX-30のボディサイズはCX-30とほぼ同等で、2.0L直4ガソリンエンジン+マイルドハイブリッドを搭載してデビュー。その後、EV(現在は販売終了)とプラグインハイブリッドの「Rotary-EV」が加わった。

BEVとしての走りを損なわないよう、エンジンは黒子に徹するよう仕立てられている。ロータリーエンジンフリーク(たぶん、筆者もその部類に入る)には気の毒だが、音や振動の面でエンジンの気配を感じるのはなかなか難しい。ローターをかたどったフロントフェンダーのオーナメントや、バックドアの「e-SKYACTIV R EV」のオーナメント、それにセンターディスプレイの「システム作動状態」などでその存在を確認するのがせいぜいである。

新開発の8C型ロータリーエンジン。ロータリーファンにとっては涙もの。

エンジンの存在感は希薄だが(あえてそうしているのだから致し方ない)、ロータリーエンジンを積んでいることに違いはなく、その意味で貴重な存在である。センターオープン式フリースタイルドアが象徴するように、内外装の個性的なデザインも特徴だ。

MX-30と言えば、やはり 観音開きドア。もちろんRotary-EVにも受け継がれている。

■マツダ MX-30 Rotary-EV スペック

  • 全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm
  • ホイールベース:2655mm
  • バッテリー容量:17.8kWh
  • 航続距離(等価EVレンジ):107km
  • エンジン種類:水冷1ローター(830cc)
  • エンジン最高出力/最大トルク:53kW(72ps)/112Nm
  • モーター最高出力/最大トルク:125kW(170ps)/260Nm
  • 価格:435万6000円〜

ホンダN-ONE e:

ホンダN-ONE e:はガソリンエンジンを積むN-ONEのコンセプトを受け継ぐ軽規格のBEVである。このクルマに触れると、ホンダ初の軽乗用車として1967年に登場したN360を開発するにあたって適用した「M・M思想」が思い浮かぶ。パッケージングを構築する際の基本思想で、マン・マキシマム/メカ・ミニマムの意。人のためのスペースを最大に、メカニズムを最小にという考え方である。

N-ONE e:は、ガソリンエンジンを搭載するN-ONEとパワートレインが異なるだけではない。EVユニット搭載のためボンネット高を高くする必要があり、それに伴ってフロントデザインも専用化している。

この思想を最もよく体現しているのはリヤ席だ。座面の下は空洞になっていてそのままの状態でもスペースの広さを示唆しているが、座面を跳ね上げると障害物のない広大な空間が現れる。何をするでもなく、この広大な空間を眺めるだけで無性に感心してしまう。ただ広く見えるだけではない。座面を正規の位置に戻して腰を下ろしてみたところ、充分快適に過ごすことができる。意外に(?)居心地はいい。

身長184cmの世良耕太さんが座ってもご覧のとおり。しっかりと膝前空間も確保できているのがわかる。

室内の計器盤やダッシュボード、カップホルダー、空調吹き出し口などは実に機能的にデザインされていていさぎよさを感じる。機能的ではあるが冷たさはなく、むしろおしゃれな空間にまとまっている。

N-ONE e:はインパネデザインも刷新。シフトセレクターの採用のみならず、水平基調のダッシュボードや液晶メーターの採用などにより、先進的かつ上質な印象を強めている。

走りもいい。静かでスムーズだ。N-ONEよりもクイックに設定したステアリングギヤ比の効果もあり、キビキビと向きを変える。BEVでは少数派の、完全停止まで行なうシングルペダルコントロールのモードを備えているのもN-ONE e:の特徴。アクセルペダルの戻し側で加速側だけでなく減速側の車速もコントロールすることができ、完全停止まで持ち込むことができる。慣れたらこのほうが楽、と感じるかもしれない。

ホンダN-ONE e:

■ホンダ N-ONE e: スペック

  • 全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm
  • ホイールベース:2520mm
  • バッテリー容量:29.6kWh
  • 航続距離(WLTCモード):295km
  • モーター最高出力/最大トルク:47kW(64ps)/162Nm
  • 価格:269万9400円〜

スズキeビターラ

スズキeビターラはスズキのBEV世界戦略車第1弾だ。国産ブランドでは唯一Bセグメントに属するのがセールスポイントのひとつで、4WDの設定があるのもウリである(試乗&撮影車は2WD/FFだった)。

ポリゴンを彷彿とさせる多面体構造がエクステリアデザインの特徴。先進感とタフさを巧みにアピールしている。

静かで、スムーズで、アクセルペダルの踏み込みに対する反応が良く、欲しい力を間髪入れずに出してくれる。そんな、BEVに期待する要素をeビターラはそつなく提供してくれる。とくに、高い静粛性には何度乗っても感心させられる。

