国産バイクのカフェレーサーをチェック
まずは、国産バイクを例に、(2025年6月末現在)新車で購入できるカフェレーサーにはどんなモデルがあるのか紹介しよう。
【ホンダ】
「CB650R/E-クラッチ」
648cc・直列4気筒/バーハンドル/フロントカウルなし

「CB125R」
124cc・単気筒/バーハンドル/フロントカウルなし

【ヤマハ】
「XSR900GP」
888cc・直列3気筒/セパレートハンドル/フロントカウル付き

「XSR900」
888cc・直列3気筒/バーハンドル/フロントカウルなし

「XSR700」
688cc・直列2気筒/バーハンドル/フロントカウルなし

「XSR125」
124cc・単気筒/バーハンドル/フロントカウルなし

【カワサキ】
「Z900RSカフェ」
948cc・並列2気筒/バーハンドル/フロントカウル付き

【スズキ】
「SV650X」
645cc・90°Vツイン(2気筒)/セパレートハンドル/フロントカウル付き

共通点はレトロでスポーティなスタイル
各モデル名の下には、エンジンのタイプや排気量、カフェレーサーとしての装備に関連する特徴なども入れてみた。ご覧の通り、フロントカウル付きもあればカウルなしもあるし、バーハンドル仕様があるかと思えば、セパレートハンドル仕様もある。
これらの共通点は、前述の通り、レトロな雰囲気を醸し出しつつも、スポーティなフォルムや走りも合わせ持つことだ。
たとえば、カワサキのZ900RSカフェでは、カフェレーサーの定番ともいえるフロントカウル、いわゆるロケットカウルを装備する。また、スズキのSV650Xが装着するフロントカウルも、デザイン的にはレトロな雰囲気を醸し出している。

ちなみに、ヤマハ・XSR900GPの場合は、フロントカウル付きといいつつ、ほかのモデルとややイメージが違う。だが、後述する理由により、ここではあえてカフェレーサーのひとつにカウントしている。

また、ハンドルについても、XSR900GPやSV650Xはセパレートタイプを採用。そのほかは、バーハンドルを装備している。だが、バータイプのモデルについても、ハンドル位置は比較的低めに設定。セパレートハンドルのモデルと同様、やや前傾がきつめのスポーティなライディングポジションになることが共通点だといえる。
源流は60年代の公道レーサー
カフェレーサーと呼ばれるモデルが、なぜこうした装備を特徴とするかについては、そのルーツが関連している。元々、カフェレーサーは、1960年代にイギリスで生まれたカスタムバイクのスタイルを意味し、それらの特徴を採り入れているからだ。
当時、イギリスでは、毎晩のようにカフェへ集まり、そこを起点に公道レースを楽しむ「ロッカーズ」と呼ばれる若者たちが数多くいた。
そうした若者たちの特徴は、レザー製のジャケットやパンツを履き、カスタムバイクに乗っていること。しかも、彼らが乗る愛車の多くが、当時のレーシングマシンを模倣したスタイルに改造されていたという。
ベース車両の多くは、トライアンフやBSA、ノートンといった、当時のレースシーンで大活躍した英国メーカーのモデルたち。公道レースなどでバイクのスピードやスリルを味わうことを好んだ当時の若者たちは、マン島TTレースなどバイクの世界選手権シリーズでダイナミックに走るレース用マシンに憧れ、それらを参考にしたカスタムを愛車に施すようになったという。
ちなみに、カフェレーサーという名前の由来は、当初、毎晩のようにカフェへ集まり、公道でレースをする若者たちを指していたそうだのが、いつの日か彼らの愛車も意味するようになったといわれている。

カウル「あり」と「なし」がある理由
そんなルーツを持つのがカフェレーサーというスタイルだ。当時の主な改造は、たとえば、ハンドルをセパレートタイプやフラットなバータイプなど、低く幅が狭い仕様にし、ステップを後方にするバックステップなども装着していたようだ。
また、シートも車体後方に座れるようなシングルタイプにするなどで、上体を伏せるライディングポジションになるようにしていた。
そんなカフェレーサーにカウルなしが多いのは、当時、ほとんどのバイクがカウルレスだったから。今でいうネイキッドのスポーティ版的なスタイルも多かったようだ。
だが、なかにはオリジナルのフロントカウルを装着するカスタムバイクもあり、こちらも人気だったという。そして、そうしたフロントカウルについても、当時のレーシングマシンを模倣した流線型のデザインが主流。とくに、先端が突き出て丸味を帯びた形状がロケットに似ていることで、先述した「ロケットカウル」という愛称が定着し、カフェレーサー用フロントカウルの代名詞となった。
そして、現代のカフェレーサーにフロントカウル付きとなしがあるのは、実際に、当時、どちらの仕様もカフェレーサーと呼ばれていたからなのだ。

