ゼロヨン界ではマイナーなRB25フルチューン！
最新の点火システムで引き出す2.7L＋T88-38GKの潜在能力
19歳のときに手に入れたHCR32も、気づけば28年の歳月が経過。ストリートゼロヨン全盛期から現在に至るまで、400mの直線に魅了され続け、愛車と共にチューニングを重ねてきたのが佐伯さんだ。
「当時はBNR32に憧れていたんですが、学生の自分にはとても手が届かない存在でした。そこで手に入れたのがHCR32。でも最初は走るよりもギャラリーとしてイベントを楽しんでいました。ただ、やっぱり“自分も走りたい”という気持ちが強くなり、パワーアップの相談でエンドレスさんを訪ねたんです。そうしたら杉野さんに“RB20じゃ発展性がないよ”と、いきなりバッサリ（笑）」
RB20では思うようなパワーを得られないという指摘は、期待して訪れた佐伯さんには衝撃だったが、それは長年の経験に基づいた杉野さんなりの“親心”だった。チューニングの将来性を見据え、RB25へのスワップを強く勧められた結果、当時としては先進的なRB25搭載のHCR32が誕生した。
「予定外の出費でローンを組むことになりましたが、今思えば大正解でした。排気量のあるRB25はブーストアップだけでも十分速くて、ストリートゼロヨンを思う存分楽しめました。そこからは自然と、さらなる速さを求めてタービン交換やミッション強化などに着手。タイムという“明確な基準”が存在するサーキットにもステージを移しました。無理をせず長く楽しむため、チューニングの資金を貯めている期間は走らず、アップデートに専念する。そんなスタンスで、愛車と向き合ってきたんです」
今回、約5年をかけて実施したリフレッシュ＆アップデートのハイライトは2つ。ひとつは、HKSがRB26向けに開発した最新の点火システム――クランク角センサーコンバージョンキットとスーパーファイヤーレーシングコイルプロ。もうひとつは、900ps超のパワーをしっかり路面に伝えるために見直されたリヤタイヤだ。
「当初はエンジンオーバーホールだけの予定だったのですが、いざセッティングに入ろうとしたところ、コイルもクランク角センサーも不調で…。それならばと最新の点火システムを投入しました。エンジンやタービンの仕様はそのままでも、点火が正確かつ強力になったことで、高回転域のフィーリングが格段に向上しましたね」と、杉野さん。
トラクション向上のため、リアタイヤは275/40-17サイズのドラッグラジアルから、28×13.5-15サイズのドラッグバイアスタイヤへ変更。BNR32用の40mmワイドフェンダーでも収まりきらなかったため、現車合わせでリアフェンダーを加工しフィットさせている。
T88-38GKタービンはアップデート後も継続使用。もともとは800ps仕様だったが、点火システム刷新と燃料系のリフレッシュにより、現在はブースト2.3kg時に906.2ps／85.9kgmを発揮している。
また、クランク角センサーコンバージョンキットに対応するため、F-CON VプロはVer.3.4に変更。経年劣化の可能性を考慮し、性能面だけでなく信頼性向上の観点からも導入された。
長期保管によるガソリンタンク内の錆対策として、インジェクター・燃料ポンプ・デリバリーを一新し、40Lの安全タンクを装着。既に40kgのウェイトを搭載しているが、このタンク自体もトラクション確保のウエイト的役割を果たしている。
ミッションは、トラスト製6速シーケンシャルから、シフトの信頼性向上を狙ってOS技研のOS-88へ換装。タイヤ外径の変化により5速では吹け切りゴールが難しくなり、現在は4速での吹け切りに合わせてファイナルギアの変更を検討中だ。
足まわりは以前、BCNR33のリヤメンバーをベースに煮詰めていたが、アップデート後は直進安定性が低下。そこでフロント車高を引き上げ、リヤスプリングのレートを6kg/mmから12kg/mmへ変更することで、加速時の挙動安定を図っている。
「もちろん排気量差はありますが、RB25とRB26の大きな違いはヘッド形状程度。排気量アップとタービン変更を施せば、GT-Rと互角以上に戦えるポテンシャルは十分です。このHCR32も、佐伯さんが“しっかり踏み切れる”ようになれば、9秒台突入は間違いありませんよ」と杉野さんも太鼓判を押す。
長年のノウハウを持つエンドレスと、約30年にわたり愛車と向き合ってきた佐伯さんの情熱。RB25チューンの集大成とも言えるこのHCR32が、ゼロヨン9秒台をマークする日は、そう遠くない。
●取材協力：エンドレス 兵庫県神戸市西区岩岡町古郷字南場960-8 TEL：078-969-2555
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