前後のシルエットは同じ、全長の伸び分=ホイールベース延長分

ジムニーノマドの全長は3890mm。ジムニーシエラ比で340mm延長されている。

待望のジムニー”5ドア”の正規導入がスズキから発表された。発売は2025年4月3日と来年度になる。

すでにインドではローンチされているジムニーのロング版だけに様々な情報にあふれているともいえるが、インド仕様とは異なる部分も少なくない。その最たるものがネーミングだろう。日本版のジムニー5ドア(ロング)には「ジムニーノマド」という名前が与えられた。

『ノマド』というサブネームは遊牧民という意味を持ち、かつて初代エスクードに5ドアが追加された際に使われたもの。昔ながらのスズキファンにとっては懐かしい名前の復活だ。しかも、エスクードノマドも追加設定されたロングボディ・5ドアバージョンだった点も共通している。”NOMADE”ロゴについてもエスクードで使われたものをリファインしたという。名前からも、ヘリテージを大事にしていることがひしひしと伝わってくる。

なお、軽自動車のジムニー、3ドアのジムニーシエラは日本製(湖西工場)だが、ジムニーノマドはインド製(グルガオン工場)となる。国内ではジムニー系の納車を待っているユーザーも少なくなだろうが、ジムニーノマド導入は3ドア系ジムニーの生産には影響しないというわけだ。

NOMADOのエンブレムは、エスクードノマドのそれをインスパイアしたデザインとなっている。

ジムニーノマドのシルエットを確認すると、全長は3890mmとなっている。これは3ドア(ジムニーシエラ)比で340mm長いものだが、ホイールベースも同じだけ伸びて2590mmとなっている。つまり、前後はそのままにキャビンだけ延長したボディと捉えていい。また、オーバーフェンダーのデザインもジムニーシエラと共通で、タイヤサイズも同じとなっている。Aピラーから前を真横から見ると、一目で区別するのは難しいだろう。

5ドアと3ドアで前後デザインが共通ということは、すなわち悪路走破性を判断する指標であるアプローチアングル(フロント)とデパーチャーアングル(リヤ)の数値も同じということだ。ホイールベースが伸びている関係で、フロアの干渉度合いを示すランプブレークオーバーアングルの数値は3ドアより悪化しているが、それは物理的に仕方ないことだろう。それでも、210mmの最低地上高はキープするなど悪路性能については十分に確保されていることが期待できる。

今回の撮影では向きを変えるくらいの運転しかしていないので走破性について云々できないが、それでもオフロード走行を考慮していると感じたのはステアリングの切れ角が3ドアと同じ程度だったこと。後から確認すると切れ角は3ドア、5ドアで共通にしているという。ホイールベースを伸ばして、切れ角を変えないということはそれだけ小回り性能にはネガティブになるが、オフロード性能を考えれば致し方ない判断だろう。

ステアリング切れ角を決めるには、「オフロード走行時にフルロックまで切った状態で、ローレンジの強い駆動力をかけても大丈夫」といえる強度や耐久性を考慮しなければならないからだ。日本で売るならば取り回しを配慮するのか、それともジムニーにふさわしいオフロード性能のどちらを取るかとなったときに、当然のように後者を選んだのがジムニーノマドというわけだ。

前方のアプローチアングル36度、後方のデパーチャーアングル47度は、3ドアのジムニーシエラとまったく同じ。
亀の子状態のなりやすさを示すランプブレークオーバーアングルはシエラの28度に対し25度となっている。ホイールベースを伸ばしたのだから仕方がない。
全幅はジムニーシエラと同じ1645mm。オーバーフェンダーの形状も共通だという。
フルサイズのタイヤを背面に積むスタイルはジムニーの伝統だ。

スタイリングのキーワードは「プロの道具」と「上級感」

ジムニーノマドの専用色として設定される「シズリングレッドメタリック+ブラックルーフ」の2トーン。

ジムニー・シリーズに共通のデザインテーマとして『機能に徹したデザイン』がある。ここまでジムニーノマドのスタイリングを見てくればおわかりのように、その点についてはブレることなく継承されている。しかしながら5ドアというジムニーにおいて初めてのパッケージを現実化するにあたり、3ドア(シエラ)と5ドア(ノマド)の違いをデザインでも表現しなければならない。

ジムニーノマドのデザインにおいては「快適性/上質/上級」といったキーワードが考慮されたということだ。

そうして生まれたのが、ジムニーノマド専用のフロントグリル。5つのスロット(穴)を持つ形状はそのままに、ベースをガンメタリック、スロットをメッキで縁どることで、上質を表現している。

スタイリングにおいて、もっとも変化しているのはサイドビューとなる。

リヤドアが追加されただけでなく、5ドア化に合わせてフロントドアの形状も変わっている。3ドアの場合、後席への乗降性を考慮して前後長を確保しなければならないが、5ドアのため短くできる。具体的には108mmほど短くなっているというが、その数字から想像する寸詰まり感がないのはさすがだ。リヤドアについては窓を全開できることを優先したデザインになっているというのも注目。当然ながらCピラーに新設されたクォーターウインドウのデザインもジムニーノマド専用だ。

フロントドアは3ドアに対して約11cm短くなっている。
前後ドアは、いずれもジムニーノマド専用品。

ボディカラーは、以下に示す全6色。

シズリングレッドメタリック+ブラックルーフ★
シフォンアイボリーメタリック2+ブラックルーフ
セレスティアルブルーパールメタリック★
アークティックホワイトパール
ジャングルグリーン2
ブルーイッシュブラックパール4
★はジムニーノマド専用色

もともとジムニーシリーズのボディカラーには「目立つ性能」と「隠れる性能」という2つの大きなテーマがある。ジムニーノマドについては、シズリングレッドメタリック+ブラックルーフが目立つ色で、ジャングルグリーン2が隠れる色のそれぞれ代表格と位置付けられている。また、専用色のセレスティアルブルーパールメタリックは、上級感を表現するカラーとして採用されたという。

なお、撥水機能を持つファブリックシートや、機能性を感じさせる黒基調のインテリアについてはジムニー・シリーズに共通のデザインとなっている。

フロントグリルはガンメタリックを基本に、スロット(開口部)をメッキで縁どりしたノマド専用品。
195/80R15のタイヤサイズはジムニーシエラと同じ。撮影車のタイヤ銘柄はブリヂストン「デューラーH/L」。
ジムニーノマドのフロントシート。
ジムニーノマドのリヤシート。
リヤシートは1段だけだがリクライニングできるようなステーとなっている。

注目の「ジムニー・ノマド」5ドア仕様になった後席の広さは?不便はないのか?【新型ジムニー徹底チェック 後篇】

ついにジムニーロング(5ドア)の日本仕様が正式発表、その名前は「ジムニーノマド」となった。遊牧民を表す”ノマド”というサブネームは、かつてスタイリッシュなクロカン4WDとして一世を風靡したエスクードに与えられたことを記憶している方もいるだろう。「5ドア」や「ロング」ではなく、「ノマド」という名前を付けたということは、単なるボディストレッチ版ではなく、独自の付加価値が与えられていることを示している。後編は後席の居住性や各種装備を確認していいこう。 REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)