GT-R抜きの人生なんて考えられない!
500台限定NISMOベースの快感2.7Lファインチューン
スカイラインGT-Rのために開発したハイパフォーマンスエンジン『RB26DETT』を搭載する第二世代の中でも、BNR32は長いスカイラインの歴史においてハコスカ(PGC10/KPGC10)と並ぶ伝説の存在。その背景にあるのは、全日本ツーリングカー選手権29連勝という無双状態のレースでの実績に他ならない。

ここで紹介する倉品さんも、そんなBNR32の魅力に魅せられたひとり。18歳で免許をとって新車で購入して以来、現在までの33年間のクルマ人生の全てをBNR32とともに過ごしてきた。
「クルマ=GT-Rというのは父からの刷り込みなんです。そもそものきっかけは3歳の時に連れて行かれた草レースで、父が愛車のハコスカで参加していました。その父は自分が17歳の時に病気で亡くなりましたが、私に残したのが1通の封筒。中には32GT-Rの見積もりが入っていたんです。『免許を取ったらGT-Rに乗れ!』という父の遺志で購入したのが1台目でした」と倉品さんは振り返る。しかし、新車で購入した最初のBNR32と過ごした期間は約3年という短いものだった。

「結婚資金を作るために手放しましたが、指輪を渡した妻に連れて行かれたのが中古車店。『クルマがないと困るでしょ』と2台目のGT-Rを購入したのですが、すぐに仲間と行った富士スピードウェイでクラッシュ。次に買った3台目も同様で廃車。このニスモは23歳の時に買った4台目なんです」と、倉品さんは説明してくれた。

500台限定のホモロゲモデル『GT-R NISMO』を選んだのは、グループAレースでの活躍を目の当たりにしたからだった。立て続けに2台を廃車にしたこともあり、奥さんには「今度はいじらないから…」と誓いを立てて購入したが、仲間のマシンのテールを拝む状況にガマンができず、地元のオーテックツカダ(現ATTKDオーテック)に持ち込んでチューンを依頼することになったのだ。


チューニングは2回に分けて実行し、第1段では2.7Lへの排気量アップを含めたエンジンのリフレッシュと、足回りの強化を中心としたメニューを実行。その後に第2段としてHKS F-CON Vプロ制御によるエアフロレス化が図られたのが現在の仕様。BNR34タービンとの組み合わせにより、どの回転域からもリニアにパワーが立ち上がる550psとなっている。

足回りはジールベースのATTKDオリジナル車高調。17インチのボルクレーシングTE37いっぱいのブレーキ(エンドレス6ポット+355φローター)が走りのイメージを打ち出す。タイヤは前後255/40だ。


ニスモグレードのため、エアコン、オーディオ等の快適装備は無し。センターコンソールには今では貴重な当時物のHKS追加メーター(油温/油圧/水温/ブースト)をセット。シートはブリッドのリクライニングタイプとしている。


エクステリアは基本的にノーマルスタイル重視としているが、リヤはニスモ純正のトランクスポイラーは残しGTウイングに変更。サイドシルプロテクターも標準車とは異なるニスモの純正装着パーツのひとつだ。ミラーは現行ニスモグレード風のレッド塗装でアクセントとしている。

「チューニングは20年くらい前にやったままですが、エンジン、ミッションともトラブルは皆無。以前は仲間たちとあちこちのサーキットへ走りに行っていましたが、ここ10年くらいはイベント参加のみの使用で、年間の走行距離は5000kmくらい。現状維持のためのメンテナンスの他に最近やったのは、ミラーをニスモレッドで塗装したくらいです。また、ガラス類も以前はフロント以外アクリルでしたが、少しずつノーマルに戻している最中なんです」とのこと。
こうした純正戻しへの取り組みは、貴重なGT-R NISMOを後世に残すためのもの。このマシンの将来を託すのは、現在13歳の息子さんで、幼稚園の頃からカートに乗せてクルマ好きへの英才教育を実施しているとか。倉品家のGT-Rストーリーは、父から子、子から孫へと受け継がれることになりそうだ。

