自慢のe-POWERを新開発 静粛性や操舵性はクラス随一

2024年度上半期にミニバン販売台数No.1となったセレナ。伝統的に人気が高いのだが、22年末にフルモデルチェンジを受けた現行モデルは走りの性能が劇的に進化し、日産自慢のプロパイロット2.0が採用されるなどあって、ますます販売を伸ばしている。

エクステリア

プラットフォームを先代と共有するため、フロアから約70㎜低い位置にステップを設けた設計は同一だ。ただし、約800㎜あるスライドドアの開口幅をはじめ、フロントの開口部も大きく、1列目と2列目の乗降性は十分に合格点が与えられる。リヤ両側、助手席側リヤのハンズフリースライドドアをタイプ別設定する。バックドアは、手動開閉式になる。
グリルや前後エアロバンパー、メタル調フィニッシュのリヤプロテクター、エンブレムなどが「AUTECH」専用になる。「カスピアンブルー/ダイヤモンドブラック2トーン」も専用色で、スポーティ感を強調。最小回転半径は5.7m。

パワートレインは2.0ℓガソリン+CVTとシリーズハイブリッドであるe-POWERの二本立て。後者の従来モデルは発電用エンジンが1.2ℓだったが、新たに1.5ℓへとあらためられた。しかも、発電用として望ましい特性を目指して新規開発されたものだ。e-POWERが目指すもの、それはBEV(電気自動車)に近い乗り味だ。電気モーターを駆動するから、低速域から図太いトルクで頼もしく走ってくれるのはBEVと変わらないが、課題はエンジン音。必要ないときは走行中であってもエンジンが停止するが、発電が必要になり、負荷が強ければそれだけエンジン回転も高まってノイズが増える。だからエンジンの存在感をなるべく減らすというのがe-POWERの使命なのだ。

乗降性

走らせてみると驚くほど静かで、確かにエンジンの存在を感じさせない。排気量拡大で、発電の時間、エンジン回転数を下げられたこと、発電でよく用いられる2000rpm前後の効率を高めたこと、GPS情報などを使ってエンジン音が目立ちにくいところでなるべく発電することなど、あらゆる努力の賜だ。車体そのものの遮音性、静音性も高く、このクラスのミニバンのレベルを一気に引き上げたとも言える。プラットフォームはキャリーオーバーだが、ボディの高剛性化を図り、パワーステアリングを先代のコラムアシスト式からラックアシスト式に変更したことなどの恩恵で、走りは大幅に進化した。

インストルメントパネル

良好な視界をもたらす水平基調で、メーターとセンターディスプレイを横に並べた先進的な仕立て。シフトやエアコン操作部などをセンターに集中配置し、秀逸な操作性を実現。

凹凸が多い荒れた路面でもボディがしっかりしていてサスペンションがしなやかに動くことで、乗り心地が快適な上に、ステアリング操作に対する反応も背が高いミニバンとは思えないほど自然な感覚。ステアリングから受けるフィーリングもすっきりとしていて上質だ。

居住性

実はパワーステアリングを高精度化した最大の理由はプロパイロット2.0適用のためだ。高速道路で使用するとハンズフリーが実現されるのだが、左右に振られるようなことがなく、ピシッと見事に直進していく。こういったADAS(先進運転支援システム)は、いくらシステムが高度でも、走る/曲がる/止まるというクルマの基本がきちんとしていないと制御に無理が出てしまうが、新型セレナはハード、ソフトともに進化させてマッチングを図ったのだ。高速道路の移動が多いユーザーにはうれしい性能となるだろう。

うれしい装備

2列目左右席のシートヒーターは、「ホップラスパッケージ」に前席シートヒーター、ステアリングヒーターなどに含まれる。100%電動駆動のe-POWERは、ワンペダル感覚でアクセルとブレーキの踏み替え数を減らせる「e-Pedal Step」を用意。
月間販売台数      7450台(24年5月~10月平均値)
現行型発表       22年11月(4WD車追加 24年10月)
WLTCモード燃費     20.6 ㎞/ℓ※「e-POWER X」 

ラゲッジルーム

e-POWERの影に隠れてしまっている印象のエンジン車も決して悪くない。160㎏軽い車両重量で最高出力は13PS低いだけなので、特に高速域では活発な印象。CVTの制御も進化していてネガティブが払拭されているからだ。24年10月にはe-POWERの4WDであるe-4ORCEが加わった。生活4WDではなく82PSと高出力なモーターをリヤに追加しているので走りも期待できる。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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