闘う、クラウン。
1JZ-GTE搭載でパフォーマンスは文句無し!
2025年のフォーミュラドリフトジャパン、FDJ3に参戦するマシンの登場だ。ドライバーは藤田翔一さん、21歳。まず聞きたかったのは、なぜベース車に15系クラウンを選んだのかということだ。エントリーの大多数を占めるS13~15やJZX90~110であれば、アフターパーツが豊富に揃っているし、チューニング手法だって確立されているのに。

「一つは、昔から15系クラウンが好きだったこと。もう一つは、ツアラーVだと他の人達と同じになって目立たないじゃないですか」と、藤田さんがその理由を話してくれた。なるほど。
15系クラウンには1JZ搭載モデルのJZS151が存在した。ただし、エンジンはターボのGTEではなくNAのGE。であれば、それに1JZ-GTEを換装したのかと思ったら、そうではなかった。というのも、ベースはGS151で、2.0L直6の1G-FEを載せた廉価グレード、ロイヤルエクストラだから。トランクリッドにはそれを示すエンブレムが敢えて残され、17系クラウンのアスリートVに倣い、黒いマジックで“V”の一文字を書き足しているのが思わずニヤッとしてしまうポイントだ。


そんなGS改JZS151のエンジン&駆動系チューンを手掛けたのが岐阜のグローバル。代表の永井さんが言う。「エンジン本体は腰下ノーマルでカムだけHKS製に交換。エンジンを載せ換えるんにフロントメンバーをイジって、あちこち切った貼ったしたね。でも、第一戦はタービンの調子が悪くて思うように走れんかったもんで、すぐGTⅢタービンに交換。ECUセッティングも取り直したんよ。パワーは測っとらんけど、ブースト圧は最大1.5キロに設定しとるね」。

また、安定したパワーを引き出すため、ドリフト仕様ではどうしても厳しくなりがちな冷却系の容量アップも抜かりなく実施。ラジエター交換とエンジンオイルクーラー追加、前置きインタークーラーの導入が行なわれる。同時に、ECUセッティングも安全マージンを多めに取ることで耐久性を高めつつ、徹底的にブローを回避する。

駆動系はORC製メタルシングルクラッチを介してJZX110純正5速MTを搭載。機械式LSDはクスコタイプMZが組まれ、ファイナル比はZN6後期型純正4.3をチョイスする。


足回りは、必須と言える切れ角アップとセッティング幅の拡大を狙ってパーツをセレクト。車高調はD-MAXスーパーストリート。スプリングレートはフロント26kg/mm、リヤ14kg/mmとなる。調整式アッパーアームはクスコ製、ロワアームはD-MAX製が組まれる。タイロッドはイケヤフォーミュラ製、タイロッドエンドはJZX110純正という組み合わせだ。また、リヤサスにもイケヤフォーミュラ製調整式アームを導入。幅広いセッティングを可能にする。

ロールケージが張り巡らされた室内。センターアーチの左右を繋ぐクロスバーや上下2本で組まれたサイドバーなど、クラッシュ時の安全性を確保しながら、ボディ剛性の向上にも貢献する。

今回取材で訪れたのは、タービン仕様変更後のシェイクダウン&テストが行なわれる鈴鹿ツインサーキット。1~2本目はエンジンのフィーリングチェックを最優先して、完全グリップでの走行となった。

ピットインを繰り返し、ステアリングを握った藤田さんのコメントに耳を傾けながら、パソコン画面に映し出したVプロのログデータを細かく検証、修正する永井さん。マシンの完成度を高めるための地道な作業が二人三脚で続けられる。

ECUセッティングを含めたクルマの仕上りは順調な様子。それを受けて3本目から、いよいよドリフト走行に入った。後輪に路面を搔きむしらせるパワーは十分。細かいアクセルワークに対してエンジンが鋭く即応しているのも、コースサイドから見ていて分かるほどだ。第一戦での不調を跳ね返すように安定して周回を重ね、テストは無事に終了した。


FDJ3にエントリーする60台の中で15系クラウンはこの一台だけ。異色と言えるベース車選びにより、他の選手と車種を被らせたくないという当初の狙いはすでに達成できた。となれば、あとは結果を出すだけ。その目標に向かってグローバルチューンの1JZパワーが強力に後押ししてくれることは間違いない。
⚫︎取材協力:グローバル 岐阜県羽島郡岐南町平成2-105 TEL:058-374-8838
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