2025年に30周年を迎えたCR-Vは、世界累計で1500万台を販売するホンダの大黒柱

驚いたな〜! ホンダのクルマだから走りはいいのだろうと思っていたのだけど、その予想をはるかに上回っていたのだ。何がかというと、新型CR-Vのことである。御殿場(静岡県)で開催された試乗会に参加して、新型CR-Vを街中から峠道で走る機会があったのだが、ハイブリッドを搭載したミッドサイズSUVというカテゴリーから想像する以上に、実に運転が楽しかったのである。ふらっと入った洋食屋で頼んだハンバーグランチが、予想以上に本格派でコクのあるデミグラスソースを堪能できたときのうれしさにも通じる(?)サプライズ。やっぱり、クルマも(ハンバーグも)実際に味わってみないとわからない。新型CR-Vの試乗会で、そんなことを改めて思い知った次第だ。

先代よりもサイズは大きくなっているものの、視界の良さが取り回しやすさに貢献

1995年に初代の販売が開始されたCR-Vは、前年に登場したトヨタRAV4とともにコンパクトSUVのブームを巻き起こした立役者である。代を重ねながらホンダを代表するグローバルモデルに成長を遂げ、誕生30周年を迎えた2025年には世界累計販売1500万台を突破した。特にアメリカでは大きな支持を集めており、2000年代には彼の地で「最も売れているSUV」の称号を欲しいままにしていた。

1995年、「クリエイティブ・ムーバー」の第2弾として登場した初代CR-V(第1弾はオデッセイ)。『ホンダ買うボーイ』のCMコピーが懐かしい。

そんなCR-Vだが、2022年に北米を皮切りに新型に切り替わったものの、ボディサイズが拡大されたこともあって当初は日本への導入計画はなかったという。その代わりを務めるべく導入されたのが、CR-Vよりもひと回り小さいZR-Vだったのだが、やはりミッドサイズSUVは各メーカーが鎬を削りまくっている超激戦区。そこを戦い抜くためには選手層を厚くする必要があり、満を持しての新型CR-Vの投入となったわけだ。

新型CR-Vの開発の核は「ギャップの両立」。スポーティなのに室内が広い、トルク感に富むのに静粛性が高いなど、相反する価値を各領域で成立させたという。

では、当初、日本導入をためらう理由のひとつとなった新型CR-Vのボディサイズはどれくらいかというと、全長4700mm(先代比+95mm)×全幅1865mm(同+10mm)×全高1680mm(同±0mm、4WDは1690mm)、ホイールベース2700mm(同+40mm)。先代よりも確かに大きくなっているのだが、日本でも人気のトヨタ・ハリアー(全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mm)とは同等と言えるサイズで、新型CR-Vが際立って大きいわけではない。

エクステリアは水平基調のシンプルな造形に、力強さ・洗練・上質・大人らしさを凝縮。筋肉質でありながら知性を感じさせるアスリート像を指標にデザインされた。「プラチナホワイト・パール」の試乗車は「BLACK EDITION」で、外観上はガーニッシュ類がブラック仕上げになるのが特徴。

実際のところ、ステアリングを握ってみると、新型CR-Vはそのサイズの数値から想像する以上に取り回しやすく感じられる。その印象にひと役買っているのが視界の良さで、ここも新型CR-Vが「動感視界」と名付けてこだわった要素のひとつでもある。水平基調ですっきりとしたダッシュボードの採用や、サイドミラーの取り付け位置変更(Aピラーの付け根からドアへ)による見通し性の向上などが確かに効いている。また、ステアリング角度も先代の28度から新型CR-Vでは25度と立ち気味になったことで、大柄から小柄な体格の人まで、よりスポーティな運転姿勢が取りやすくなったのも特徴だ。

最近のホンダ車に共通する水平基調のダッシュボード・デザインを採用。空間全体に硬質でシャープなイメージをもたせて、SUVらしい力強さと精緻な造形による上質さの両立を図った。写真の「BLACK EDITION」では、ルーフライニングやステアリング下側/インパネ/ドアのガーニッシュがブラックとなり、よりシックな印象に。
サイドミラーの基部がドアに移されたことで、斜め前方に抜けの良い視界を確保。

進化した新世代e:HEVと、走りを熱くするリニアシフトコントロール

新型CR-Vのバリエーションはシンプルだ。標準グレードの「e:HEV RS」はFFと4WD、上級グレードの「e:HEV RS BLACK EDITION」は4WDが設定される。

  • e:HEV RS(FF):512万2700円
  • e:HEV RS(4WD):539万2200円
  • e:HEV RS BLACK EDITION(4WD):577万9400円

