
4MINIと呼ばれる代表的マシンであるだけに、モンキーを楽しむスタイルはオーナーの数だけ種類がある。なかでも長い歴史があるだけに種類豊富なチューニングパーツが各社から発売されてきたことも特徴。レースだけでなくストリートでも速さを競いたいというユーザーの声を受けてボアアップキットやビッグキャブが開発された。それらの中で最強と目されるのがDOHCヘッドを与えてしまうボアアップキットだろう。

今回紹介するゴリラのオーナーである北限の猿さんは現在62歳。それこそ70年代後半から80年代にかけての第一次モンキーブーム期を知る世代であり、自らも長くモンキーのカスタムやチューニングを楽しまれてきた。「モンキーミーティングin多摩」の会場は東京西部の東京サマーランドで毎回開催されてきたが、その会場へ自宅のある青森市から駆けつけるほどだから、いかにモンキーが好きな人だかを物語っている。

モンキー愛溢れるオーナーは、当然だがトランポにマシンを積んで来場している。会場には複数台のモンキーを展示されたが、そのうちの1台がOV-36Aフレームとされたゴリラだ。なぜOV-36Aへ行き着いたかといえば、やはり横型エンジンを限界までチューニングしてきた経験から。高度なチューニングをエンジンに施してしまうと、純正フレームでは対応できない領域になってしまう。そこでフレームから見直したいと思っていた時期にオーヴァーレーシングからOV-36Aが発売されると聞いたのだ。

OV-36Aは上写真の状態でキット販売される。メインフレームのほか前後のモノアームと12インチホイールで構成されていて、フロントにはNSF100用リヤショックをフレーム内にセット、リヤにもNSF100用216mmリヤショックが使えるように設計されている。つまりNSF100用であれば社外ショックが選択できる。さらにブレーキはNS-1やリード50ディスクローターが使える仕様であり、これらもサイズが合えば社外キャリパーが選べる。ユーザー自ら各種パーツを選んで組み込むことで、自分だけのOV-36Aが出来上がるというわけなのだ。

オーナーは以前から組んで何度も試行錯誤を繰り返した、124cc仕様となるSP武川製デスモドロミックツインカム24V 124ccキットを組み込んだエンジンをOV-36Aに載せることにした。デスモドロミックとはドゥカティで有名なバルブ駆動方式で、一般的なエンジンと違いバルブを駆動するためのバルブスプリングが存在しない。特殊形状カムシャフトがロッカーアームを直接駆動してバルブを強制的に開閉するのだ。そのため高回転域でのバルブサージングが起こらず、高回転域を得意としている。

このデスモヘッドを備えるキットにはセラミックメッキシリンダーや鍛造ピストン、X断面形状コンロッドやストロークアップクランクシャフトにも鍛造材を用いることでハイパワーを求める際の強度が確保されている。ただし、チューニングを進めていくとモンキー純正フレームでは当然、剛性が足りない。以前は純正フレームを加工していたというが、OV-36Aヘフレーム変更したところハイパワーエンジンを思う存分楽しめるようになったという。

OV-36Aの特徴としてサスペンションアームやロッドにピロボールを採用していることが挙げられる。非常にダイレクトかつ剛性感のある走りをもたらしてくれるだけでなく、ロッドやピロボールを調整することで車高やオフセット、キャスターアングルが自在に変更できる。ライダーの体格や乗り方、コースによりセッティングが変更できるので、思うような走りの味付けが実現可能だったと言うことなのだ。

フレームキットではNSR50やNSF100などのサスペンションパーツが推奨されている。オーナーは基本的にオーヴァーレーシング製パーツを選んでいるが、ブレーキには前後ともブレンボ製キャリパーをセット。ブレーキやクラッチのマスターシリンダーはエアロテック製をと、それぞれに満足できる製品を選んで組み上げている。

高度にチューニングしたエンジンを存分に味わうために選んだフレームキットだったが、なんと佐このフレームには1番のフレームナンバーが刻印されていた。つまりOV-36Aを使った初ユーザーでもあるのだ。その後、OV-36Aは継続して販売されているようだが、99万円という価格設定ゆえか見かけることはあまりない。というか、このマシン以外で見たことがない。なんとも貴重なマシンでもあるのだ。

ちなみになぜゴリラ外装を選んだのかといえば、これにも訳があった。これだけのエンジンとフレームなので、走りを楽しんでいるとモンキー外装では危ないと感じる場面がある。ディアドロップ形のタンクが特徴なモンキーだが、ハードなブレーキングを行うとライダーの身体がタンクの上にまで滑ってしまうのだ。これを解消するなら縦へ盛り上がる形状をしているゴリラ用タンクが適している。そこでモンキーではなくゴリラの外装を選んだのだ。
