海外自動車メディアの独特な表現を学びながら、最新モデルの魅力を深掘りする本連載。第7回は、ランボルギーニの最新フラッグシップ、レヴエルトの試乗記に登場する英語表現を解説する。”Top Gear”誌のフランス版編集長を務めるWalid Bouarab氏らが、フランスのヴィアンヌサーキットで試乗したレヴエルトのインプレッションを教材とした。

英語表現 “speaks volumes” に学ぶ:数字が雄弁に物語るV12の力

わずか18秒で1キロを駆け抜けるレヴエルトの圧倒的なパワー。
わずか18秒で1キロを駆け抜けるレヴエルトの圧倒的なパワー。

レヴエルトは6.5リッターV12エンジンをプラグインハイブリッド化し、前輪を2基のモーターで駆動するAWDを採用。システム合計の最高出力は1015PS、0–100km/h加速は2.5秒とランボルギーニは公表している。加速テストにおける実測値でも2.6秒をたたき出しており、充電量やタイヤ温度、ローンチコントロールのインターバルなどを考慮すれば素晴らしいタイムだと評価されている。

100km/hに到達してからの加速について、英語では以下のように表現している: “Crossing the kilometer mark in barely 18 seconds speaks volumes about the iron health of this V12.”

ここで使われている“speak volumes”を直訳すると、「多くを語る」となる。つまり「何かについて非常に雄弁に語る」「強く印象づける」「明確に示す」という意味になる。この文脈では、「わずか18秒で1kmを駆け抜けたという事実が、このV12(エンジン)の力強さを如実に物語っている」という意味になる。日本語では「〜がそのすごさを如実に示している」「〜を雄弁に物語っている」などと意訳すると自然だろう。

ニュース記事や評論などでよく使われる表現であり、「speaks volumes =とてもはっきり示す」と覚えておくと役立つだろう。

英語のユーモア表現 “let itself go on the scales”:レヴエルトの車重を皮肉る

2トン近い車重によって、コーナーリングではエイペックスにつくために減速が強いられる。
2t近い車重によって、コーナーリングではエイペックスにつくために減速が強いられる。

パワーや8速DCTのスムーズさなど、レヴエルトのパワーユニットは非常に高く評価されている。一方で、ハンドリングに関しては厳しいコメントが続く。これは実測値で2t近い車重が大きく影響しており、コーナーではエイペックスをクリアするためにスピードを大幅に落とす必要があるという。その車重に関しては、少しユーモラスな表現が使われている:”As long as a German road car (4.95 m), as wide as a utility vehicle (2.03 m excluding mirrors) and loaded with technology, the Revuelto has let itself go on the scales.”

“the Revuelto has let itself go on the scales”を直訳すると、「レヴエルトは体重計の上で自分を緩めた」となり、意味が通らない。この表現は「体重が増えてしまった」、つまり太ったという意味で使われる。人に対して、”He has let himself go.”と言うと「彼は体型に気を使わなくなって太った」という意味になる。

ここでは、レヴエルトに対して同じイメージを重ねており、ハイブリッド化を含む様々な技術を搭載したことに伴って車重が増加したことをユーモラスに表現している。自然な日本語に訳すと「ドイツ製のロードカー並みの全長(4.95m)、商用車並みの全幅(2.03m)に、最新技術を満載したレヴエルトは体重も増えてしまった」となる。

慣用句 “get your bearings”:勝手がわかるという感覚の英語表現

メカメカしいランボルギーニらしいインテリアだが、慣れれば使いやすいようだ。
メカメカしいランボルギーニらしいインテリアだが、慣れれば使いやすいようだ。

インテリアを紹介するパートでは、“get your bearings”という表現が使われている: “Once you get your bearings, the ergonomics are ultimately well thought out.”

これは、「(最初は操作系に戸惑うかもしれないが、)一度慣れれば、その設計はよく考えられている」ということを意味する。この場合のbearingはコンパス(方位磁石)や地図で示す「方角」のことで、“The ship changed its bearing to avoid the storm.”と言えば、「その船は嵐を避けるために進路を変えた」となる。

“get your bearings”は、「自分のいる位置や方角を確認する」という意味から派生して、「自分が置かれている状況を把握する」「勝手がわかる」といった比喩的な表現として使われる。この文脈では「慣れてくると」などと意訳すると自然な表現になるだろう。

日常会話などでも”get your bearings in a new job” =「新しい仕事の勝手がわかる」のように使われることがある。慣用句として覚えておくと役立つだろう。ちなみに、機械の「ベアリング」も方向感覚を表すbearingも、語源はbear(支える・運ぶ・耐える) から来ている。

今回は外来語の使い方について紹介する。

ポルシェ911 GT3 RSと911 ターボS比較試乗に見る英語表現②【クルマ英語学 vol.06】

ワールドプレミア(世界初公開)の様子や日本未導入の新車試乗など、海外メディアならではの情報に簡単にアクセスできる今日このごろ。外国語による表現の真意が果たしてどこにあるのか迷うことも多い。この連載では、月刊『GENROQ』本誌に掲載された海外ジャーナリストの記事をベースに、その自動車の世界観を紹介する。第6回は前回に続き『GENROQ』2025年7月号から。異なる仕様のポルシェ 911を比較試乗した記事の中から、英語にもある「外来語」を取り上げる。