400mを8秒505で駆け抜ける!

老舗アメ車専門店の2代目が受け継ぐSBC日本最速の称号

「速さがほしいなら、排気量を上げればいい」。そんな単純明快な発想を貫いてきたアメリカ車のチューニング史。OHVという古典的な構造を守りながら、大排気量化という王道を歩み続けた彼らの文化は、2000年代に入っても変わることはなかった。一方で、より効率的なパワーを求めて進化してきたのが日本車だった。

アメリカンV8の本気のチューニングは桁違いだ。ストリートスペックでさえ2000psを超えるようなマシンが存在するのが、本場のドラッグレースの世界。そんなアメリカンV8を搭載し、国内ドラッグシーンで記録を打ち立てているのが、横浜の老舗ショップ・ロッドモータースが手がけるC2コルベットだ。

搭載されるエンジンは、パワー勝負では不利とされがちなスモールブロック(SBC)。だが、このコルベットはダート社製ショートブロックをベースに排気量を拡大。スモールブロックとしては限界に近い440Ci(約7200cc)にまでスケールアップしているのだ。

そこに組み合わせられるのは、歴史と実績あるレーシングパーツブランドの高品質なコンポーネント群。ヘッドにはNASCARにも採用されるSB2を採用し、ポートの拡大など徹底的にチューニングが施されている。その堂々たる姿は、一見ビッグブロックと見紛うほど。だが、れっきとしたスモールブロックという点が、コアなファンにはたまらない。

ところどころに描かれたキャラクターはSBの愛称でもあるマウスをモチーフにしたものだという。

「このエンジンは5年ほど前に製作しました。アメリカでは当然ビッグブロックが主流なんですが、父も僕もスモールブロックの軽快な回り方が好きで。こだわってずっと使い続けてきました。同じような天邪鬼は広いアメリカにも少なくなくて、SB用のハイパーツも今なお豊富なんですよ。このヘッドも、SB好きのマニアとメーカーが一緒に市販化したくらいですからね」と語るのは、2代目の葛木さん。

インジェクション化が主流の現代アメ車チューンだが、このコルベットはあくまでキャブ仕様のNAを貫く。それでも王座を守り続けている点は注目に値する。ちなみに現在の出力は、NOS込みで約1200ps。数値としては圧巻だが、最前線のドラッグシーンでは単なるパワーだけでは勝てない。

それでも、このコルベットが8秒505という国内屈指のタイムを叩き出せるのは、車体側の完成度が高いからこそだ。

「もともとはナンバー付きのストックボディで走っていたんですが、パワーが上がるとタイヤが喰ってくれなくて…。ボディ側の限界を感じたタイミングで、リヤをナロードして4リンク化しました。それで、それまで9秒ちょっとだったタイムが一気に8秒台に入ったんです。今は400mを8秒5で走っていますが、セントラルサーキットではもう限界かな。だから今は視点を変えて、もてぎの300mシュートアウトで6秒台を狙っています。あと300馬力くらいほしいところですけど(笑)」

純正風のデザインを再現したカーボンダッシュボードには、オートメーターとスタックのダブルネームディスプレイが並び、ダッシュ上にはモンスタータコが鎮座。B&Mのシフターにつながるトランスミッションは、ドラッグレース用の2速AT。葛木さんいわく「今風じゃないですね」と笑う。

ドラッグレースを始めて30年。初めは17秒台だったという彼のタイムは、クルマの進化と共に少しずつ縮まり、いまや8秒505という国内最速級の数字へと到達した。

ただ排気量を大きくしただけではない。長年にわたり積み重ねてきた経験とノウハウこそが、このモンスターマシンを支えているのだ。

●取材協力:ロッドモータース 神奈川県横浜市都筑区高山18-8  TEL:045-942-2229

「このコルベット&チャージャー・・・なんか小さい!?」カプチーノがアメリカンマッスルに大変身!

【関連リンク】
ロッドモータース
http://www.rodmotors.co.jp