購入者第1号は谷口信輝選手!

前期型(=オリジナル)への愛を形に

静岡県浜松市に店舗を構えるボディワークショップ“イシカワボディ”。主としてカーディーラーなどから一般的な鈑金塗装の作業を請け負う傍ら、代表の石川 昌さんはあくまで趣味として自分のクルマ作りも楽しんでいる。

これまでも匠の技を活かしたS13シルビアコンバーチブルや、ワンボックスカーのバネットなど、意表をつくカスタムカーを数多く作ってきたことで話題となり、それらの製作過程を追ったYouTubeチャンネルも立ち上げたことで知名度も高まった。

本人は「趣味のクルマ弄りをゆるく楽しんでいる鈑金屋のオジサン」と謙遜するが、造形のセンスと具現化する技術は本物。YouTubeのナレーションも、まるで深夜のラジオパーソナリティのような聴き心地のいいヴォイスで、ついつい観入ってしまう。そんな石川さんが、もはや趣味の範囲を越えて取り組む新しいプロジェクトが、オリジナルの国産鍛造ホイールだ。

もともと、180SXとS13の前期型に採用された純正ホイール、通称“火の玉ホイール”を加工し、深リムにする作業を行なっていた石川さん。ただ、それでは公道は走行できないため、次のステップとしてJWLの基準を満たした車検適合ホイールを製作するという夢を実現させたのだ。

製作を依頼したのはfrontlineやMOZZERなどのオリジナルブランドで知られる、国産鍛造ホイールメーカーのローダーエンタープライズ(旧EMC)。同社が製造するホイールは強度と耐腐食性に優れたA6061-T6という鍛造アルミ合金を素材とし、自社工場のマシニングセンタで削り出される一級品。もちろん、JWLの基準を満たす安全性を証明しており、安心して使用することができる。

また、ホイールを一本一本削り出すメリットとして、どんなPCDやインセットにも対応が可能なことが挙げられる。もし要望があれば、塗装やアルマイト、ブラッシュドといった表面処理にも対応してくれるそうだ。

17インチ表ピアス
17インチ裏ピアス
18インチ表ピアス
18インチ裏ピアス

石川さんがプロデュースした火の玉オマージュのホイールは、商品名をS13のキャッチコビーにあやかって『アートフォース』と命名。サイズは17インチと18インチ。18インチを段リムに、17インチはストレートリムにするとディスクを1種類で統一できて開発費が抑えられたのだが、「どうしても両方段リムにしたい」という拘りを通し、2倍の開発費を費やして設定したという。

構造的には3ピースとなり、17&18インチともにピアスボルトが表から見える仕様と、裏に隠れる純正ライクな仕様を設定。既に述べたがPCDとインセットは好みで指定できるため、17〜18インチに適合すればほとんどの車種に対応可能だ。

180SXやシルビアはもちろん、フェアレディZやローレルなど他の日産旧車からの引き合いも既にあるそう。また、火の玉デザインのネタ元がVWのゴルフ2やジェッタの純正ホイールだったりするため、意外とVW/アウディ、空冷ポルシェあたりへのマッチングも良さそうである。

トルクスネジで固定できるセンターキャップも付属。意外とディスクの反りに合わせたキャップを作るのも手間暇がかかっており、標準で付属しているのは嬉しいポイントだったりする。

通称「火の玉」と呼ばれる特徴的なディテールも削り出しで再現。一見、簡単そうにも見えるが、尖った部分の削り込みやピッチを揃えるにはノウハウが要求される部分で、試作の度に石川さんは納得行くまで直しを入れていったそうだ。

17インチ
18インチ

ディスク面の反り方は17インチが純ゾリ、18インチが逆ゾリとなっているが、これも試作を重ねながら全体の印象を見て決まっていった要件とのこと。18インチ表ピアスのサンプルは、あえて一番深くなる13.0Jのリムで作ってあるが、確かにこれだけ深いと逆ゾリの方がバランスが良いのが分かる。

「格好良い社外のホイールもたくさん使ってきましたけど、結局のところ一番飽きが来ないデザインって純正なんですよね(笑)。この火の玉のデザインが格好良いのかって言うと、そうじゃないって意見もあるとは思うんですけど、ちょっとダサいところも良いと言うか。180SXも今回敢えて後期型をベースに前期型バンパーに変えたんですけど、前期型って自動車メーカーの開発者やデザイナーが一番良いものを追求した結果だと思うので、僕は前期型が好きなんです。180SXの前期バンパーはブタ鼻と言われたりして不人気ですけど、本当はデザイナーもこうしたらもっと格好良くなるっていうのを分かっていて、それができなかったんじゃないか…みたいなことを妄想しながら、自分で造形していくのも好きで、この鍛造ホイールはその延長線上にあった究極形みたいなイメージです」とは石川さん。

価格はスタートプライスで1本20万円からと、石川さんも恐縮しっぱなしな高価格だが、純正のデザインが好きで、国産鍛造3ピースという付加価値に重きを置ける人には所有欲をそそられる逸品に違いない。余談だが、プロドライバー谷口信輝選手が購入者第一号として名乗りを挙げているそうだ。

尚、ホイールの注文や問い合わせは、受付窓口となってくれるタイヤホイール専門店「ZOOM(ズーム)浜松」までお願いしたいとのこと。取り付けしたい車種や車高、足回りの状況などから適正サイズの相談にも乗ってくれるそうなので、気になる人はまず問い合わせてみて欲しい。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI
⚫︎問い合わせ:ZOOM浜松 静岡県浜松市東区薬師寺町328 TEL:053-423-0200
⚫︎取材協力:イシカワボディ 静岡県浜松市北区三ケ日町下尾奈1139-1