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今日は何の日?■R34型スカイラインGT-Rにニュルで鍛え上げた2台の限定車
2002(平成14)年2月26日、日産自動車のR34型スカイラインGT-Rの限定車「Mスペックニュル」と「VスペックIIニュル」が発売された。Mスペックニュルは耐久レースを意識した仕様、VスペックIIニュルはスプリントレースを意識した仕様だが、ひと月前に開催された1月24日の発表当日に完売した。

ダウンサイジングして走りを極めたR34型スカイラインGT-R
1999年に登場したR34型スカイラインGT-Rは、前年1998年にデビューした10代目のR34型スカイラインをベースに、徹底した高性能チューンが施された。

先代BCNR33型で不評だった大型化したボディは、ホイールベースを55mm、全長を75mmほど縮小。ラジエターグリルやヘッドライトの形状を変更し、前後プリスターフェンダーの装着、テールスポイラーの大型化、エアダムなど空力デバイスの追加など、また剛性も高められて本来のスポーティさを取り戻した。

エンジンは、最高出力が当時の出力自主規制値280ps/最大トルク40.0kgmを発揮する2.6L直6 DOHCツインターボ(RB26DETT)を搭載。トランスミッションは、ドイツ・ゲトラグ社と共同開発した6速MT、駆動方式も4WD(アテーサE-TS)を踏襲。ブレーキはイタリアの名門ブレンボ製ベンチレーテッドディスクを標準装備するなど、究極の走りが追求された。

しかし、2002年に強化された排ガス規制に適合する目途が立たず、スカイラインGT-Rは一旦生産を終了することに。そこで、最終記念モデルとして2002年2月のこの日、「スカイラインGT-R Mスペックニュル」(価格630万円)と「スカイラインGT-R VスペックIIニュル」(価格610万円)が合計1000台限定で発売されたのだ。
ちなみに、GT-Rは2007年にR35型で復活を果たしたが、この世代からスカイラインの冠が取れて「日産GT-R」と名乗るようになった。
耐久レースを意識したMスペックニュル

ニュル(Nur)の称号は、GT-Rの開発・走行テストが行なわれたドイツのニュルブルクリンクサーキットを表すもので、ニュルで鍛え上げたハイパフォーマンスモデルであることを意味する。
ベース車との違いは、まず搭載されるエンジンだ。搭載されたエンジンは、型式はベース車と同じRB26DETTの2.6L直6 DOHCツインターボだが、ニュルブルクリンク24時間耐久レースやスーパー耐久レースなどを想定したN1仕様エンジンに換装。N1仕様のエンジンは、ヘッドカバーが従来の赤メタリックからゴールドになり、シリンダーブロックやピストン、コンロッド、エキゾーストマニホールドなどが専用部品で、レース参戦を前提に600psを発生可能なハイブーストを想定して、ターボはセラミックタービンからメタルタービンに変更された。


さらに、センターコンソールおよびハンドブレーキが樹脂製となっており、エアコン、オーディオ、リアワイパー、リモコンミラーレスのようなレースに不要な装備は外されて徹底した軽量化を実施。インテリアで注目されるのは、職人による手縫いによって1脚ずつ丁寧に仕立てられた本革シートの採用である。またメーターパネルは、300km/hフルスケールメーターに変更され、高性能モデルであることをアピールした。

エクステリアは、ボディ下面をディフューザーで覆うアドバンスドエアロシステムを装備。その他、ボディカラーに特別仕様色のミレニアムジェイドメタリックを追加。リアバンパーには、専用クローム調仕上げの立体グレードエンブレムが装備された。
スプリントレースを意識したVスペックIIニュル
VスペックIIニュルのエンジンと駆動系は、Mスペックニュルと同じN1仕様で差はないが、主な相違点は以下の通り。

・シートが、Mスペックニュルの本革に対し、VスペックIIニュルはファブリック
・ボンネットは、Mスペックニュルのアルミ製に対して、VスペックIIニュルはカーボンファイバー製
・リアスタビライザーを、Mスペックニュルより太く設定
・ボディ色として、共通の特別仕様色のミレニアムジェイド(薄緑)メタリックに加えて、Mスペックミュルにはシリカブレス(金色)、VスペックIIニュルにはベイサイドブルーが設定された。

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GT-R VスペックIIニュルは、人気のスカイラインGT-Rの中古車の中でも最も高額で取り引きされているモデルと言われている。何と新車価格610万円の10倍近い5000万以上で商談が始まる個体もあるそうだ。各種レースエンジンのベースとなるN1仕様のエンジンが魅力なのだろうが、こうなるともう神格化の領域だ。
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