改造車好きの熱量は日本を上回る!?

カスタムカーに大興奮する中国の若者たち

「まるでスーパーカーブームの頃の日本みたい」。手が届かない憧れのクルマに熱狂し、夢中になって写真や動画を撮ったり、グッズ購入のために長い列を作ったりしている若者たちの姿を見て、ある来場者の日本人がつぶやいた言葉だ。今回紹介するGT SHOWは、それほどの盛り上がりを見せていたのである。しかも、客層が若い!というのが第一印象だった。

今回訪れた中国・蘇州市は、中国第二の都市である上海からクルマで西に約2時間の位置にあり、歴史ある庭園や美しい運河などがあるため観光地としても人気で『東洋のベネチア』とも呼ばれている。

そんな蘇州市で開催された『2025 GT SHOW』は、2017年にはじまって以降、年々規模を拡大してきたカスタムカーイベント。主催者発表によると今回のイベントは出展企業436社、展示車両数は約1000台と、東京オートサロンを上回る規模だ。

展示車両を見回してみると、足まわりチューンやドレスアップが施されたスポーツタイプの電気自動車や、リフトアップしてルーフキャリアを装着したSUV&トラックなどが所狭しと並ぶ。その多くが日本では馴染みのないメーカーや車種で、日本車は全体の2〜3割といった印象。

そのほか、タイヤチェンジャーやリフトといった関連機器の実演や、ラッピング&グラフィック、洗車グッズ、アウトドア用品などが並ぶホールもあり、東京オートサロンというよりアメリカのSEMA SHOWに近い雰囲気だった。

中国ブランドの新エネルギー車が会場を埋め尽くす!

BYD(比亜迪)、Zeekr(极氪)、Lynk & Co(リンク・アンド・コー)、ファーウェイ(華為技術)、シャオミ(Xiaomi)といった中国ブランドのクルマたちが会場を埋め尽くしていて、日本車は少なめ。手に入れづらく高価な日本のスポーツカーよりも、現実的な価格の現地生産車の人気が高まっているようだ。日本車と同じく、かつては人気が高かったベンツ、BMW、アウディも減少傾向だという。

そんな中、いま最もホットなモデルとして多くのブースで展示されていたのが、スマホメーカーのシャオミが作ったEV『SU7』。最上位モデルである『SU7 Ultra』は最高出力1548馬力、最高速度350km/hを誇るという。純正でもかなり大型のブレーキが装着されていて、サスペンションパーツやエアロパーツを装着した展示車も多かった。また、SUV系では中国メーカーGWM(長城汽車)の『TANK』が人気だった印象。

日本の業界有名人やパーツメーカーの姿も!

OPTIONグループ総帥のDai(稲田大二郎)&スモーキー永田もスペシャルゲストとして招かれ、トークショーやサイン会は大盛況。Daiの元愛車S15とトップシークレット製作のBNR34も海を渡ってミスターHIROブースに展示された。

ロケットバニーのブースでは三浦代表のサイン会に長蛇の列が。RAYDANタイヤブースには、ラジドリ審査員として現地を訪れていたD1GPドライバー蕎麦切広大選手の姿も!

ワークの田中代表はNAPACの副会長としてオープニングイベントなどにも登壇。ホイールを含めたアフターパーツの発展に向けて、現地のルール作りなどについて行政や関係機関と調整を続けているという。BBSジャパンの新田代表も現地を訪れていて、高級車を所有できる富裕層のオーナーにジュラルミン製ホイールが人気だという。

2013年に中国工場を設立し現地に根付いたパーツ開発を行っているテインは、中国で人気のSUV向けサスペンションを販売。エンドレスやディクセルも電気自動車向けのブレーキパーツが人気だという。新興メーカーが作ったクルマは足まわりチューンで激変する場合も多く、ハイパワーな電気自動車はブレーキ性能に不安を感じるオーナーも少なくないという。

HKSは独自開発したパーツでカスタムしたシビックタイプR(FL5)の他、ワイパーやアパレルグッズなどのオリジナルアイテムも作っているという。PG55など冷却水を販売するケミテックによると、電気自動車はエンジン車よりも大量の冷却水を使用している場合が多く、電気自動車ならではのリスクを防ぐための機能を加えた冷却水の開発などにも着手しているとか。こういった中国で培ったノウハウを活かしたパーツやアイテムが、日本市場で販売される日も遠くないかも!?

複数の日本ブランド代理店を務める『WUCAR』ブースに展示されていた女性インフルエンサー『ピギーちゃん』の愛車スープラは、ステアリングスイッチやワイパーブレード、さらにシートベルトまでオリジナルのピンク仕様。これでドリフトやサーキット走行もするというから驚かされる。1000万人ものSNSフォロワーを持つドライバーでステージMCなども務める溜溜をはじめ、150人以上のイベント公認インフルエンサー達がいて、それぞれのブースで販促活動や生配信を行なっている光景もよく見かけた。

会場外の盛り上がりっぷりもすごかった!

屋内会場だけでなく、屋外のスペースにもクルマが展示されているエリアがあり、会場内よりもユーザーカーっぽいクルマが並んでいた。また、会場付近の道路もスポーツカーやスーパーカーがたくさん走っていて、その様子を撮影しようとする観客が道路脇を埋め尽くしていたのも印象的だった。

そもそも、中国のルールで改造は基本的にNG(というか明確なルールが定められていない)らしく、現地で話を聞いてみると「マフラーを変えるのは大丈夫だけど音が大きいと警察に止められる」「エアロパーツやホイールを変えるのは勇気がいる」「車高をちょっと下げているくらいなら捕まらない」「パッと見で分からないブレーキパッドやサスペンションパーツの交換はハードルが低くて人気」など、数十年前の日本で聞いたようなセリフが…。

つまり、現状ではこのイベント会場に並んでいるクルマのほとんどが“違法改造車”というわけ。そんな中で、数千万円のハイパフォーマンスEVカーや、現地では希少で高価な日本のスポーツカーを改造したクルマ達は、まさに彼らにとって憧れの存在なのだ。

一方で、数年前にボディカラーを変えることが許可されるなど、アフターパーツの合法化やそのルール作りの動きも進んでいて、このGT SHOWも行政の協力を得ながら開催されているとのこと。そして、そんな中国市場に進出している日本のアフターパーツメーカーやブランドもどんどん増えてきているという。今後の動向次第では、自分の愛車でカスタムやチューニングを楽しむユーザーもさらに増えていくことは間違いなさそうだ。

【イベント概要】
開催期間:2025年3月28日~30日
開催場所:蘇州国際博覧センター(10ホール)および屋外広場、蘇州芸術センターサテライト会場
総展示会面積:合計120,000㎡
展示車両数:約1,000台
出展社:460社(1,000ブランド以上)
来場者数:187,322人

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