2WDモデルと4WDモデルではモーター出力が異なることもあり、明確に後者の方がパワフルな印象だ。

N-ONE e:のシングルペダルコントロールに相当する機能が、eビターラではイージードライブペダル(EDP)だ。シフトセレクターの左側にあるこのスイッチを押すと、アクセルペダルの戻し側で減速をコントロールすることができるようになる。ただし、N-ONE e:のように完全停止はしない。極低速域ではクリープに移行し、最後はドライバーにブレーキを踏ませる。このあたり、メーカーの考え方によって制御が異なる。今回は試乗していないが、日産リーフのe-Pedal Stepも最後はドライバーにブレーキを踏ませる制御だ。

モーター、インバーター、トランスアクスルを一体化した、コンパクトなeアクスルを採用する。

前席もちょっと高め、というかもう少し低い位置に座りたいと感じさせるが、リヤ席に比べればまだマシだ。筆者の体格がじゃっかん(?)規格外な面は否定できないが(身長184cm)、ヘッドルームは不足しており、きちんとした姿勢で座れない。このあたり、購入前に確認しておくのがベターだ。

メーターとセンターディスプレイを同一平面上に配置したり、シフトセレクターがダイヤル式だったりと、先進的な雰囲気のインパネ。

■スズキeビターラ スペック

  • 全長×全幅×全高:4275×1800×1640mm
  • ホイールベース:2700mm
  • バッテリー容量:61kWh(Xグレードは49kWh)
  • 航続距離(WLTCモード):最大520km
  • モーター最高出力/最大トルク:135kW(184ps)/307Nm(※4WDモデル)
  • 価格:399万3000円〜

三菱アウトランダーPHEV

三菱アウトランダーPHEVは、通常はバッテリーに蓄えた電気エネルギーを使ってBEVとして走り、遠出をした際などにバッテリーのエネルギーを使い切った際はエンジンを始動して発電し、その電力を使ってモーターで走る。バッテリーに充分エネルギーが残っている場合でも、ドライバーが強い加速を求めた際はエンジンが始動して発電し、バッテリーの出力を発電分でアシストする。

2021年に登場した現行型アウトランダーPHEV。24年には大規模な改良を行い、バッテリー容量を20kWhから22.7kWhに拡大し、EV航続距離は100km以上に伸長された。

このクルマも今回が初めての試乗ではないが、エンジンが始動したとき、また、運転状況に合わせてエンジン回転が上昇しているときの静粛性の高さには感心させられる。耳をそばだてでもしない限り、エンジンの存在を感じ取るのは難しいほどだ。その意味で、純モーター走行しているときはもちろんのこと、エンジンが回っている状況でも、BEVライクな、静かな走りが堪能できる。

デビューから4年以上が経つが、古さを感じさせない上質なインテリアも魅力。

2024年に行なった大規模な商品改良でバッテリーを刷新した効果でエネルギーの出し入れがしやすくなったため、エンジンの始動がしにくくなっている(バッテリー出力だけでドライバーの要求に応えられるシーンが増えた)のも、BEVライクな走りの拡大に寄与している。ただし、エンジンの存在が希薄になったぶん(?)、インバーター起因と思われる高周波のノイズが耳につくのは、そり残したヒゲのようで、いったん気づいたら最後、気になって仕方ない。

2.4L直4エンジンは主に発電を担当し、前後に搭載した最高出力85kW/最大トルク255Nmのモーターを駆動する。

■三菱アウトランダーPHEV スペック

  • 全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm
  • ホイールベース:2705mm
  • バッテリー容量:22.7kWh
  • 航続距離(等価EVレンジ):106km
  • エンジン種類:2.4L 直列4気筒(2359cc)
  • エンジン最高出力/最大トルク:98kW(133ps)/195Nm
  • モーター最高出力:フロント85kW(116ps)/リア100kW(136ps)
  • モーター最大トルク:フロント255Nm/リア195Nm
  • 価格:526万3500円〜

レクサスRZ

レクサスRZはレクサス初のBEV専用車として2023年に販売を開始した。2025年12月にはプラットフォームおよびBEVシステムを刷新し、モーターの出力を引き上げたのに加え航続距離の伸長を果たしている。

2025年12月に大改良が施されたレクサスRZ。見た目の変化以上に中身の進化が著しい。

試乗&撮影車として用意されていたRZ550e “F SPORT”は、レクサス初採用となるステアバイワイヤシステムとインタラクティブマニュアルドライブを搭載しており、これらが技術的なハイライトである。前者はステアリングホイールとステアリングラックが機械的に結合しておらず、ドライバーのステアリング操作を電気信号に置き換え、その信号を受け取ったステアリングラック側がモーターを駆動することにより操舵を行なうシステムのこと。

