連載

歴史に残るクルマと技術

スタイリッシュなレオーネが主力モデルに成長

1971年、初めて水平対向エンジンを搭載した小型車「スバル1000」の後を継いだレオーネがデビュー。最初に登場した「レオーネクーペ1400」は、流麗なロングノーズとサッシュレスのドア、カットインのリアコンビランプが特徴で、スポーティでラグジュアリーさをアピールした。

SUBARU レオーネ4WDセダン
1975年にデビューしたレオーネ4WDセダン

パワートレインは、93psを発揮する1.4L直4 水平対向エンジンと4速MTの組み合わせ、最高速度は170km/hをマーク。駆動方式は、まだ4WDでなくFFが採用されていた。
クーペが好評だったことを受け、スバルは車種バリエーションを展開。翌1972年に国産初のフルオープン・サッシュレスドアを採用した「4ドア/2ドアセダン」、「スーパーツーリング」、商用車「エステートバン」、「1100シリーズ」が追加された。

レオーネ4WDエステートバン
1972年にデビューしたレオーネ4WDエステートバン

エステートバンには、その後のスバルのクルマづくりを決定づける4WD車が追加された。エステートバンは、世界初のジープタイプでない量産4WD車であり、水平対向エンジンと4WDシステムを初めて組み合わせたスバルのコア技術の原点となったモデルである。

クロカンの走破性と乗用車の快適性を融合した4WD乗用車の誕生

そして、1975年にレオーネ4WDセダンの登場によって、スバル4WDの歴史が幕を開けた。

レオーネ4WDセダンが登場した当時の4WDシステムは、あくまで雪路や悪路用のジープのようなオフローダーのための装備だった。あらゆる運転シーンで優れた安定性を発揮し、特にオンロードで極限の速さを追求するといった現在のロードカー4WDという発想も技術もなかった。

水平対向エンジン(EA52型)
スバル1000に搭載された水平対向エンジン(EA52型)

レオーネ4WDも、オフローダーの走破性と乗用車の快適性を融合したモデルで、リアには石はねからボディを守る大型のマッドガードを装備し、最低地上高を十分な190mmに設定し、セダンながらワイルドな雰囲気が特徴だった。パワートレインは、スバル伝統の77psを発揮する1.4L水平対向エンジンと4速MTの組み合わせで、4WDはレバーでFFと4WDを切替えるパートタイム方式である。
外観はセダンでありながら、高い悪路走破性を持つことから、山間部や降雪地域の一般ユーザーから人気を獲得、スバルの看板モデルへと成長した。

SUBARU レオーネ4WDセダン
SUBARU レオーネ4WDセダン

レオーネのパートタイムから始まり主流はフルタイム4WDへ

レオーネ4WDセダンのパートタイム4WDは、レバー操作によってロードのような平常時に2WD(FF)で走行し、滑りやすい路面のときだけトランスファーによって4WDに切り替える。
2WDと4WDを切替えるためのレバー操作が必要だが、レバー操作で走破性の高いオフロードカーに変貌するという意味では非常に利便性の高い機構であり、当時はそれを乗用車に装備したことに大きな意味があり、高い評価を受けた。

初代スバルレオーネ
1971年にデビューした初代スバルレオーネ

ただし、このタイプはセンターデフを持たないので、4WDで乾いた舗装路、特にコーナリング時に前後タイヤの回転差を吸収できず、いわゆるタイトコーナーブレーキング現象を起こすことが課題だった。これを解決したのが、1980年代に登場したアウディ「クアトロ」が採用したセンターデフ式のフルタイム4WDで、切替え操作不要で舗装路でも4WD走行が可能になったのだ。
スバルも、1986年には、「レオーネクーペRX-II」でフルタイム4WDを採用し、その後各メーカーからもロードカー用の様々なタイプのフルタイム4WDシステムが登場している。

スバルのコア技術であるシンメトリカルAWDの魅力

レオーネ4WDセダンは、現在のスバルのコア技術である“シンメトリカルAWD(水平対向エンジン+AWD(4WD))”を初めて乗用車で採用した記念すべきモデルである。

シンメトリカルAWDのイメージ
シンメトリカルAWDのイメージ

“シンメトリカル”とは対称なという意味で、低重心の水平対向エンジンを縦置きにすることで、パワートレインが一直線、縦方向に左右対称に配置できるのが最大の特徴。これにより、次のようなメリットが得られる。

・優れた悪路走破性と高速安定性
シンメトリカルAWDでは、4輪にバランスよく荷重がかかるため、車体が揺れにくく、安定したタイヤ接地性を確保。これにより、4輪駆動のポテンシャルを最大限に発揮でき、ダートや雪路など悪路での高い走破性、さらに雨天時や高速道路でも安定した走りができる。
・軽快なハンドリング性能
エンジンが縦置きなので、重量のあるトランスミッションが車体の重心近くに配置。これにより慣性モーメントが小さくなるため、車体が振られることが少なく、コーナリング時やブレーキ時に軽快なハンドリングが楽しめる。

以上のような優れた運動性能により、シンメトリカルAWDは走り好きの多くのスバリストたちを魅了しているのだ。

スバルのレオーネ4WDセダンが誕生した1975年は、どんな年?

1975年には、マツダの「コスモAP」もデビュー。コスモAPは、2ローターのロータリエンジンを搭載したプレステージ・スペシャリティカーとして登場。ロータリー車が停滞ムードのなか“赤いコスモ”は大ヒットとなった。

マツダ・コスモAP
1975年にデビューした2ローターロータリーエンジン搭載のマツダ・コスモAP

少年ジャンプの新連載マンガ「サーキットの狼」が始まり、子どもたちの間でフェラーリやランボルギーニ、カウンタックといったハイパワーを誇るスーパーカーが大人気に、日本でスーパーカーブームが巻き起こった。
その他、ベトナム戦争が終結、マイクロソフト設立、田部井淳子氏が女性として世界初のエベレスト登頂、ブッシュ式公衆電話が登場、TVアニメ「まんが日本昔話」の放送が始まった。
また、ガソリン112.4円/L
、ビール大瓶180円、コーヒーは一杯194円、ラーメン210円、カレー280円、アンパン60円の時代だった。

レオーネ4WDセダンの主要諸元
レオーネ4WDセダンの主要諸元

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現在のスバルブランドの原動力であるシンメトリカルAWDの基盤を作った4WD乗用車「レオーネ4WDセダン」。乗用車4WDの道を切り開いた、日本の歴史に残るクルマであることに、間違いない。

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