ネイキッドバイクとどこが違う?
その後、こうしたカスタムスタイルは、北米や日本などへも波及し、数多くのカスタムビルダーがオリジナルのマシンを製作。世界的に波及し、カフェレーサーというスタイルが確立される。
そして、そうした流行をキャッチした国内外のバイクメーカーでも、カフェレーサーのスタイルを採り入れた市販車をリリース。国産車でも、例えば、1983年に登場したホンダ「GB250クラブマン」などがそれにあたる。

さらに、2000年代に入ると、クラシカルなスタイルに現代的なテイストを融合させた「ネオクラシック」というスタイルが大流行。往年の名車をイメージした様々なタイプの市販車が登場する。
そうした潮流のなかで、カフェレーサーも、ネオクラシックというジャンルの中でも、特にスポーティな雰囲気を備えたスタイルとして人気を博し、現在のように市販車でも豊富なラインアップを誇るようになったのだ。
以上の通り、カフェレーサーは、元々カスタムバイクを発祥したスタイルだ。いわゆるネイキッドと呼ばれるモデルも、レトロな雰囲気を持つという点では共通点もあるが、発祥や成り立ちの点で異なるといえる。
たとえば、カワサキの「Z900RS」。2017年の発売以来、大型バイクのなかでも特に大きな支持を受けている大ヒットモデルだが、そのルーツは1972年に登場した900ccモデル「900スーパー4」、通称「Z1」だ。ティアドロップタイプの燃料タンクやテールカウルなどを採用することで、Z1のスタイルを現代に蘇らせているのがZ900RSだといえる。


一方、それをベースに、カフェレーサー的スタイルにしたのが、Z900RSカフェ。Z900RSと同様にバーハンドルを装備するが、ベースのZ900RSがアップライトなポジションになる高めのタイプなのに対し、Z900RSカフェでは、より前傾姿勢となる低いタイプを採用。また、フロントカウルやシングル風の専用シートなど、先に述べたカフェレーサーの特徴を採り入れた装備を持つ。

つまり、Z900RSカフェは、メーカーが施したZ900RSのカスタム仕様だといる。ヤマハのXSR900GPの場合も、バーハンドルやカウルレスのXSR900をベースに、カウリングやセパレートハンドルを装備したメーカー製カスタム仕様であることは同様だ。
もちろん、XSR900GPの場合、いわゆるカフェレーサー的なロケットカウルこそ装備していない。だが、成り立ちなどを考えれば、十分に同じジャンルに属するといえる。オマージュしたレーシングマシンの年代が、従来の1960年代や1970年代から1980年代にシフトしただけで、カフェレーサーの方程式に則っていることは間違いないからだ。
レーサーレプリカやSSに近い存在!?
カフェレーサーは、レーシングマシンがお手本という意味でいえば、前述した通り、1980年代半ばから1990年代前半に大流行したレーサーレプリカや、現代のスーパースポーツに近い存在だといえる。

もちろん、昔のカフェレーサーはメーカー製でなく、あくまでユーザーがカスタムしたバイクだった。でも、WGP(ロードレース世界選手権)など世界のレースで活躍したマシンのスタイルをオマージュしている点は同じ。しかも、そのスタイルを、2輪メーカーが積極的に取り入れ、市販車として販売している点も似ている。
そうした観点からみれば、カフェレーサーは、レーサーレプリカやスーパースポーツの先駆け、もしくは元祖的な存在だといえるのではないだろうか。
カフェレーサーは、ほかにも、例えば、BMWの「R12S」や「R12nineT」、トライアンフの「スピードトリプル1200RR」、ロイヤルエンフィールドの「コンチネンタルGT650」など、海外メーカーでも、近年ライアップを強化している。




ともあれ、魅力的なモデルがひしめくカフェレーサーのジャンル。排気量も、前述の通り、125ccの原付二種といった小排気量モデルから、1200ccのビッグバイクまで多様なモデルが揃っており、幅広いライダーが楽しめることも魅力だ。街中にもマッチするクラシカルでスタイリッシュなスタイル、そしてワインディングなども楽しめるスポーティな走りの両方を求めるユーザーには、まさに最適なジャンルのひとつだといえるだろう。