パワートレインはハイブリッドのみ。2.0Lアトキンソンサイクル直噴DOHCエンジンと、駆動用&発電用のふたつの高出力モーターを内蔵した電気式CVTとを組み合わせた新世代e:HEVである。まだ同システムが旧称の「SPORT HYBRID i-MMD」と呼ばれていた先代搭載のものと比べると、ふたつのモーターが同軸配置から平行軸配置へと変更された点が新しい。そのおかげでエンジン直結ギヤを従来のハイ側だけでなくロー側にも設定が可能となり、北米市場では重要となるトレーラーのトーイングに対応。日本ではトーイングを必要とするユーザーは少ないものの、ロー側のロックアップ機構は登坂路での走行時などでも機能し、実燃費の向上にも恩恵があるという。

2.0L直噴アトキンソンサイクルDOHCエンジン+平行軸配置の2モーターで構成される第4世代e:HEV。
エンジンのカバーを取り外すとご覧のとおり。最高出力は109kW(148PS)/6100rpm、最大トルク183Nm/4500rpmを発揮する。
平行軸配置されたふたつのモーター。走行用モーターの最高出力は135kW(184PS)/5000-8000rpm、最大トルクは335Nm/0-2000rpm。

このロックアップ機構が作動すると、メーター表示で教えてくれる。実際に山道を登る途中で何度か表示されたのだが、ロックアップしているのかどうか、その違いは体感ではわからなかった(それほどスムースにロックアップ機構が作動しているということだ)。

同軸配置ではエンジンと走行用モーターをひとつのギヤで共用していたが、平行軸配置とすることで独立したギヤ比を設定可能に。さらにハイ/ローの2段ロックアップギヤを採用している。

で、走ってみるとこのe:HEVが、実に気持ち良いのである。e:HEVは基本的にバッテリーに蓄えられた電力を用いてモーターで走行する。その走行用モーターは最高出力こそ135kW(184PS)と先代同様だが、最大トルクが315Nmから335Nmへと向上しているおかげもあってか、加速も力強い。芦ノ湖スカイラインの急峻な登坂でもへこたれることなく、グイグイと加速していく。

そんな加速時の気持ち良さにアクセントを加えてくれるのが、リニアシフトコントロールだ。有段トランスミッションが変速するかのように、速度の高まりと連動してエンジンサウンドが上下するデバイスなのだが、これがよくできているのだ。ハイブリッドというと、豆腐に鎹(かすがい)的なドライブフィールを想像しがちだが、このデバイスのおかげで、新型CR-Vにはしっかりと運転の手応えがある。小手先のギミックかと訝っていた自分の不明を恥じた次第だ。なお、新型CR-Vでは高効率領域が拡大されたエンジンの特性によって、燃費性能を維持しながら多様な回転制御が可能となったおかげで、リズミカルな変速フィールが実現できているという。

走行用モーターは先代モデルから最大トルクを6.5%向上。高回転化も実現しており、連続走行可能な最高速度は30%向上している。

セダンライクの操る楽しさ」の謳い文句に偽りなしのフットワーク

ハンドリングも好印象。まず、ステアリングホイールがしっかりと丸型なのがうれしい。最近は下側がフラットなDシェイプが多く、それはそれで特に不満はないものの、どこにも引っかかりを感じることなくスムースに操舵できる丸型ステアリングホイールを握ると、「やっぱりこれだよなぁ」と思った次第だ。

そんな真ん丸のステアリングホイールは、右に左にと切ったときのフィーリングもすっきりとしていて好感が持てる。ベアリングやボールジョイント、EPSのフリクションを徹底的に低減した効果は確かに実感できる。芦ノ湖スカイラインのような峠道をアップテンポで走っているときはもちろんだが、街中のちょっとした曲がり角でもスムースに思い描いたとおりのラインを描けるのがうれしい。

フロントサスペンションを支えるサブフレームは軽量かつ高剛性な新骨格のアルミダイキャスト製。リヤサブフレームも閉断面構造による高剛性化を実現。そうした改善もSUVらしからぬフットワークに貢献しているようだ。

乗り心地も上々だ。走り始めは「ちょっと固めかな…」という印象をもったのだが、速度が上がるにつれてしなやかさが増していき、路面の段差もトントンと軽やかに乗り越えてくれた。荒れた路面など高周波振動時(ドンという突き上げ時)のみ開くサブバルブをピストンに設けるなど、入力に応じて減衰力を変化させるダンパーが効果を発揮しているようだ。

新型CR-VにはFFと4WDが設定されているが、今回試乗したのは後者。ライバルとなるRAV4の4WDは後輪を独立したモーターで駆動するが、CR-Vはプロペラシャフトを用いた機械式4WD。オーソドックスなタイプではあるが、より大きな駆動力を後輪に伝えることができるので、後輪が「押す」感覚は、RAV4よりもCR-Vの方が感じられる。

