連載

GENROQ BMW Mの軌跡

M2(F87)

「1シリーズMクーペ」の再来

初代から好調な売れ行きを示したE87型「1シリーズ」は、2011年にFRレイアウトを踏襲したF20型1シリーズへとフルモデルチェンジ。その際、E82/88型1シリーズクーペはそのまま生産が継続されたが、2014年にフルモデルチェンジを果たし新たにF22型「2シリーズクーペ」として登場した。

名称では2シリーズを名乗っているものの、ベースになったのは横置きエンジン前輪駆動のF45型「2シリーズアクティブツアラー」ではなく、縦置きエンジン後輪駆動のF20型「1シリーズ」だ。2690mmのホイールベースもF20型と同じで、ボディサイズは全長4440mm、全幅1775mm、全高1420mmと1シリーズクーペよりもひと回り大きくなっていた。

そして2016年のデトロイト・ショーでBMWは「1シリーズMクーペ」の再来というべき「M2」を満を持して発表する。ベースとなったのは3.0リッター直6ターボの「M235i」だが、シャシーはホイールベースを5mm延長するとともに、前後にM4用のアクスルを流用することでフロントトレッドを70mm、リヤトレッドを65mmへと拡大。

前後のブリスターフェンダー、フロントバンパー、リヤスポイラーなどボディ全体のエアロダイナミクスもモディファイされており、ボディサイズは全長4475mm、全幅1855mm、全高1410mmとさらに長く、幅広く、そして若干低くなっていた。

ハイパワーな専用エンジンを搭載

ほかにもフロント245/35ZR19、リヤ265/35ZR19サイズのミシュラン・パイロットスーパースポーツ、高い制動力を誇るMコンパウンドブレーキシステム、M3/M4にも搭載された左右リヤタイヤのロック率を0%から100%まで自在に調整できるアクティブMディファレンシャル、電動パワステのMサーボトロニックを標準で装備するなど、シャシー面も大きく進化している。

エンジンは、M235i譲りの2979cc直列6気筒DOHCツインスクロール・シングルターボで、最高出力370PS/6500rpm、最大トルク465Nm/1400〜5560rpmへとチューン。そのハイパワーに対応するため、フリクションを低減したトップリングを組み込んだピストン、M4譲りのメインベアリング、点火プラグ、専用のオイルポンプなどで強化が図られた“N55B30T0”という形式番号をもつM2専用エンジンとなっている。

そこに組み合わせるギヤボックスは6速MTと7速DCTの2種類。日本市場には当初7速DCTのみの導入だったが、2017年モデルから6速MT仕様の導入も行われている。

マイナーチェンジによって進化

そして2018年、2シリーズクーペのマイナーチェンジに伴い、M2も新たに「M2コンペティション」へと進化を遂げた。その最大の特徴はシリンダーブロックをオープンデッキからクローズドデッキに替えて剛性を強化し、軽量クランクシャフト、強化ピストン、コンロッド、バルブスプリングを組み込み、ツインターボ化した“S55”エンジンを新たに搭載していることだ。これにより最高出力は410PS/5250〜7000rpm、最大トルクは550Nm/2350〜5200rpmへと向上。あわせてラジエーター、オイルクーラーの増強といった冷却効率の向上も図られている。

またエンジンルームにCFRP製のストラットブレースを追加しボディ剛性を強化しているほか、強化サスペンション、フロント400mm径、リヤ380mm径のMスポーツブレーキを備えるなど、シャシー側にもアップデートが加えられている。

ワンメイクレースシリーズがスタート

そして2019年には444PS、550Nmを発生する直6ツインターボを搭載し、アルミ鍛造製のホイールハブ、コントロールアーム、CFRP製のボンネットフード、ルーフ、センターコンソールなどで軽量化を果たしたサーキット仕様の「M2 CS」がデビュー。

2020年にはM2 CSをベースに専用バンパー、カーボン製GTウイング、スリックタイヤ、安全タンク、ロールケージなどを備えた「M2 CS レーシング」をリリース。ドイツDTM選手権のサポートレースとしてワンメイクのM2 CS レーシング・カップがスタートしたほか、日本でも2022年からM2 CS レーシング・シリーズがスタートしている。

2010年末に登場した「1シリーズ Mクーペ」。

1シリーズクーペをベースとした日本未導入「1シリーズ Mクーペ」【BMW Mの軌跡】

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