今年上半期の登録台数は3099台、対前年比でプラス7.8%を達成

大隅武さん
ビジネス概況を説明する大隅 武氏(ビー・エム・ダブリュー株式会社 モトラッド・ジェネラルマネージャー)。

BMW Motorrad Japanは7月16日、東京都江東区にあるBMW GROUP Tokyo Bayホールにて、ニューモデルである「R 1300 RT」および「R 12 G/S」の国内発表・商品説明会を開催した。

冒頭では、モトラッド・ジェネラルマネージャーである大隅 武氏が、これまでのビジネス概況を説明した。2025年の上半期は、新型車や特別モデル、テクニカルアップデートなど計11モデルを投入しており、1月から6月までの登録台数は3099台に達したという。これは販売新記録とのことで、日本での支持が急速に伸びていることを端的に表していると言えるだろう。

なお、今年の下半期には、今回商品説明が行われたR 1300 RTとR 12 G/S以外にも、ネイキッドのR 1300 RやスポーツツアラーのR 1300 RSといった魅力的なモデルの導入が控えていることから、この勢いはまだまだ続きそうだ。

より快適に、さらにスポーティーさも手に入れた次世代RT

R1300RT
価格は366万1000円~で、写真のレーシングブルーメタリックは+12万1000円。2025年7月16日から受注を開始している。

2019年、排気量を84cc拡大し、BMW ShiftCam(可変バルブタイミング機構)を新たに採用したタイミングで、車名をR 1200 RTからR 1250 RTへと変更。続く2021年には、外観デザインを刷新するとともに、アダプティブクルーズコントロール(ACC)をはじめとした先進装備を多数搭載。そして今年、ついに次世代モデルとなるR 1300 RTが発表された。

エンジンは、1300cc空水冷4ストローク水平対向2気筒で、最高出力はR 1250 RTの136PS/7750rpmから145PS/7750rpmへ。ベースモデルの車重は279kgから265kgへと5%ダウンしている。メインフレームはR 1300 GS/アドベンチャーとほぼ共通で、シートレールはチューブラースペースフレーム構造からアルミダイキャスト製のモノコックフレームに変更している。フロントサスペンションはテレレバー、リヤサスペンションはEVOパラレバーだ。

注目したいのは、日本仕様に標準装備されるDCA(ダイナミック・シャシー・アダプション)と名付けられた電子制御サスペンションだ。R 1300 GSのDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)は、25km/hを下回ると自動的に車高が下がる「アダプティブ・ビークル・ハイト・コントロール」が組み込まれている。これに対してDCAは、ライディングモードをダイナミックまたはダイナミックプロに切り替えると、リヤダンパーが伸長して車体姿勢を前下がりとし、深いバンク角とスポーティーなハンドリングを実現するという。つまり、より幅広いレンジで楽しめるバイクとなったのだ。

可変式スリップストリームディフレクター
新型RTにおける特徴的な装備の一つが、可変式スリップストリームディフレクターだろう。手動にてサイドのパネルを上下させることができ、下げた状態(右)では上半身へ走行風が心地良く導かれ、上げた状態(左)では風雨からのプロテクション効果が最大限に高められる。また、新しいシリンダートリムパネルの採用により、降雨の状況でも足元が濡れづらくなったという。
ASA
ASA(オートメイテッド・シフト・アシスト)仕様は+12万4000円で用意される。クラッチレバーはなく、マニュアル変速は手元のスイッチではなくシフトペダルで行うシステムだ。
トップケース
日本仕様はトップケースが標準装備となる。R 1300 RTではパッセンジャーの居住性向上にも重きが置かれており、シートだけでなくこのバックレストにもヒーターが組み込まれている。
グラブバー
グラブバーのラバー部分にもヒーターが組み込まれるという親切設計。温度設定は高低2段階で、スイッチは右側下部に設けられている。パッセンジャーシートは座面を後方へと広げ、着座位置の自由度を高めている。
パニアケース
パニアケースは、内部のダイヤルを回すことで容量が可変する設計だ。パッセンジャーの居住性を高めるため、前方の張り出しを抑えて足元スペースを広く確保している。

