Porsche 911 GT3 Cup
歴代カップカーは5381台をリリース

1990年以来、ポルシェは911をベースとするワンメイクレーシングカー「911 GT3 カップ」を開発・販売してきた。当初はドイツ国内の「ポルシェ・カレラカップ」としてスタートし、3年後にはF1グランプリのサポートレースとして「ポルシェ・スーパーカップ」へと発展を果たしている。
2025年現在、カレラカップは、北米、南米、ヨーロッパ、中東、日本、オーストラリアなどを舞台に12ヵ国以上で開催。さらに、ポルシェ公認のトロフィーも23シリーズが存在し、これらのレースでも911 GT3 カップが使用されている。911ベースのカップカーの製造台数は5381台を記録しており、世界で最も生産台数の多いレーシングカーに君臨する。
カップカーは、ドイツ・シュトゥットガルトのツッフェンハウゼン本社工場において、量産モデルと並行して生産してきた。2021年シーズンにデビューした現行モデルだけでも1130台がリリースされた。992.1型のポルシェ911 GT3カップの生産には、約8時間を要するという。
フロントセクションの空力性能が向上

2024年1月、ポルシェ・モータースポーツのヴァイザッハ工場において、新型カップカーの開発をスタートした。現行モデル同様、911 GT3 カップは量産車向け技術とモータースポーツに求められる要件を融合。これまで以上に純粋なレーシングカーへと進化を遂げている。
開発の重点は、フロントセクションのエアロダイナミクス性能のアップデートに置かれ、今回の改良によりサーキットにおける操縦性が大幅に向上。さらに、安全性と電子制御、ブレーキ、パワーデリバリー、水平対向6気筒エンジン、ハンドリングなど、改良点は多岐にわたる。
ポルシェ・モータースポーツにおいて、GTレースカー・プロジェクトマネージャーを務めるヤン・フェルドマンは、新型911 GT3 カップについて次のようにコメントした。
「現在、911 GT3 カップは非常に高い性能レベルで稼働しています。今回、世界中のワンメイクシリーズからのフィードバックをしっかりと分析し、現行型の911 GT3 カップと比較して、多くの面でさらに洗練されたレーシングカーを開発することができました」
開発段階からeフューエルを積極使用

今回、ポルシェ・モータースポーツは、911 GT3 カップの開発において、テストベンチを含む全工程で「ポルシェ・モビル1・スーパーカップ(PMSC)」で使用されているeフューエル・ブレンドを採用した。
2025年シーズンのPMSCで使用されるeフューエル・ブレンドは、FIAの新規定が求める再生可能燃料の要件を技術的にクリア。すべてのCO2削減措置を組み合わせた場合、従来の化石燃料相当比で66%相当のCO2を削減する。再生可能成分の割合は体積比で79.7%。成分の大部分はメタンールからガソリンへと変換された再生可能合成原料ガソリン(MtG)となり、再生可能/廃棄物由来/残渣由来のエタノールも含まれている。
実走テストは、イタリアのモンツァ、ドイツのラウジッツリンク、ヴァイザッハ開発センター内の社内テストコースで実施。テストは、ポルシェ・スーパーカップのチャンピオン経験者バスティアン・ブースとクラウス・バッハラーが担当し、2024年IMSA GTD プロ・クラス王者のローリン・ハインリヒと、豊富な経験を持つマルコ・ゼーフリードもプロトタイプのステアリングを握っている。