シフトセレクターの左側にはドライブモードスイッチを配置。スノー、ECON、ノーマル、スポーツ、インディビジュアルを選択可能。

また、新型CR-Vは4WDの制御もブラッシュアップされた。コーナリング時の駆動力配分を従来の最大60対40から50対50として、後輪側に拡大することで旋回時の安定感とライントレース性を大幅に向上。冬場に雪道を走る機会が多い降雪地帯の方だけでなく、オンロードでの走行性能を目当てに4WDモデルを選ぶユーザーも増えるのではないだろうか。

タイヤサイズは235/55R19。BLACK EDITIONではホイールの切削面がダーク仕上げとなる。

全方位をカバーする「Honda SENSING 360」と快適な後席のおもてなし

新型CR-Vは先進安全技術「Honda SENSING」を標準搭載するが、これも先代に対して大幅に進化。前方カメラおよびレーダーの広角化を行なうことで認識性能が向上した。また「BLACK EDITION」はより多機能な「Honda SENSING 360」にアップグレードされるのだが、こちらでは各コーナーにもレーダーを追加。検知範囲が全方位に拡大されたことで、道路の左右前方から突然接近する車両、または車線変更時に後方から接近する隣車線の車両との衝突回避の支援が可能となった。また、ACC(アダプティブクルーズコントロール)作動時の高速クルーズ中、進行方向のカーブの曲率を早期に判断して減速を開始する機能も備わる。

液晶メーターには自車がアイコンのように表示されるのだが、ブレーキランプやウインカーの作動状況も反映されるのがマル。

もうひとつ、Honda SENSING 360の専用機能が「車線変更支援機能」だ。高速道路など自動車専用道路で、ACCおよびLKAS(車線維持支援システム)の作動中にドライバーがウインカーをワンタッチ操作すると、車両がステアリング操作を支援してくれるというもの。今回の試乗会でも高速道路を走る場面があったので、実際に試してみた。最初は操作に戸惑ったものの、慣れると確かに便利。特にロングドライブ時の疲労低減に役立ちそうな機能だ。

使い勝手の面における新型CR-Vの特徴といえば、後席のおもてなしだろう。このクラスのSUVでは珍しく、リヤシートの背もたれは8段階のリクライニングが可能。また、前後190mmのスライド機構も備えており、乗車する人数や積載する荷物に応じてアレンジできるのもうれしいところだ。また、リヤドアの開口角度も90度近く、乗り降りのしやすさにも配慮されている。

リヤシートのレッグスペースは先代から16mm拡大。4WD車はリヤにもシートヒーターが備わる。
本革表皮のフロントシート。BLACK EDITIONはヒーターのほか、ベンチレーション機能も備わる。
リヤシートは190mmの前後スライドが可能だ。

ライバルひしめく激戦区で光る「走りの気持ち良さ」

気になるところと言えば、Googleを搭載したセンターディスプレイのサイズ。最近のクルマのインテリアはここが見せ場で、どんどん大型化していく傾向が顕著だ。そんな中、新型CR-Vの9インチというサイズは、実用面では不足はないのだけれども、ライバル車と見比べるとちょっと寂しいと感じられるのも正直なところだ。このあたりは、もともとが2022年にデビュー(北米)したモデルであるだけに、仕方のない部分かもしれない。

Google搭載の9インチ・ホンダコネクトディスプレー。音声による目的地検索を試してみたが、レスポンスが速くて使いやすい印象だった。

ちなみに、新型CR-Vの月間販売計画台数は400台。アメリカでは年間40万台が売れるホンダの大黒柱なだけに、日本でももっと人気が出ていいはず。そのためには、ユーザー層を広げるようなエントリーグレードの存在も必要かもしれない。

とにもかくにも、その走りの気持ち良さは激戦のミッドサイズSUVにあっても特筆もの。特に走り重視でこのクラスのSUVを選ぶならば、有力候補になる1台ではないだろうか。

グレードCR-V e:HEV RS BLACK EDITION
全長4700mm
全幅1865mm
全高1690mm
室内長1935mm
室内幅1565mm
室内高1185mm
乗員人数(名)5
ホイールベース2700mm
最小回転半径5.5m
最低地上高210mm
車両重量1830kg
エンジン種類2.0L直列4気筒DOHC
エンジン最高出力109kW(148PS)/6100rpm
エンジン最大トルク183Nm(18.7kgm)/4500rpm
燃料(タンク容量)レギュラーガソリン(57L)
モーター種類交流同期電動機
モーター最高出力135kW(184PS)/5000-8000rpm
モーター最大トルク335Nm(34.2kgm)/0-2000rpm
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー個数72
燃費(WLTCモード)21.1km/L
サスペンション前:ストラット 後:マルチリンク
ブレーキ前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
タイヤサイズ235/55R19
価格577万9400円