RナインT アーバンG/Sに続くR 80 G/Sオマージュ第2弾

R12G/S
STDモデルとなるR 12 G/S。245万1000円~で、写真のライトホワイトは+4万2000円だ。シート高は860mm。車重は229kgで、これはアーバンG/Sとほぼ同じだ。2025年5月21日から受注を開始している。
R12G/S GSスポーツ
リヤホイールを17インチから18インチにサイズアップするなど、未舗装路の走破性をより高めたR/12 G/S GSスポーツ。254万5000円~。シート高は875mm。

2017年、RナインTスクランブラーをベースに、アップタイプのフロントフェンダーやゼッケンプレート風のヘッドライトカウルを装着し、R 80 G/Sを彷彿させるカラーリングを施した「RナインT アーバンG/S」というモデルが発売された。R 80 G/Sと言えば、1980~1987年に生産されていたGSシリーズの祖となる名車であり、それを模したとなれば誰もが未舗装路での優れた走破性を期待してしまうもの。ところが、アーバンG/Sのホイールトラベル量はフロント125mm、リヤ140mmと短く、その走りは限りなくオンロード的であった。そう、BMWがわざわざ車名に「アーバン(都会的な)」と付け加えたことからも分かるとおり、これはかつてのG/Sの雰囲気を手軽に楽しむための都会派バイクだったのだ。

そんな肩透かし的な出来事から8年。BMWは再びGとSの間にスラッシュを入れたモデルをヘリテイジシリーズのラインアップに加えた。ちなみにBMWでは「G/S」と「GS」を明確に区別しており、前者はゲレンデ(オフロード)/シュトラッセ(ストリート)、後者はゲレンデシュポルト(オフロードスポーツ)の頭文字であると説明している。

8月初旬に発売される予定のニューモデル「R 12 G/S」は、R 12シリーズをベースに、ステアリングヘッドの位置を前方かつ上方に配置した専用フレームを採用。フロントホイール径は21インチで、アーバンG/Sの19インチと比べるとオフロード走行に対する本気ぶりがうかがえる。フロントフォークはφ45mmの倒立式で、アクスルシャフトが中心線よりも前方に位置するリーディングアクスルを導入。ホイールトラベル量はフロント210mm、リヤ200mmで、これはR 1300 GSの190/200mmに比肩するものだ。

ラインアップはSTDの「R 12 G/S」と「R/12 G/S GSスポーツ」の2種類。エンジンはR 12シリーズ共通の1169cc空油冷4ストローク水平対向2気筒で、最高出力は109PS/7000rpm、最大トルクは115Nm/6500rpmだ。

リヤホイールの比較
STDモデル(右)とGSスポーツ(左)の決定的な違いはリヤホイールのサイズで、前者は17インチ、後者は18インチを採用。また、標準装着タイヤもGSスポーツはよりオフロード走行に適した銘柄となっている。
フォークの突き出し量の比較
リヤホイール径の違いに伴い、フロントフォークの突き出し量をSTDモデル(右)は15mm、GSスポーツ(左)は3mmとすることで、リヤ車高の変化を補正している。また、GSスポーツはハンドルバーライザーを20mm高くして、スタンディングにも対応したライディングポジションとしている。
ステップバーの比較
ステップバーもSTDモデル(右)とGSスポーツ(左)では異なる。
R12G/Sヘッドライト
X字型のエンデューロライトアイコンが特徴的な5 3/4インチLEDヘッドライト。オプション設定のヘッドライト・プロは、アダプティブ・コーナリングライト機能を有する。
ダンピング調整ダイヤル
フロントフォーク、リヤショックともフルアジャスタブルで、ダンピングがキーの先端で回すことができる。
R12G/S正面カット
正面から見ると、専用デザインの燃料タンクの細さが際立つ。タンク容量はアーバンG/Sの約17Lに対して約15.5Lとわずかに少ない。