連載

あのコンセプトカー、どうなった?

実用性と遊び心を融合した“Tjクルーザー”の中身

2017年の東京モーターショーでお披露目されたTj CRUISER

2017年の東京モーターショーでトヨタが発表した新ジャンルのクロスオーバーコンセプトが、「Tj CRUISER(ティ・ジェイ・クルーザー)」である。

VANの積載性能とSUVの力強いデザインの融合を目指したTjクルーザー。「Tj」とは、TOOL-BOX(道具箱)の「T」と、楽しさを意味するJoyから来ている。

エクステリアデザインはいま見ても斬新で、SUVにも商用バンにも、あるいはミリタリーユースにも見える。コンセプトカーながら内装も作り込まれており、助手席側の前後シートはフルフラット化が可能。サーフィンのロングボードなど、約3mまでの長尺物を積載できる。

2017年の東京モーターショーの注目モデルの一台だった。
約3メートルの長尺物が積める室内

プラットフォームは「次世代のTNGA」を想定。パワートレーンは2.0Lクラスのエンジン+ハイブリッドシステム、駆動方式は前輪駆動と4WDが用意されていた。

エンジンは、おそらく2018年に登場したダイナミックフォースエンジン、2.0LのM20A-FXSを想定していたのだろう。「次世代」が何を意味していたのかは明確ではないが、プラットフォームはTNGAのGA-C。つまり、東京モーターショー2017の時点で、かなり現実的なモデルだったといえる。

なぜ市販されなかったのか? いま再評価する理由

会場での反響も大きく、2018~2019年頃には量産化の噂もあった。だが、結局は市販化されることはなかった。

全長×全幅×全高:4300mm×1775mm×1620mm ホイールベース:2750mm

Tjクルーザーのボディサイズは以下のとおりだ。
全長×全幅×全高:4300mm×1775mm×1620mm
ホイールベース:2750mm

225/50R20の大径タイヤは、現在の基準から見てもボディサイズに対して大きめだ。そのぶん迫力があり、独特のプロポーションを生み出している。さらに、ボンネットやルーフ、フェンダーにはケアフリー素材(特殊塗装)を採用し、気負わずタフに使える雰囲気も魅力だった。

ボディ全体を丁寧に面取りしたスクエアな造形は、まさに「洗練されたモダンな道具箱」そのもの。しかし量産化は見送られた。

ボンネットとルーフ、フェンダーなどには、無造作に物を置いても傷や汚れがつきにくいケアフリー素材(強化塗装)を採用
タイヤは225/50R20

理由はいまとなっては推測するしかないが、「商用車的なのか」「乗用SUVなのか」という点でターゲットが曖昧だった可能性はある。全長4.3mクラスにはミニバンのノア/ヴォクシーがあり、SUVにはRAV4(2019年登場の5代目)が控えていた。さらに2020年にはカローラクロスも加わる。トヨタ内に強力な競合が多すぎたともいえる。

商用バンとして見るとハイエースほどの積載力はなく、乗用車として見るとキャラクターが尖りすぎている。結果として、プロ用途にもファミリー用途にも振り切れなかったことが、市販化見送りの理由だったのではないか。

大開口スライドドアにより、荷物の横からの出し入れも容易に
商用車バンとも乗用車とも言えないコックピットデザインだが、スッキリしていて好感が持てる。

仮に300万円前後で発売されていたとしても、ノア/ヴォクシーやRAV4と競合する中で、積載力でも走破性でも中途半端に見えてしまった可能性は否定できない。価格帯が“ちょうど激戦区すぎた”ともいえる。

しかし現在の市場を見渡すと、車中泊やアウトドア志向、フラットな荷室空間へのニーズ、そして何より“道具感”のあるデザインが支持されている。「いまだったら売れていたのではないか」と再評価したくなるコンセプトだ。

2026年中の発売が見込まれているランドクルーザーFJ
ランドクルーザーFJのボディサイズは全長×全幅×全高:4575mm×1855mm×1960mm ホイールベース:2580mm
ランドクルーザーFJのコックピット

トヨタは2025年のジャパンモビリティショーで、Tjではなく「FJ」を世界初公開した。ランドクルーザーFJである。FJは「Freedom & Joy」、自分らしく楽しむ自由を意味する。IMVプラットフォームを採用したラダーフレーム構造の“ミニ・ランクル”だ。

時代はFJなのかもしれない。だが、いまこそTjが街を走る姿を見てみたかった。

Tj CRUISER 2017年

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