後者はパドル操作により、あたかもトランスミッションを搭載しているクルマを操作しているような感覚が、サウンドや駆動力の変化で味わえる機能である。試乗では、主にこの2点に集中して確かめた。

ステアリングホイールとステアリングラックの機械的な結合をなくすと、ステアリングギヤ比を自由に設定することが可能になる。その自由度の高さを存分に生かし、RZ550e “F SPORT”ではロックまでの操舵角を片側200度に設定した。すると、ステアリングを持ち替えずに済むため、写真のような異形ステアリングの採用が可能になる。

ステアバイワイヤ機構の採用に伴い、ステアリングホイールはヨーク型に。

パーキングスピードだと一般的なステアリングの3倍程度クイックに切れるとのこと。試乗した際に「小回りが利く」ように感じたのは、少ししか切っていないのにタイヤはいつも以上に大きく切れているからだ。そのため、取り回しがいいクルマに感じられる。

車速の上昇とともにステアリングギヤ比はスローになっていき、40km/h程度で通常の2倍程度となり、100km/hでは通常のステアリングと同程度になる。それ以上の速度域では少しスローな設定にし、安定感をもたらす設定だ。というようなステアリングギヤ比の設定に人間が合わせる必要は、まったく感じなかった。無意識にステアリングを切ると、イメージどおりに向きを変えてくれる印象である。走り出して少し操舵すればすぐになじむ。

回転角度は約200度。これは左にいっぱいステアリングホイールを切った状態。
こちらは右いっぱい状態。持ち替えなくてもフルロックまで切ることができる。

インタラクティブマニュアルドライブは、シフトポジションが「D」のときにセンターコンソールの「M MODE」ボタンを押すことで起動させることができる。機能がオンになると、仮想のパワーソースと8速の仮想トランスミッションを持った状態になり、パドルシフトで選択した仮想ギヤ段に応じた駆動力が出る。変速時には軽い変速ショックが出るし、回転の上昇にともなってオーディオスピーカーが奏でる演出音が変化する。低いギヤ段のままアクセルを踏みつづけるとレブリミッターにあたってハンチングし、その様子を音とショックで表現する。

まるで有段ギヤを備えているかのように、パドルシフトを用いた走りを楽しめるインタラクティブマニュアルドライブ。結構楽しめます。

ステアリングを持ち替えなくていいので、ウインカーやワイパーのレバーはコラム側に固定ではなく、ステアリングと連動して動く。パドルも同様の理由から、ステアリングと連動するよう配置されている。そのため、ウインカー(右)とワイパー(左)レバーに追いやられ、決して操作しやすいとは言い切れない細いレバーがウインカー&ワイパーレバーの上に配置されている。間違ってパッシングしたり、ウォッシャー液を出したりしてしまいそうなレイアウトである。設計の優先度としてはウインカーやワイパーのほうが上なので悩ましいところだ。

ステアリングの裏側(右)には、アップシフト用のパドルとウインカーレバーを配置。

サウンドの演出はあえてエンジンをイメージさせず、「BEVサウンド」と呼ぶ人工的な音色を採用した。音の好みは人それぞれなので、ゆくゆくはいろいろなバリエーションを提供することも含めて考えていきたいとのこと。新技術の初投入モデルということもあり、「こんなこともできますが、みなさんいかがですか?」と反応を探っている側面もありそうだ。筆者はこの手の取り組み、大歓迎である。

大容量バッテリー、新設計モーター、新型eアクスルの搭載など、フルモデルチェンジに匹敵する改良を実施。航続距離はAWDモデルで最大629km、FWDモデルでは最大733kmに達する。

市場からのコンプレインに応えるためではなく、開発者として気になったからと、静粛性の向上に徹底して取り組んだのも、商品改良版RZの特徴。前後ドアのウェザーストリップの適用範囲を拡大したり、隙間に発泡シール材を充填したり、厚みのあるトノカバーを採用したりして、地道に音の抜け道をふさいだ。

ドアのウェザーストリップの隙間に発泡シール材を充填。細部に至るまで静粛性を向上させる工夫が施されている。
厚みのあるトノカバーも静粛性向上にひと役買っている。

一口にBEV、あるいはPHEVといっても、いろいろなタイプがある。サイズもまちまちだし、機能やユーティリティにも幅がある。バリエーションに富んだラインアップがそろうのが、国産BEV&PHEVの魅力。そのことを確認できた有意義なイベントだった。

■レクサス RZ550e “F SPORT” スペック

  • 全長×全幅×全高:4805×1895×1635mm
  • ホイールベース:2850mm
  • バッテリー容量:76.96kWh
  • 航続距離(WLTCモード):582km
  • モーター最高出力:フロント167kW(227ps)/リア167kW(227ps)
  • モーター最大トルク:フロント268.6Nm/リア268.6Nm
  • 価格:950万円