ハイレスポンス800馬力の衝撃

圧縮比9.3のRB28を実現したクランク角センサー移設キットの功績

エンジンをかけた瞬間、「RB26の音じゃない!」という言葉が頭をよぎった。直6であることは間違いないが、従来のRB26とは明らかに異なる甲高いエキゾーストノートが、それを強く印象付ける。このBNR32に搭載されているのは、圧縮比「9.3:1」に設定されたRB26改2.8Lエンジンだ。

このエンジンに辿り着いた背景には、かつてこの車両に搭載されていた圧縮比8.3のローコンプ仕様RB28の存在がある。当時は、圧縮比を下げて2.0キロ前後の高ブーストでパワーを稼ぐ手法が主流だった。ノッキングを抑えやすく、効率よく出力を引き上げられるためだ。

しかし、この仕様をサーキットで使うと、「2速では吹け切り、3速ではもたつく」という状況に直面しやすい。低圧縮ゆえにエンジンの基礎体力が不足し、必要な場面でトルクとパワーが足りなくなることが原因だった。

そこで浮上したのが高圧縮化という選択肢だ。理論上は低回転域から力強いトルクを発揮できるはずだが、当時の純正クランク角センサーを用いた制御ではノッキングが頻発。高回転域では点火時期を遅らせるしかなく、結果として伸びのないエンジンになってしまっていた。

この課題を解決したのが、HKSの『クランク角センサーコンバージョンキット』である。純正はカムスプロケットから回転信号を取得する構造のため、タイミングベルトの影響で高回転時の信号精度が不安定になりやすい。これが点火時期を詰めきれない要因となっていた。

本キットはクランク角センサーとカム角センサーを分離し、クランク軸から直接信号を取得する構造へと変更。これにより高回転域でも安定した信号を得られるようになり、精度の高い点火制御が可能となった。

その結果、圧縮比9.3という高圧縮仕様でありながら、ブースト1.7キロで800psというスペックを実現。ギヤ選択に悩まされることもなくなり、ドライバーは走りに集中できるようになった。

また、このレベルの出力で問題となる冷却性能についても抜かりはない。ラジエターにはオリジナルのサイドフロー&Uターン構造を採用し、コア全面を効率的に使用。さらにオイルクーラーは純正の水冷に加えて空冷式を2基追加し、油温管理を徹底している。

これにより、高圧縮エンジンの弱点である連続周回性能も克服。富士スピードウェイを30分以上走行し続けられる800ps仕様へと仕上げられている。

車両は2名乗車公認だが、サーキットでは運転席のみを使用。サイトウロールケージ製13点式ロールケージにより剛性と安全性を確保する。センターコンソールのモニターは後方確認とオーディオ機能を兼ねる。

エンジン制御にはF-CON VプロVer3.4を採用。チューンドRB26の寿命を延ばすため、レブリミットは低めに設定し、常用回転域は8000rpm以内に抑えている。

足まわりはジールファンクション製車高調にオリジナルセッティングを施し、スプリングはフロント18kg/mm、リヤ16kg/mm。ブレーキはエンドレスのレーシングMONO6とMONO4の組み合わせだ。

リヤサスペンションは、トラクション性能に優れるBNR34純正メンバーおよびアームへ変更。BNR32で駆動力を引き出すための重要なポイントとなっている。

トランスミッションもBNR34純正6速MTへ換装し、プロペラシャフトはワンオフの1ピース構造を採用。これによりレスポンスと駆動効率が向上し、体感的なパワー感も大きく引き上げられている。

外装は太田自動車製フェンダーにより、フロント20mm、リヤ30mmワイド化。タイヤは前後ともアドバンA050の295/35R18、ホイールはウェッズスポーツTC105X(11J+15×18)を組み合わせる。

高圧縮化と精密な点火制御、そして徹底した冷却対策によって完成した800ps仕様のRB28。その本質は単なる最高出力ではなく、全域で立ち上がるトルクと扱いやすさにある。

高ブースト頼りの従来型チューンとは一線を画すそのフィーリングは、ラップタイムだけでなくドライバーの集中力までも引き上げる。積み重ねられたノウハウと新技術の融合が、RB26チューンの新たなステージを明確に示している

●取材協力:カーショップポルシェ 山梨県南アルプス市東南湖252-2 TEL:055-284-0813

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