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今日は何の日?■CR-Xシリーズ3代目は、オープンスポーツのCR-Xデルソル

1992(平成4)年3月6日、ホンダのCR-Xシリーズの3代目「CR-Xデルソル」がデビューした。FFライトウェイトスポーツとして誕生した初代「バラードスポーツCR-X」、2代目「CR-X」と続いた3代目のCR-Xデルソルは、2シーターオープンカーへと大変身したのだ。

FFライトウェイトスポーツのパイオニアとなったバラードスポーツCR-X
1983年に誕生したバラードスポーツCR-Xは、「シビック」の兄弟車「バラード」の派生車で、パワートレ-ンなど多くのコンポーネントはシビックの共用品で構成された。

最大の特徴は、FRが一般的なスポーツモデルの中で、FFの軽量スポーツモデル“FFライトウェイトスポーツ”という新たなジャンルを開拓したこと。2+2シートに割り切ったパッケージングと、軽量化材料の適用によって実現された超軽量車重は、760kg(1.3Lモデル)と800kg(1.5Lモデル)と驚異的な軽さだった。

スタイリングは、セミリトラクタブルヘッドライトや低く抑えたボンネット、シャープなテールエンドなど、斬新なワイド&ローのスポーティなフォルム。パワートレインは、最高出力80psの1.3L直4 SOHC、110psの1.5L直4 SOHCエンジンの2種エンジンと3速ATおよび5速MTの組み合わせ。
翌年には、135psを発揮する高性能1.6L直4 DOHCエンジンを搭載した「バラードスポーツCR-X Si」が追加され、俊敏で楽しい走りが体現できるFFスポーツとしてクルマ好きの多くの若者から支持された。
CR-Xの単独ネームとなった2代目

1987年にシビックが4代目にモデルチェンジすると同時に、バラードスポーツCR-Xもモデルチェンジ。また、バラードが1986年に生産を終えたことから、車名からバラードスポーツが取れてCR-Xの単独ネームとなった。

2代目は、ティアドロップ・シェイプと呼ばれるスタイリッシュなフォルムを採用、さらに徹底したフラッシュサーフェス化などによりCd値0.3を達成。その他にも、ホイールベースの延長や前後トレッドの拡大、サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式の4輪独立懸架、トーコントロールシステム、ガス封入ダンパーなど最新メカニズムによって、走行安定性が向上したことも先代からの進化だ。

パワートレインは、電子制御PGM-FIとなった105psの1.5L直4 SOHC、130psの1.6L直4 DOHCの2種エンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせ。2年後の1989年には、VTECを組み込んだ160psを発揮する1.6L直4 DOHC VTECエンジンを搭載した「SiR」を設定。NAでリッター当たり100psを超える高性能モデルは、走り好きの若者を夢中にさせた。
デルソルのサブネームを付けて大変身した3代目

そして1992年3月のこの日に登場した3代目CR-Xデルソルは、先代のクーペスタイルを一新、大胆な2シーターのオープンカーに変身した。

オープン機構は、トランストップ式を採用し、オープン時のボディ形状はリアピラーが残るタルガトップを採用。トランストップには電動と手動が用意されたが、電動トランストップは技術的にはユニークだったが、手動式に比べると50kg程度重く価格も高かった。

パワートレインは、最高出力130psの1.5L直4 SOHC VTEC、170psの1.6L DOHC VTECの2種と4速ATおよび5速MTの組み合わせ。

車両価格は、最も廉価な1.5Lの手動式オープンルーフが137万円、1.6Lの手動式が171万円、電動オープンが188万円で、手動と電動の差額は17万円に設定された。当時の大卒初任給は、17.6万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値でそれぞれ179万円、223万円、246万円に相当する。

ライトウェイトスポーツからオープンスポーツに一新し、より多くの若者にアピールしようとしたCR-Xデルソルだったが、市場の反応は真っ二つに分かれた。オープンの開放感やトラストップの先進性などが評価された一方、ライトウェイトスポーツらしさが足りない、俊敏な走りを追求すべきだといったネガティブな意見も多かった。

発売がバブル崩壊時期と重なったこともあり、人気は盛り上がらず1998年に生産を終えた。
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CR-Xデルソルがデビューした当時、バブル崩壊の影響でスペシャリティカー、ましてやオープンカーの市場は完全に冷え切っていた(例外的にマツダ「ロードスター」は、人気を誇っていたが)。CR-Xデルソルも、5年早くデビューしていたら、あるいはFFライトウェイトスポーツとして進化続けていたら、結果は違っていたかもしれない。
日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。


